腹へり将軍の腹が満ちる時は永久に来ない
やあ、俺だ。雄也だ。
ちょっと今あった出来事をありのままに話すぜ。
─
「なんじゃこりゃあああぁぁあぁぁぁああぁっ!?」
学校から帰ってくると空の酒の瓶が何本も転がってるのと、つまみの袋が散らばっていた。
「どういうことだってばよ…」
有り得ないだろこの数は。
俺はこんなにつまみを買った覚えは無い。そもそも酒なんて買わない。
当然咲野も買わないだろう。つまみはともかく、酒なんて買う学生がいるか。
そんな奴は大学生かよっぽど不良な奴くらいだろう。
しかし、犯人はもう分かっている。
「おい幼児!! 出てこいや!! 幼児!!」
出てくる気配が無いんですが、どうしましょうか。
俺にどうしろと言うんですか。いやマジで。
…あぁ、でも幼児って呼ばれるの嫌なんだっけか?
ならば…
「親皇将軍平将門様出てきてくださいませー?」
「はーい!!」
いい返事ですねー。バカか。
「お前これ全部盗んだんだろ!?」
「あ? 別にお前がやったんじゃねーし良いだろ」
「よくねえよ!! バカか!!」
「…そいつはバカだぞ? 今更気づいたのか少年」
あぁそうだった。こいつ一の漢字も読めないバカだった。有り難う道真公。
「見えないことを良いことに…」
「崇められたぞ! 恐れられたぞ! すごくね!?」
「別の意味でな」
ところで、こいつの身体はどうなってるんだろうか。
酔っている、というわけでは無さそうだし、あんだけの食い物を一瞬で消すし、
おまけにうちの冷蔵庫を勝手に開けて全部食い尽くして、あいつは一体何なんだ。
というか何がしたいんだ。迷惑かけたいだけなのか。
「なーなー腹へったー」
「もう!? 早っ!!」
すげえなこの幼児。太ってるようにも見えないし。
こいつの腹が満ちるのは何時だろう。
「つーかあんたどんくらい食ったら気が済むんだよ…」
「あん? まー…うーん…どんくらいだろ?」
自分でも把握してないぞこの幼児。
「しかも俺らが寝てるときはどうすんだよ」
「あーそこらの畑荒らして…」
「「「最悪だっ!!」」」
畑荒らしとかもっとひでぇなオイ!!
「それでも神様か!!」
「いいじゃんいいじゃん腹へるんだもんしょうがねーじゃん」
「しょうがねえで済むか!! このバカ幼児!!」
「誰が幼児だって!?」
「あぁ!?」
「あぁ!?」
困る上皇サマ、知らん振りの道真公。
俺と幼児は言い争い。
─
で、今に至る。
因みに今幼児は俺の頭を齧っている。
「痛い痛い痛い痛い!! 血出てる!! 血!!」
「うーうー…食いもんねーんだからしょうがねーじゃん…」
もうやだこいつ。




