表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛国妃  作者: ちかえ
第四章 家族編
68/88

お勉強

第四章『家族編』スタートです!

 最近、ビバルがイライアを甘やかしてくるようになった。


 趣味の乗馬をする時は、たまにイライアを誘ってくれるし、暇があればお茶をしてくれるし、何度も『デート』に連れて行ってくれるようになった。でもそれはビバルがイライアに恋をしたからではないだろう。


 何故そうなったかは分かっている。この間、イライアが不用意な事を言ったからだ。イライアがいなくなる事を恐れたから、こうやって楽しい事に誘ってくれるのだ。それは、時々ビバルの目が不安そうに揺れる事からもわかる。


 それでも王族としてやらなければいけない事はあるのだ。イライアはそっとため息をついた。


 今日はビバルはいない。ミュコスに呼ばれているのだ。お土産を買って来てくれるというので楽しみにしている。イライアも誘われたのだが、アイハの脅威がある現在(いま)、国王夫妻がどちらも国を留守にするのは危ない。なので後ろ髪を引かれながらも断る事にした。


 今は仕事の休憩時間なので、お気に入りのお茶を飲みながら書斎で読書をしている。読書と言っても、イライアが今読んでいるのは魔術についての本だ。


 いずれイライアはマルティネスと対峙する。勝負方法は間違いなく魔法か魔術だ。だったらもっと知識を深めなければいけない。


 こういうところをビバルに見られるとまた不安にさせてしまうのだが、今はビバルがいないので問題がないのだ。


 という事で、イライアは、イシアルで書かれた各国の魔術について簡単にまとめてある本を読んでいる。さらりと書いてあるように見えるが、結構よく研究しているのがわかる。最初はアイハ以外のところは斜め読みをする予定だったが、各国の話はとても興味深く、気がつけばどの国の話もじっくりと読んでしまっている。


 これでは勉強ではなく完全に読書だ、と苦笑する。ただ、イシアル語なので分からない単語がたくさんあるのが難点だ。そういうところは辞書を引いている。


 それにしても古いとはいえ、ここまでまとめられたのはすごい。その時代はどの国も平和だったのだろうかと考えてしまう。この頃はもうヴィシュ王国がヴェーアル国の侵攻を始めているから——本にもそう書いてあった——世界中がそうではないだろうが、ここまで魔術の情報を公開出来るのがすごい。今だったら無理だろう。


 ようやくアイハのところに到達する。前書きによると第一節が『アイハの王族の魔法と魔術』、第二節が『精霊の集まる不思議な領地』だ。


 はっとした。第二節に書かれているのはレトゥアナ王国の、いや、当時のレトゥア公爵領の話なのではないのだろうか。


 この本は王族専用の書庫に置いてあった。義母の蔵書だろうか。隣にイシアル語—アイハ語辞典があったのも気になる。イライアに読んで欲しいと考えて、わざと隣に辞書を並べたのだろうか。

 でも辞書に罪はないのでありがたく使わせてもらっている。


 とりあえず、第一節は飛ばして第二節のページに行く。この本を読み始めた目的は第一節なのだが、それは後で読むので問題はない。


 どうやら、レトゥアナの人たちは精霊と性格的に『いい』付き合いをしてきていたようだ。精霊はレトゥアナ人に穏やかな気分を授け、その影響と、元々の優しい気質が精霊を寄せ付ける、まさに奇跡のような関係だと書いてある。


 それは本当なのか調べてみたいが、国民を実験材料に使うのはイライアとしては気分が悪いのでしたくない。でも注意して観察くらいはしてもいいだろう。


 一番いいのは精霊と言葉をかわす事だが、イライアは精霊の言葉を知らない。ミュコスでは使い魔と話すと聞いた事があるので、調べてみようかと考える。城にいる精霊たちとお喋りが出来たらとても幸せだろう。


 ビバルがお土産として精霊に関する本を持ち帰ってくれないかな、と一瞬考え、そんな都合のいい事はないだろうとすぐに否定する。


 気を取り直して第一節に戻る。


 闇属性の話はあまり書いていなかった。書いてはあったが、『光の癒し』の話はもう知っている。だが、これが広まるきっかけになった先祖の話は興味深かった。どうやら、闇属性の王妹が、光属性の兄の癒しを欲して、彼を操った事があったそうだ。結局、彼女は意識の戻った兄王によって毒杯の刑に処せられたそうだが、彼女の残した日記を数代後の王が見つけ、後世に残したらしい。


 その日記は今も残っているだろうか、と考える。あったら読んでみたが、今は他国の王妃になった自分が読めるものではないだろう。


 読みたい話がどれも読めない。それはとても悔しい事だった。


 兄にねだっても駄目だろう。その兄は、明日『家族との面会』で来るのに、だ。


「お兄様のケチ」


 エルナンがいたら、『ふざけるな』と怒られそうな八つ当たりを口にする。もちろんイライアもこれが理不尽な文句である事は知っている。


 ため息をついてお茶を飲む。魔術で温度を保っているので、しっかり冷たくて美味しい。


 一息入れてから本に戻る。嫁いでいく王女の『魔力消しの儀式』についても書いてあったので目を通す。


「え?」


 そしてそこに書いてある言葉に目を見開いた。


「禁術、ですって?」


 禁術、というのはその術による影響が大きすぎて、基本的に行使する事を禁じられている術の事だ。どうしてもしなければならない状況なら許可されるが、あまり推奨はされないもの。


 そして、この本には『魔力消しの儀式』もアイハ以外では禁術に当たると書いてあったのだ。著者もこの儀式に対しては否定的な意見を持っているらしく、かなり辛辣に書かれている。


 あまりの真実にイライアは唖然とすることしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ