旅中
そんな、ひょんな出来事で最強女剣士と旅をすることになったのだが…
やはり最強と言われるだけあって強い。
当然、最弱装備の俺の出る幕はなく
道端で出会うザコモンスターであっても、魔法で丸焼きにするか、時空間魔法によって異空間から取り出した剣で両断するかの二択で、必ず無傷で戦闘を終える。
しかもその攻撃のほとんどが急所に当たっている
やはり、最強の名は伊達じゃなかった。
だが、しかし戦闘をしている彼女の顔は浮かなかった。
楽しくなさそうで、ただ、機械的に倒している。
そんな感じだった
「調子悪いんですか?」
俺は尋ねると彼女は口元だけは笑っていた。
そして、彼女がなにか言おうとした瞬間、
空からいきなりモンスターが襲ってきたのだった。
ワイバーンだ、反射的に叫ぶとこっちへ向かってくる、目を瞑ると鈍い音がした…
やはり、初期装備じゃ、勝てないな…きっと、俺は死ぬんだろう……
そして、目を開けるとそこには、見慣れた街ではなく、群青のロングコートをまとった彼女が俺をかばっていた。
「少し離れてろ」
いつもより強張った、緊張感のある声だが、その中のどこかに楽しさが含まれているような声だった
安全ラインを取り、後ろまでさがると彼女の戦う姿がよく見える。
いつもと変わって楽しそうだった、
そして素人の俺がみても見惚れるほどの魔法陣や捉えることの出来ない剣戟はただただ、圧倒されるだけだった
だが、そんなことより一番印象的だったのは、攻撃を受けてダメージと痛みを負っている時の顔が一番楽しそうであったことだった
この街道の強敵であるワイバーンすらも3分かからず倒してしまった彼女は今までの戦闘後とは打って変わって凄く生き生きしていた。
今までと違うのは今回は無傷でないこと、そんな彼女に
「お疲れ様でした」
と労うと彼女は少し困ったような顔で、
「見苦しい所を見せてしまったな、すまなかった、」
そんなことないですよ、凄いかっこよかったです。
率直な感想を言うと
「そうか、ならよかった」
そういうとどうやら彼女は上機嫌になったようだった、
街道の地平線に夕焼けが落ち始めていた、その夕焼けに移る彼女の姿はとても凛としていたが、どこか寂しさを感じる。
「あと、街までどのくらいの距離あるんですか」
問いただすと
彼女は少し振り返り、
「あと20kmくらいだ…もう終わってしまうな…」
彼女の寂しそうな声はきっと忘れないだろう