第1話「創設」
俺は高校一年生、人間である。
そして、至って普通の高校生だ。
俺は名前は桜味淳。
俺の家系は妹が一人、姉が一人、両親は海外に出張中。
そして、姉は国内をフラフラしている。
幼い頃、色々あって普通を愛している俺である。
高校生ともあって、
俺は葵高校と言う所に通っている。
普通の日常だ。
普通で退屈じゃない。
ゆっくりとした毎日を過ごしている。
いやいや、なんて素晴らしい……。
この日常を普通に過ごし、勉学だけに励み。
無難な大学に入るのが俺の目標である。
窓を見て、そう黄昏ていると声をかける奴がいる。
「おいおい! 淳! 何ぼーっとしてる。
恋か!? 恋か!? 恋か!?」
ニヤニヤしながら話しかけてくる男。
サッカー部の長谷川京。
中学から同じで腐れ縁だ。
まぁ、親友だ。
頭がそこそこ良くて、顔がめちゃいい。
モテる男だ。
いや、学年で一番モテる男だ。
だが、嫌味がなく、とても爽やかな奴だ。
一応、男にもモテる。
本人には言わないが、親友で鼻が高い。
「人がぼーっとするのに理由なんか必要なのかよ!」
そう俺が告げると、爽やかな笑顔ですぐ切り返す京。
「ハハハなんだよ〜その言い返し〜
そんな事よりもお前、何か部活に入った方が言いぞ!!
この学校は、ほぼ100%の人が部活動に入ってるからな。
入ってると推薦の要素が増えるから、入ってるだけの人も多い!
とりあえず何かでも、入ってた方がいいぞ」
京の言う通り。
この学校は、ほぼ100%の人が部活に入っている。
偏らず全ての部活に力を入れているのが。
この学校の良いところらしい。
まぁ、人も多いしな。
マンモス校だ。
だが、俺がこの高校に入った理由。
単純にめっちゃくちゃ家から近いからだ。
電車通学の煩わしさもなく。
自転車にも乗らなくていい。
雨に下手に濡れることも無い。
────最高だ。
しかも、なかなか賢い高校である。
推薦の顔も広く、評判も高い。
────最高だ。
だが、一つ欠点があるとするならば、部活動。
それだけがとてもめんどくさい。
俺の目的とは逸脱している。
俺は青春する暇があるなら、未来に投資をしたい。
「俺は入らなくても大丈夫なんだよ!
推薦いらないからな〜」
「キタキタこれかよ。
学年テストトップの頭の良さ〜
言われるとぐうの音も出ない〜あ〜ムカつく」
やれやれとしたポーズをしてながら言っているが、
この会話は何回目だろうか。
まぁ、それくらい心配しているって事だろう。
ありがたい事だ。
だが、俺には一つ誇れる事がある。
それは学年テストの戦績が一位である事。
入学した際も学生代表だった。
努力の賜物である。
何度も言うが。
部活動なんてやってる暇があったら。
一人で勉強か自分の好きな事をやる方が言いだろう。
そう考えていると校内放送が──
「淳〜淳〜とりあえず職員室まですぐに来なさい〜
直ぐに来なさい。
時間は待っちゃくれねえから、早く来なさい〜」
全校生徒が聞こえるのに、
校内放送を私用で使うとは……。
嫌な予感がする。
俺の頭の中に警告がなっている。
「……お前!? 何かやらかしたのか?」
一驚しながらも声をかける京。
「……いや、別になにも、やらかしてないけどなぁ」
何だ、この急な放送。
しかも、この声は担任の西園寺玲香。 あまり、関わりたくない人だ。
「きっとろくなことがない……」
俺は内心ため息をつく。
「とりあえず、行った方がいいぞ〜」
京にそう催促され、俺は教室から出る。
葵高校は上空から見下ろすと玉の形をしている。
校舎は三階建てである。
点の所は体育館で四画目の中心が入口である。
俺が呼ばれた職員室は入口のすぐ近くだ。
そそくさと俺は職員室に向かった。
だが、足取りが重い。
このままバックレようか。
---
職員室に着き。
西園寺玲香の前にいる俺。
バァンッと机を叩く玲香。
「貴様!! 俺の受け持ってるクラスで。
部活に入っていないのはお前だけだぞ!!」
玲香の咆哮が職員室内に響き渡る。
いやいや──そんな事言われても。
だが、正論は正論だ。
担任としては管理義務がある。
西園寺玲香、名前に似合わず。
ゴリマッチョのむさ苦しい、ゴリラ男が俺の担任である。
俺はボソッと呟く様に玲香に告げる。
「勉強する、時間がもったいないので」
玲香はその言葉に目尻がピクってなり、睨んでいる。
「まあ、貴様のこの成績でその言い訳は筋が通っている。
しかしなぁ──俺の給料が下がる!
内申点って言うのがあるんだ! 分かるなぁ?!」
真面目な顔をして俺の顔をグッと見ている。
むちゃくちゃ言ってるなコイツ。
大人の事情など知らん。
俺の有意義な時間を害させてたまるか。
「はぁ……」
いかん、内心ため息が。
普通にため息が出てしまった。
俺の溜息を無視しながら、
そのまま話を進める玲香。
「とりあえずどんな奴も、
形だけ部活動を作ってる奴もいるんだ!
一人で作って青春を楽しむのだ!」
むちゃくちゃだな。
コイツ脳みそゴリラなのか?
だが、幽霊部員でもいいのか。
なら、問題ない。
「はぁ……じゃあ、部活動申請書ください。
すぐ作りますんで」
「そうかそうか! 青春を過ごす気になったんだな〜
いい事だ! いい事だ!」
玲香はものすごい喜色を見せて。
引き出しから一枚の紙を取り出し机に置いた。
言ってる事が噛み合ってない。
幽霊青春ってなんだよ。
まぁ、いいか。
俺はその紙に部活の名前と内容を書き、玲香に渡した。
「部活の名前出来ました〜」
「おうおう、どれどれ〜」
真顔でその紙を確認する玲香。
俺は紙を真顔で見ている玲香に説明する。
「普通になりたい部です。
目的は普通に学生生活を過ごすのを目的とした部活動です」
俺は死んだ目をしながら玲香に告げた。
「OKだ!!!」
ウンウンと二度頷き、大声で返事をした玲香。
いいのかよ。
こうして葵高校。
普通になりたい部が創設されたのである。
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