幼児脱走
…なんで、僕はこんな目にあっているんだろう。
「いんさまおしえてっ」
その顔やめてください。
…この子が男の娘(笑)なのが救いだ。これがおっさんだと思うと…ね…
「おねがいおしえてっ、ね…?」
「えー…」
絶対分かってくれなさそうなんですけど。しかも「ね…?」って何。
「教えてくれなきゃ…」
「教えてくれなきゃ?」
「教えてくれなきゃ…」
なんだろう。
「…この家丸ごと食ってやるから覚悟しろ愚民共」
何言ってるのこの子!? っていうか愚民共って…
「いやいやいやいや駄目だよ!? 分かった、分かりました!!
喜んでお教えます!! お教えさせていただきますとも!!」
──
俺だ。清く正しいお兄ちゃん、雄也だ。
…まァ、経緯は省くが、お陰で厄介なことになった。
幼児は外に出てあちこち走り回っている。
そして、遂には目の前から消えてしまっていた。
「ほ、ほら…!! だから教えたくなかったんだよ!! 皆のバーカ!!」
「いや…流石に此処まで酷くなるとは我からしても予想外でな…」
だろうな。
流石に幼児とはいえ、此処まで悪い奴だとは誰も思わんだろう。
「急いで探そう!!」
「「「おー!!」」」
プロジェクト・Moritaの結成の瞬間である。
え? ダサい? 其処、うっさい。ダジャレ? そんなつもりは一切ない。
「僕らは空から見てくるね!」
「行ってらっしゃーい」
空へ消える道真公と上皇サマ。
見送る咲野。
「…俺らも一応探そうか」
「確かにじっとしてても…ね」
服装はそのまんまだから、案外見つけやすいだろう。
…それに、チビだし、パツキンだし。
と思ったが、案外そうでもないようだ。
──
「…ふー…」
脱走成功。
「見つかったら嫌だな…あー服装だけでも変えてくれば良かったな…」
服装がそのまんまっていうことがちょっと辛いかな。
…この格好だと歩きづらいだろうし。今でも周囲の目が痛いのに。
周囲の視線は俺の首に釘付けだよまったく。
「あー…」
失敗した。




