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愛国妃  作者: ちかえ
第四章 家族編
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兄との対話

「お前、そんな事も知らなかったのか」


 禁術について責めた時の兄の答えはそれだった。


 今は兄によってしっかりと防音の結界が張られている。兄妹の緊迫した雰囲気に、モニカが気を遣ってお茶のおかわりを淹れてくれた。ありがとう、と伝える。声は届かないだろうが、笑顔で分かるだろう。


「ではお兄様はあれが禁術だと知っていたんですね!」


 イライアの責めるような言葉にエルナンはため息をつく。どうやら彼はイライアが知っていた上で抵抗したと思っていたらしい。


「……普通に考えて分からないか?」


 当然のように言われる。首をかしげたかったが、そうするとますます馬鹿扱いされそうなのでやめる。

 だが、兄にはそんな事はお見通しだったようだ。それは、また吐かれたため息からもわかる。


「体を作り替える術が禁術でなかったら何なんだ」


 兄の口から出た言葉にイライアは目を見開く。


「体を……つくりかえる?」

「普通に魔力を吸い出したら魔力枯渇で死ぬか、ゆっくりとでも魔力が戻ってしまうかのどちらかだ。なくなりはしない」


 それはそうだ。だから普通の魔術師のように、または魔力持ちでない人間のように体を作り替えるのだとわかる。わかるのだが、納得はいかない。禁術という事は『副作用』があるのだ。教えてください、と頼んでみたが、話すと余計に拒否されるからと教えてくれない。ただ、イライアのような『闇属性』は副作用がよく出るという事は教えてもらった。そんな大事な事は早く知りたかった。


 睨みつけるが、兄は呆れた目をしてイライアを見るだけだ。


「そんなどうでもいい話は後にしよう。それより僕は父上の動向を話すためにわざわざ防音を張ったんだけど」


 どうでもいい話とは何だ、と言いたかったが、後半の言葉につい反応してしまう。


「お父様、怒っていらした?」

「全然。何とも思っていないように見えたな。不気味なくらいだよ」


 それは恐ろしい。そういえば兄と義姉が結婚したばかりの頃もそんな感じだった。


「嵐の前の静けさ……?」


 つい、そんな言葉が口をついて出る。


「まさにそうだな。どう動くか分からないところが恐い」


 イライアはうなずきで同意した。


「そんな大変な時に、肝心の妹は禁術がどうとか当たり前の事で怒っているし」


 ぶつぶつと文句を言われる。そうやって言われると何か申し訳ないような気になってくる。まだ納得はいかないのに不思議だ。


 とりあえず素直に謝る事にする。


「すみません」

「まったく。指導不足を痛感したよ」


 そう言って厳しい目をイライアに向ける。何故だか嫌な予感がした。


「この滞在中にみっちり勉強させるからそのつもりでいるように」


 そしてその予感は気のせいではなかった。イライアはがっくりとうなだれる。それを見て、兄はおかしそうに笑い、結界を解いた。この話はこれで終わりという意味だ。


「ところでビバル陛下はいつ帰ってくるんだ?」


 予想通り、兄は話題を変えた。


 ビバルがミュコスに仕事で行っている事は兄にはすでに話してある。この『家族との面会』の目的は妃が家族と会う事なので、ビバルはいてもいなくても何も問題はないのだ。なのにそれを告げたとき、エルナンは困った顔をした。

 そして今のこの質問だ。


「お兄様はビバル様にお話があるのですか?」

「ああ、大事な事だから、ビバル陛下にもきちんと僕の口から話をしようと思っていたのだが……」

「二日後には帰ってきますから」


 二日後ならまだ兄もここに滞在している。


 エルナンは安心したように息をついた。


「そういえば今日はフローラは同行していないのですね」


 話題を変えると、兄は苦笑する。


「そう毎回は連れて来ないよ。大体、フローラは最近、母上にべったりだし」


 それは初耳だ。まあ、イライアはアイハにはいないので知らなくても当然なのだが、やはり驚く。


「お母様に? どうして?」

「お前がいなくなって寂しくなったんじゃないか? フローラはお前に懐いてたようだし。僕は厳しいって言ってこっちにはあまり寄って来ないし」


 当たり前だ、と思う。


「お兄様、厳しいですものね」

「何だ。小さい頃は『おにいちゃま、これおしえてくだちゃい。あれおしえてくだちゃい』っていっつも……」

「何歳の頃の話をしているのですか!」


 つい怒鳴ってしまう。隣でモニカがうんうんとうなずいているのが、先ほど兄が言った言葉が真実だと証明してしまっていた。


「剣術のお稽古もイライア様がセドレイ様におねだりして始めましたしね」


 おまけに言葉で援護射撃をしている。正直やめて欲しい。兄もおかしそうに笑っている。


 イライアが頬を膨らますとさらに笑われる。


 その時、セリナが救世主のように昼食の支度が出来たと知らせてくれた。イライアはほっとする。


 おまけに今日のメインディッシュは魚介のオムレツだと聞いている。レトゥアナに来てから魚介類が好きになったイライアには嬉しいメニューだ。


——イライア、勉強の件、忘れるんじゃないぞ。とりあえず王太后殿下に許可はとって来い。


 心の中に話しかけられる。兄は先ほどの話を忘れてはいなかった。


 イライアはまたがっくりと肩を落とした。

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