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愛国妃  作者: ちかえ
第三章 新しい侍女編
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報告

「お帰りなさいませ、国王陛下、王妃陛下」


 城に帰るとみんなが迎えてくれる。それはとても嬉しい事だ。


 王太后に挨拶を済ませ、部屋に戻る。部屋にはモニカが控えてくれていた。


「今帰ったわ、モニカ」

「お帰りなさいませ、王妃陛下」


 にっこりと笑い合う。こんな事はアイハではなかった。


 乳兄弟とはいい言葉だ。こうやってモニカを身近に感じる事が出来るのだから。モニカが本当の姉のように思えてくる。


 セリナとルシア、そしてモニカを残して人払いをしてもらう。これについては怪しまれない。モニカはアイハから来たイライアの乳姉妹だという話は使用人の間では有名な話だったらしいし、セリナとルシアは、イライアと仲良しの侍女だとみんなは認識している。こうやって水入らずで話す事は不自然ではないのだ。


「モニカ、改めて報告を」


 本当は仕事の話なのだが、そんな事はみんなは知らない。本当ならここにビバルかノエリアにも同席してもらいたいが、それをすると怪しまれるだろう。


 ミニィは、いや、エルミニアはいまだにベッドから出て来ないらしい。たまに食事に眠り薬を盛って部屋を確認した所、与えられた薬は全く飲んでいないようだ。まあ、病気ではないのだから当たり前だろう。ちなみにその全般はモニカに任せた。食事を運ぶのはカティアにやらせているので、今の所、エルミニアは怪しんでもいないようだ。いい気味だと思う。


 だが、その次の言葉にイライアは首をかしげる事になった。


「手紙でお知らせした通り、エルミニアは……」

「待って、モニカ。お手紙って何の事?」

「え? セドレイ様経由で送ったのですが……届いていないのですか?」


 そんな話は初耳だ。そういえば、三日ほど前に、兄がビバルだけを魔力空間に呼び出して話をしていた。後で内容を聞いてみたら『セドレイ派』の味方をする事と引き換えに、エルミニアの処刑許可証をもらって来たらしい。兄はちゃっかりしているな、と思った事を覚えている。こちらとしてもありがたいから文句はなかったが。


 もしかして、その時に一緒に渡したのだろうか。


 内容は何だったのだ、と尋ねると、さらに信じられない答えが返って来た。


 どうやらエルミニアは使用人を使ってイライアを襲わせるという計画を立てていたらしい。あまりの事にイライアはぽかんと口を開けた。セリナやルシアも唖然としている。追いつめられすぎて思考がおかしくなったのだろうか。


「破廉恥な……」


 セリナが怒りを込めてつぶやいた。本当にその通りだ。


「まあ、ホアキンやペドロならそんな事をするなんてあり得ませんから、その事だけはよかったんですけど……」


 イライアも同意見だ。彼らは超がつくほど真面目。おまけに現在お付き合いしている女性がいて、彼女にべた惚れなのだ。計画が実行される事はあり得ない。


 どうやら彼らは騙された振りをしてイライアに忠告しようと考えていたらしい。いい人たちだ。


 そんな事を考えているイライアを、セリナは不思議そうに見ている。


「ずいぶんと落ち着いていらっしゃるんですね」


 ルシアとモニカもうなずいているところを見ると、セリナと同意見らしい。多分、兄や夫もイライアが怒り狂う事を心配して黙っていたのだろう。むしろ、教えて欲しかったと思う。後でビバルを責めて、手紙は受け取っておこうと考える。


「だって計画は破綻しているのでしょう。されもしない事に怯える必要はないわ」


 安心させるために、にっこりと笑う。


「それに、この城に力でわたくしにかなう者がどれだけいると思っているの?」


 それから冷たい笑みを見せる。セリナが後ずさった。ルシアも顔を引きつらせている。モニカは慣れているのか苦笑しているだけだったが。


「王妃様、いいえ、イライア様、あんまり人を脅すものではありません」


 おまけに注意された。イライアは頬を膨らませる。


「子供ではないのですからそういう態度はどうなのでしょう」

「わかったわよ」


 そのもの言いはアイハの女官長であるエヴィーカみたいだ。アイハで女官だったモニカは間違いなく影響を受けているのだろう。


 その様子を見ていた二人の侍女は苦笑する。


「モニカ、王妃様の扱い上手いわね」

「幼い頃から仕えているからね。天の邪鬼な所も、意地っ張りな所も、お兄様べったりな事もよく知っているの」

「お兄様って? モニカのお兄さん?」

「いいえ。セドレイ様……イライア様のお兄様よ、もちろん。幼い頃、イライア様が行方不明になると必ずセドレイ様の居場所を聞いたものよ。絶対にそこにいるんだから。それでね、よく私の兄をだしに……」

「いい加減にしなさい、モニカ!」


 小さい頃の思い出を暴露される。これ以上喋られたくない。慌てて止めると、侍女達から笑いがもれる。


「ああ、もう! 問題はエチェバリア夫人の事でしょう。話をそらさないで!」


 誤摩化すと、笑いが爆笑に変わった。


「それで、エチェバリア夫人の事はどうなさるおつもりですか?」

「まあ、それ相応の報復は与えなければいけないわね。罠にでもかけてみましょうか。モニカ、取り上げた魔石は持っていて?」

「はい」

「それはいいこと」


 にんまりと笑う。


「では、反撃を始めましょうか」


 イライアは侍女達に向かって高らかに宣言したのだった。

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