夏の怨霊祭 前編
「あーそろそろほ○怖の時期かー…」
テレビをつけるとCMが流れる。
そのCMを見て思った。
「なぁ、百物語とかやってみねぇ?」
「…え」
怨霊の皆様がきょとんとする。
百物語とかしたことないんだろうなぁ。しても怖くないだろうけど。
「なんだそれ?」
「怖い話を順番にしていくやつだよ、蝋燭を100本立ててね、
全部に火をつけて、1つ怪談を語るごとに1本の蝋燭の火を消すの。
それを100回やるの。100本目の蝋燭の火が消えた時に怪奇が起こるんだって。
面白そうでしょ?」
「やだやだやだやだ絶対やだあああぁぁぁぁぁっ!!」
「えっ!?」
幼児怖がりすぎだろ!! お前も怪奇なのに!!
「怨霊が怪談を怖がるなんて」
「べべべ別に怖くなんてないし!! 怖くないし!!」
「とかなんとか言って涙目じゃん」
「あ、汗だしっ!! これは汗だから!! 汗だもん!!」
「おーおー、震えてら」
「さ、寒いからだもんっ」
「今日33℃だぞ」
「さ、寒いし…」
いや、怨霊が怪談怖がるってどうよ…? 怨霊だって怪談の一つじゃね?
こいつ関連の怪談って結構あるだろ…首が飛ぶとかもそうだし…
つーか言い訳が可愛いな。すげぇ幼児に見える。幼児が。29歳なのに。
「準備できましたよー」
「早っ!?」
大納言さんがすでに蝋燭の準備をしてくれたらしい。
なんとサービスで火まで付けていただいた。有難い。
「うっうっ…やりたくないよぅ…」
「あー、じゃあ耳塞げば?」
「うん…そうする…」
怖がりすぎだろ。
─
「怨霊の皆様は自分の話は無しってことで」
「おーけーおーけー」
「承知した」
「分かりました」
「了承」
「分かった」
「分かったー!」
「うん…多分…平気…」
1人だけ可笑しい人がいる。
─
「じゃあ誰から行く?」
「じゃんけんで行こうぜ」
「恨みっこ無しなー」
「「「さーいしょーはグー!! ジャーンケーンポイッ!!」」」
俺と赤い人がグー。他はチョキ。
「じゃあ俺とお前でやるか」
「負けちゃった人は集まってやろうかー」
「最初は…」
─
じゃんけんの結果。
「うわああぁぁぁぁぁ嫌だあぁあぁぁぁぁぁぁああっ!!」
幼児は最初になった。ご愁傷様。
「ま、まぁまぁ…しょうがないよ」
「やりたくない…やりたくないよ…うぅ…」
「僕2番だから…」
「2番の方が絶対いいもん!!」
「…じゃ、じゃあ変わる?」
「えっいいのっ!?」
え。
「あっずりーなお前」
「なら某も変えたいな」
「我も変えたい」
「あたしも…」
「私も変えたいですよ…」
「や、やり直す…?」
「やり直すか…」
結論:じゃんけんやった意味が無かった




