プロローグ〔2〕
ママの離婚も、もう三回目。再婚も、三回目。
小学生だった私にも、ママがいい加減なところのある人だってわかりかけてた。
だけど、ママは一人じゃ生きていけないひとで。今度はうまくいくかもしれないから。
だから私も、ちゃんと受け止めてあげなきゃって。
わかってる、わかってるけど。……家族って、何だろう?
私が中学生になって、あわただしかった三度目の再婚も落ち着いて。
今度は、新しく義理のお兄ちゃんができるって聞いて。そのお兄ちゃんが自己紹介してくれたあのときのことは、はっきり覚えてる。
「はじめまして。僕、拓斗っていうんだ。よろしくね」
さわやかな笑顔で、拓斗っていう私よりずっと年上のお兄ちゃんは私に右手を差し出してきた。
心臓がきゅっていたくなるような。初めての、感覚だった。男の人なのに、可愛い笑顔。でも、かっこよくもあって。
義理の兄弟ができるのだって、三回目。一回目は妹、二回目はお姉ちゃん。
二人とも、大好きだったのに。
ママたちが離婚した途端、遠い人になってしまった。
また、他人になっちゃうかもしれない。入れ込んじゃダメ。関係なくなるのが嫌だなんて思ったら、また辛いから。
だからうわべだけにしとこうって思った。
きっと簡単。学校でだって、やってた。クラスメイトの、いじめっ子のあのこにするみたいに。
可愛くない服を可愛いって言う。友達と思ってないのに、親友って言う。
だから、かわいくて無邪気な妹を演じてれば、きっと大丈夫。
関係ない人になっちゃうのだって、きっと平気。
いつまで家族でいられるかわからないけど。いつだって笑顔を返してくれる、この人は私の、素敵なお兄ちゃん。