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旅立ち

 雨風が強い。もう3月下旬だというのに気温も15℃を下回っている。

 相馬和人はため息をついた。先月浪人が確定してしまったのだ。

 和人が通っていたE高校はそこそこの進学校で、入学できただけでも奇跡だった和人にとっては周りの期待は重荷でしかなかった。入学直後から間違った高校デビューを目論み、クラスで完全に浮いてしまっていた自分は、当時はかっこよく感じたものだが、今となっては情けなくて仕方がない。

 それでも母は高い学費を払って通わせてくれた。今度こそはと思い、今から予備校へ向かう次第である。

 さっき駅前で買ったばかりの参考書を読んでると、電車の到着のアナウンスが流れた。バックを肩にかけ直し、黄色い線の前に並ぶ。

「ヤバい!人が落ちたぞ!」

 声がした方を見てみると確かに人が落ちている。しかも落ちた際に腰を打ってしまったらしく、立てずにうずくまってしまっている。

 しかし誰ひとりとして助けに行こうとしない。所詮は他人事なのだ。俺も面倒事は嫌いだからと群衆の影に隠れようとした時、男と目が合ってしまった。窮地に陥った人の目はぜったいの力を持っていた。

 俺はとっさに線路に飛び降り男のもとへ向かった。

 「おい、何やってんだよ。すぐに助けてやるから待ってろ。」

 男は自分と同い年くらいで、手にはスマホを持っていた。

 男の股間と肩に腕を回し担ぎ上げ、ホーム上の人に協力してもらい、何とか助けることができた。しかし…

 「兄ちゃん。早く上がってこい!」

 気づいた時には、もう遅すぎた。懸命に手を差し伸べてくれるが、これを掴むことで被害を増やすことはできない。それに死ねば、この辛すぎる受験生活から抜け出すことができる。

 視界の半ば以上が電車に占められるなか、視界の片隅にひと組のカップルを見た。その時俺は気づいた。

 俺ってまだ童貞じゃん。

 童貞のまま死んでいいはずがない。何のために雄として産まれてきたのだろうか。

 瞬時に周りを見渡しパートナーとなる女性を探す。滅茶苦茶可愛い娘なんてそうそういるはずが…

 いたーーーー!

 俺は彼女に向かってラブコールを送ろうとして、意識は途切れた。

初めての投稿ですが、皆さんに読んで頂けたら幸いです。

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