流れ者の狂想曲
自分でも嫌になるような振る舞いばかりしていたことは間違っていない。
だから彼に嫌われた。
すぐに嫌いになったけれど、ずいぶん楽だった。
1人になると、他にも友達ができた。
その分、隠し事も増えた。
ほっといてくれよ、と嘆くような気持ちでいたことは間違いない。
構いたがりのお前に嫌われるなら本望だ、と僕は奥歯を噛み締める。
実際彼は嫌われるためのロールを演じてくれたのだから、僕には応える義務がある。
そこに居ないかのように振る舞い、
最初から関わっていなかったかのようにいろいろなものを絶って、
余所者らしく孤立しながらも助けてくれる人には懐きながら。
そうするうちに、僕は邪魔になった自分の体を自分以外のために削って生きることを覚えた。
すると途端に彼は僕を呼び戻した。
彼を繋いでいた赤い糸がまた切れたのだと言う。
またしても上手くいかなかった、と彼は笑う。
僕は自分でも寒気がするほどに冷めていた。
次には何を言うのやら、と思いながら彼の言葉を待つ。
しかしながら彼の不公平なまでに保守的な態度は変わらない。
だから僕は、彼以外の人への想いを誇張して伝え続けた。
どうか僕で揉め事を起こさないでくれよ。
そう思いながら。
特別な感情は常に一方通行でしかない。
何を求めたところで何が返ってくる訳でもない。
たとえ此方がどれだけ応えても。
だから何も期待しない。
待たない。望まない。求めない。
愛さない。
そろそろ、千切れた彼の糸は癒えて、次の赤い糸を見つける頃だろう。
彼が思うほど愛に飢えていない僕はここで身を引いて、
彼を満たしてくれる記号にあとは任せよう。
流れ者は流れ者らしく、風のままに、どこにも留まらないでいよう。
静かに狂いながらでも。
たぶんいつまでも、
「ほっといてくれよ」って気持ちばかりは
忘れられずに






