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平地 真美は平凡、地味、真面目。
真面目だけが、自分の取り柄だと最近思うようになった。
このクラスには、学校一の優等生、学校一の美少女や一年生にしてバスケ部のエースの人がいて、自分にない才能を魅せられた。
自分には何かあるかと考え、趣味や特技もない私には真面目さしかなかった。
先生には反抗しない、遅刻しないなど当たり前のことをしているだけであって、頑張っているわけではない。
印象に残らない普通の生徒。これからも何事も普通にやって、普通に生きていくつもりだった。
あの不良に会うまでは――。
学校一の不良の机は、薄っすらと埃がのっていて学校にしばらく来ていないことが一目でわかる。机の中には置き勉された教科書や配布プリントがぎっしり詰まっていた。
配布プリントをまとめて机の中に入れるのは、前の席である真美の役目になっている。強制されたわけではないが、自主的にやっていたら自然とそうなってしまった。
真美は、後ろから二番目の席に座っている。一番後ろの席は不良で有名な、不二さんの席。いつも不二さんがいないので、後ろからテストを回収するのが必然的に自分になり面倒だと思っていたが、入学して一カ月もすれば、何も思わなくなっていた。
そろそろ席替えの時期だと思うが誰も要望しない。私が先生に言うのは面倒だし、そこまでして席替えしなくてもいいか、と思っていた。私は環境が変わることが苦手だった。
入学してから出席番号順で座らされている。一カ月では、まだグループも固まっておらず席が近い人で仲が良くなっていて、いま席が変わると人間関係も変わるかもしれなかった。
実際、席が遠いせいで話したことのない人は沢山いる。
「席替えって、まだしないのかなー」
私と同じく地味グループの一人である絵美が呟いた。絵美が、不二さんの机を触ると指の跡が付いたらしく、慌ててブレザーの袖で拭いていた。
「誰もしたいって言わないよね」
「やっぱり、女子しかいないからかな?私が通ってた中学は共学だったから、好きな男子の近くがいいとかあったけどねえ」
「絵美ちゃん、青春してたんだ」
「私じゃないよ。他の女子」
絵美は私の席の右斜め前の席に座っていて、入学してから毎日一緒にお昼を食べている。今日は、絵美が椅子を持ってきて真美の席で食べていた。
絵美はイラストを描いていて、いわゆるオタク系で恋愛の話はしそうに見えない。なので、意外とも思わずなんて返そうか悩んでいたら、絵美が話し出した。
「話変わるけど、真美ちゃんの後ろの席の不二さん、停学になってそのまま来なかったけど、明日から来るらしいよ」
「停学?」
「私も美術部の先輩から聞いたから、詳しくはしらないけど」
停学になっていた情報すら知らなかったので驚いた。何をしたんだろう。飲酒、喫煙、援交?どれも退学になりそうなことばかりしか思いつかない。周りにもそんなことしている友達はいなかったし、自身も真面目なのでこれらは、あまり身近ではなく遠い世界の話だと思っていた。停学期間が何日くらいあるかもしらない。
「そうなんだ」
上手い返しが見つからず素っ気ない返事をしてしまった。
絵美は箸のケースを開けたり、閉じたりしていた。パチパチと高い音が耳に響く。絵美が、この仕草をする時は話す内容がなくなった時によくやるのを真美はなんとなく気づいていた。気まずくなり、慌てて次の話題を探す。
「そういえば、この間、絵美ちゃんが言ってたアニメ見たよ」
本当はつまんなくて五分くらいしか見ていない。
「あ!あのアニメの戦闘シーン好きなんだよね。キャラクターデザインはあの有名なデザイナーで……」
絵美は熱心にアニメについて語っているが、真美はさっきの会話で、不二さんは文化部の中でも噂になっているなんて有名人だねって返せばよかったなぁ、と後悔していた。
興味があるフリをして相槌を打つのはすごく疲れる。しかし、興味ない、とはっきり言って絵美を突き放すような行動は自分にはできない。毎日これを次のクラス替えまでするのかと思うと正直、気が重い。
ずっと喋っているので、絵美のお弁当箱の中身はあまり減っていなかった。




