歴史人物はバカだったのか?
「──俺は、平将門という」
…な、
「「なんだってえええぇぇぇぇええぇぇぇえぇぇええええぇっ!?」」
「あっはっはー! 驚いたかー!!」
「驚くわ!!」
「っていうか本物…? 凄く女の子みたいなんだけど」
「言うな!! 気にしてるんだから!!」
咲野の言うとおり、将門と名乗る男は女っぽかった。
…いや、もしかしたら「実は女の子でしたー」みたいなものなのかもしれない。
「女だったのか? それとも、俗に言う男の娘…!?」
「うっさい!!」
「しかもチビだ!!」
「うっさい!!」
「めっちゃ細い!!」
「うっさい!!」
「声も女の子だ!!」
「うっさい!!」
うっさいという言葉で切り捨てられてしまった。
…合計4回言われた。
「うっさい!! 俺は女じゃねえっ!! ちゃんとあるとこあるぞ!!」
下ネタかますな!!
「何が? 胸が?」
「胸はねぇよ!!」
咲野も咲野だ。
「あー…ところでなんか本無い?」
「何で?」
「本読みたい」
行き成り本を読みたいという人間はこれまでにいるだろうか、いや、いない。│(反語)
もしいたとしても、ガキかよっぽど非常識な奴だけだ。
「漫画ならあるけど」
「…平仮名もしくは片仮名表記のやつじゃないと俺は読めないぞ」
…ん?
「…え?」
「だからー、漢字読めないんだってばー…」
「…ゑ!?」
漢字が読めないと来た!!
…これって、日本人としてどうなんだ?
っていうか、それなのに現代の言葉話せるのか!?
すげえな親皇将軍平将門!!
でもすげえバカだ!!
「うー…絵本じゃないと読めないー…」
「絵本!?」
幼児か!!
「その前に…聞きたいことが“山ほど”あるんですけど…」
「ん? 答えられる範囲でなら答えるぞ?」
ナイス咲野。
その間に俺は絵本を買いに行ってくる。
…いい歳した男が絵本買いに行くというのも不思議な話だが。
友人や知り合いに出会わなければいいけど。
──
「えー、貴方は本物の将門さんですか」
「正真正銘本物の将門だが何か?」
「いや疑う点が多すぎて…」
「俺が偽者だって言いたいのか!!」
「いやいや信じろって言われても無理な話でしょ!?」
「信じるって言ったじゃねーか!!」
「あたしは言ってないもん!!」
行き成り来られてそんな名前を出されて信じろといわれても無理な話である。
「じゃあ外に出よう!!」
「えっ!?」
外に勝手に出て行った。
…自由な人だったんだ。凄く自由な人だったんだ…
でもいくらなんでも自由すぎるでしょ…勝手に外出るとか…
っていうか質問タイムが!!
「あの…外でて大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ!」
「何故そう言い切れるんです」
「俺の姿は人には見えないからな! 霊体だし! だが、まぁ…
──お前らみたいな奴には簡単に見えちまうがな」
それって、霊感体質のことだろうか。
「って何シリアスムード作ってるんですか!!」
「駄目か? つーかお前あんまり騒ぐと変な目で見られるぞ?」
「あ、そうか…見えないんだっけ」
…もしかして、これが証拠だということか。
「はい答えなら出した。さー次行くぞー」
「えぇっ!?」
これで答え出したことになるの!?
「もういいや、次行きますね…えーと、此処には何しに来たんですか?」
「んー、観光?」
観光!? 平安の人間が!? 平成の世を!? 観光するの!?
「観光…へぇ、観光…」
「で、ほんとは道真と院様といたんだけど…」
「まさかはぐれた?」
「なんで分かった!?」
「いやもうこの際分かんない方が可笑しいんじゃないの!?」
「で鳥が飛んできてなんか狙ってるみたいで慌ててたら落ちて今に至る」
「経緯を簡潔に纏めてくれて有り難う御座います」
「けーい? かんけつ? って何?」
あぁ、そうだ、漢字も読めないバカだったんだ。忘れてた。