表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

第10話「進む異常」

 ビリビリと全身を行き渡るフワッとしたか感覚が、

 俺を襲った。


 ねぇねぇ、奥さん聞きました?

 お揃いだね、ですって。

 はい、聞きましたよ。

 最近の若い子はなんて可愛らしいのかしら。


 頭の中の主婦が談笑している。

 狂った衝撃が頭にきて。

 意味わからない事になっている。


「そうだな」


 白石は、じ〜って俺を見つめている。

 焼ける、焼けるよ。

 目から何か出てる。

 なんだよこれ。

 白石がにこって笑って告げる。


「くまくまちゃん好きなの?」


 一音一音がとても可愛い。

 落ちつけ落ちつけ、俺。

 男は余裕がある奴がモテるんだ。


「もうとがプレゼントしてくれて」

「もうと??」


 吃った!!!

 もうとって何それ?


 いやいや、首を傾げる姿とか可愛すぎるだろ。

 無理無理無理、これで余裕を保てる男とか、

 まぁ、それがモテ男か。


 俺には無理だ。


 白石はハッとした顔をして俺に告げる。


「もしかして! 桜ちゃんのお兄さん?」

「えっ? ソウデスガ」

 

 なんか、イントネーションおかしくなったし。

 はぁはぁ焦るな、焦るな。

 思い出せ。


 そういえば、桜は部活を休んで友達と。

 遊びに行ったって話してたよな。

 友達が白石さんって訳か。


 流石、スーパーマン桜。

 俺には勿体ない妹だ。


 ありがとう桜。

 ありがとう妹よ。


「桜ちゃん、いい子だよね〜」

「ウチノイモウトハスゴイデス」

「うん! 桜ちゃんは本当に優しくていい子だね」

「アイ」


 白石は楽しそうに桜の事を話す。

 桜と仲いいんだな。

 お兄ちゃんは嬉しい。


 だが、日本語ってどうやって喋るんだっけ?

 あれ?

 おかしいな。


「おふっ」


 京に背中をトントンされて変な声が出てしまった。


「ちょっと、俺ら飲みもん買ってくるわ。行くぞ」

「おおう」


 京が突然、そう言い、俺を引っ張って連れていく。


「敦、大丈夫か?」


 京は変なイントネーションに気づき、

 すかさず俺を連れ出してくれた。


「京、助かった。本当に助かった」


 あのまま居たら、俺は死んでいた。


「でも、話せたな。よかったじゃん。繋がりもあって!

 マイナスからのプラスだな!

 よかった、よかった〜」


 京、おまえは本当に良い奴だ。

 俺は京の両肩を掴み、目をじっと見て、近距離で言う。

 傍から見たらBLさ。


「京、お前自身を犠牲にするのはもう無しだ」

「あぁ、わかった」

「それと──ちょっと俺はもうあの場所には戻れない」

「何でだよ、せっかく、いい雰囲気だったのに」


 傍から見たらBLさ。


「俺は気づいたんだ。いや、気付かされたんだ。

 見てるだけで十分って事に、これ以上、近付くと日本人じゃなくなる」

「お前、ストーカーみたいな方がいいのか」

「いや、それは断じて否。否である!!!」


 俺は叫んだ。

 傍から見たらBLさ。


(ちょっと軽率すぎたかな。

 こんなにガチならゆっくりの方がいいか。わかったわかった)


「じゃあ、俺が後は何とかするから」

「ごめんな京」

「いいって」


 にへら笑いをし手を振り、その場を後にする京。


 とりあえず、ゆっくりするか。

 俺は深呼吸をし、普通になりたい部へと向かった。


 部室の扉を開け、そこに居たのは冬柴先輩だった。

 一人で弁当を食べていた。


「あれ? 昼休み、一人なんです?」


 いつもの俺ならそんな事は聞かない。

 そのまま、こんにちはって言って、座って、

 勉強を始める。


 だが、今回の俺は余計な事を言ってしまった。


「悪い? 一人が好きなの」


 凄い、俺を睨みながら答える冬柴先輩。

 俺はそっと椅子に座る。


 怖い、怖い。

 勉強勉強。


「何でそんなにへらへらしてるの?

 いい事でもあったのかしら」


 今日の冬柴先輩の睨みは凄い。

 弁当食べながらずっと睨んでるよ。


「いや、何でもないですよ〜ハハハ」

「そう」


 何、この空気。

 めっちゃ居ずらい。

 いつもの俺なら気にしないのに。


 へらへらしていた俺を、

 見抜いてか、冬柴先輩は機嫌が悪いよ。


「ねぇ、淳くん」

「週末の件、忘れてないわよね」

「はい、勿論です」

「ならいいけど」


 なんか異端審問に掛けられてるみたいだよ。

 一言一言の圧がやばいよ。


 その後、二人とも無言なり。

 徐に冬柴先輩も勉強を始めたのである。



 ---




 何事もなくその後は、

 終わり。

 家路に着く。


 京には悪い事したな。

 上手くあの後はフォローをしてくれたみたいだ。

 あぁ、幸せな一日であった。


 だが、いかんな。

 浮かれていては足下をすくわれる。


 普通に過ごして。

 普通に勉強する。

 あんなイベントはとりあえず、もういいかな。


 まぁ、たったまにわ白石とあんな風に、

 ご飯食べたりしたいけど。


 まぁ、たまにわ〜

 白石と一瞬に、

 勉強したいけど。


 いやいや、焦るな俺。

 まだ1年だ。

 ゆっくり、ゆっくりすればいい。


 だが、妹の桜には感謝だな。

 流石、妹よ。

 俺はいつもの様に玄関を開ける。


「ただいま〜」

「お兄ちゃん、ジュワッチュ!!」


 桜のジュワッチュと言いながらのクロスチョップ。

 ふふふっお兄ちゃんは感謝の受け身さ。


「ありがとうな、桜」

「お兄ちゃん機嫌がいいね!」

「あぁ、そうか?」


 俺は足下を見た。

 見覚えのない靴がある。

 まさか──白石が家に。


 やるな!!

 桜。

 今日は赤飯だ。

 お兄ちゃん、嬉しいよ。



 あぁ神よ。

 あぁ桜神様よ。

 我は信仰を捧げまする。


 聞き覚えのあるバタバタ走る床の音。

 俺はその音を聞いた瞬間、脳ミソが凍りついた。

 いや、──まさかかな。


「淳くん、おかえりなさいですぅうううう」


 走ってきたのは美鈴だった。

 何で俺の家にいるんだ……。

この度は、読んで下さり有難うございます。

皆様の評価とブクマが励みになっております。

今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感謝です。
読んで下さり有難うございます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ