幻想の星空
すっかり日も暮れたころ、夜ではいくら最強女剣士が居ようとも危ないということになり、近くの安全地帯で野営をすることになった。
野営といっても双方テントの類いはなく、あるのは小さなシュラフだけだった。
この日はポークスープを作ることにした。
どうやら最強女剣士でも料理は苦手なようで、代わりに俺が作ることになった。
そしてまきを集め、火を灯すと辺り一面には暖かな光が広がった。
何もない街道の安全地帯は暗闇と火の光で包まれている。
ちょうど、火がさかんに燃え盛り始めたころ、煮込んでいたスープの良い香りがしてきていた、隣ではお腹の鳴る音が聞こえてくる。
スープができると二人は焚き火を囲った、
「なかなか、美味しいな、人に作ってもらった夕飯は、いつぶりだろうか…」
戦闘時には決して見ることの出来ない彼女の顔を見るだけで作った甲斐があったもんだ、
そう言えば、なんで宝箱なんかに入っていたんですか?
問いただすと、彼女は
「それは…だな……少々訳があってだな…」
「どんな訳があったんですか?」
「…恥ずかしいな、だが、これも救ってもらった縁だ、話すとしよう…」
彼女の顔はもう真っ赤だった、それがスープの熱なのか、本当に恥ずかしがっているのかはわからなかったが、きっと話したくないことなのだろう、それを悟ると、その話を遮ることにした。
スープはとっくになくなり、焚き火ももう消えかけている。
後片付けをして小さなシュラフに入ると、目の前には満天の星空が映し出されていた。
ニールさんの旅の話、もっと聞かせてくださいよ。
そんな無茶なオーダーでも彼女は迷うことなく話し始める。
生まれ故郷の話、ボス敵に対してたった一人で立ち向かった話、時空間魔法の中に入ってしまった話。
満天の星空と彼女のいっぺん変わった話はどこか儚く、幻想的な物であった。