ヘヴン・バスターズ~Re Born~ 2話
「俺とHしてください!」
そう叫んで起き上がるとそこはホテルの一室のようなところだった。何でこんなところに一人で。いや、それよりも俺はしっかり轢かれたはずだ。奇跡的な生命力で生き延びたというのか。
「あら、随分積極的な子ね。でも、お姉さんも初めてだから優しくしてね。」
俺が様々な思いを巡らせていると枕元から声がした。どうやら一人ではないらしい。痛む頭をかばいながら振り向くと、そこにはすごい派手でスタイルの良い…美人がいた。
「おはよう。この世界に来てからずっとベットにテント作ってて、いやらしい限りだわ。」
美人にそんな下ネタをさらっと言われてしまうと何だか照れてしまう。それよりも聞かれてたのかぁ。恥ずかしいなぁ。
しかし、自分の名誉棄損を悲しむよりも先に現状を理解せねばならない。
「あの、ここってどこなんです?見たところ病院ではなさそうだし…、どっかのホテルかなんかですか?」
すると女はも待っていましたと言わんばかりに、満面の笑みで俺に思いもよらぬ、しかし心のどこかで予想していた答えをぶちかましてきた。
「ここは死後の世界よ。天国か地獄かで言ったら、天国でしょうね。今のところは。」
「死後の世界」。つまり自分は死者。そう考えると何だか悲しくなってきてしまう。もう母さんのもとには帰れないのだろうか。
「俺は相馬和人。あんたのお名前は?」
「私は小田切咲奈よ。改めてようこそ。死後の世界へ。」
そういった彼女は、俺には天使に見えた。
「さあ、1階に下りましょう。みんなが待ってるわ。」
彼女に手を取ってもらい、ベットから立ち上がるといきなり咲奈が抱きしめてきた。
「怖かったでしょう。でももう大丈夫よ。私が、そしてみんながいるわ。」
まだ、その「みんな」とあってはいないが、咲奈は柔らかくて暖かく、死んでいるのに生を感じた。
____________________
咲奈に連れられて部屋を出ると、この建物は高校の寮のような場所であることがわかった。廊下には自分が出てきたのと同じドアが5個と、奥には浴場まであるようだ。
「どう?ここが死後の世界だなんて信じられる?」
確かにここまでイメージとは違うと、疑いたくもあるが…
「まあ実際死んでますしね。疑いたくても疑いようがないというのが本音です。咲奈さんこそどうだったんですか?初めて来た時は。」
「最初は泣き叫んだわよ。お兄ちゃんのところに帰りたいって。だから、あなたは私からしたらちょっとアブノーマルなのよね。思考が読めないというか…。
私は本来、状況が飲み込めない新入り君たちに現実を伝えることが仕事なんだけどね。あなたが飲み込みがよくて助かったわ。それとも腹をくくるのが早いのかしら。」
話をするうちに、いつの間にか階段まで着いてしまった。
「この世界の詳しい話はみんなに聞いてね。それじゃ、また後で。」
そう言うと咲菜は「咲菜のへや」と書いてある部屋に入っていってしまった。
一人になってしまった俺は仕方がなく1階に向かった。しかし、降りるに従ってとある疑問が浮かんできた。彼女は「みんな」がいると言ったはずだ。それがどういう訳か階下は静まりかえっている。
俺は思い切って最後の段を踏み…切ろうとしたところで、あろうことか自分の足につまずいた。
慌てて手すりを探すが、無い。
「のわあああああああああああ!!」
「新入り君いらっしゃい…って、うわあああああああああ!!」
ドシーーーーーン。
「痛っててて…」
顔を上げるとかなり広めのリビングのようなところだった。そして、俺の目の前には二人の女子。手に持つのは…クラッカー?そして皆さん揃って阿呆の子のような顔をしている。
「ああ、せっかくビックリさせようと思ってたのに、これじゃあ私らがビックリさせられてんじゃん。」
そう言うのはセーラー服姿の可愛い…、貧乳のツインテール。ヤバい、もろタイプだわ。
「ホントだよ。自分の歓迎会を自分で台無しにしやっがて。」
俺の横で伸びていた、体格の良い男が起き上がりながら言った。
「まあ、良いじゃないですか。それに最初が失敗したからって、歓迎会はこれからですよ。まずは自己紹介から入りましょう。クラッカーは各自部屋にでも持ち帰ってください。」
今度はメイドが発言してきた。本当に個性豊かな人たちだ。
彼らは、メイドに従い自己紹介を始めて来た。
「じゃあ、まず私からね。私の名前は二階堂澪奈よ。この、ヘヴン・バスターズのリーダー。よろしくね。」
なんでセーラーなんだろうな。バニーにしたら…、ええい、けしからん。
「次は俺だな。俺の名前は二宮一見だ。一応この中の突一だ。これからよろしくな。」
その体格には似合わない美声。現実世界ならモテるんだろうな。
「じゃあ、最後に私ですね。私は佐竹清美です。遠慮せずにマーベリックとお呼びください。」
マーベリックってなんやねん。何の略称だよ。
「はい、最後はあなたよ。ちゃんと名乗りなさい。これから私たちの仲間になるんですから。」
仲間。なぜだか、ものすごく不安なんですけど。それでも俺は、募る彼らへの不信感を振り払い、彼らと契約を結んだ。つまり名前を述べた。
「相馬和人です。和人って呼んでください。これから宜しくお願いします。」
こうして俺の、あの世での生活が幕を開けた。