力を受け継ぎし者
第8話「力を受け継ぎし者」
呪われた地下室で竜華が出会ったのは白と黒の2匹の竜だった。
そこで2匹は竜華に頼み事をする…
みんなは『竜』って知ってる?
物語やファンタジーに出てくる生き物?だよね?
私も竜に関する話は何度か聞いたことがある。
でもそれはただの空想上のことだとそう思っていた。
だからこそ今の状況にかなりビックリしています。
「お目覚めですか?竜華殿…」
いま私の目の前には信じられない光景が広がっていた。
さきほどまであった巨大な祠は完全に無くなっていて…
そして私がすこし見上げるくらいの目線に白と黒の2匹の竜がいるのです。
「えっ…あ、あ、…あの…」
あまりの事態に焦りすぎて呂律がまわらない…アワワワ…
なんだかものすごく恥ずかしくなって私は俯いてしまう。
これは…夢…?夢…だよね…だったらお願い…早く覚めて…
そのまま俯いてギュッと目を瞑っていると顔の近くで気配がした。
「どうしたんだ?」
声がしたからすこし目を開けて少し目線を上げてみると…
黒い方の竜と目が合った。そしてニヤっと口の端を持ち上げて私に迫ろうとする。
「な、なななななっ!!!!!ひゃっ!!」
その表情に私は思いっきりビックリして後ろに後ずさる。
だがホコリだらけの床に足をすべらせてそのまま後ろに尻餅をついてしまった。
「いったぁ~~~…」
かなりの痛さに目尻に涙を浮かべて前を見ると黒い方がクスクスと笑い、白い方が心配そうにこちらを見ていた。
笑われたことに少し不快感をもったが私は彼らに尋ねた。
「あなたたち…誰?」
「申し遅れました。私たちはこの家の先祖である双竜です。」
この家の先祖…ということはお兄ちゃんの言ってたことは本当だったの?
とりあえずその後私は2匹から説明をしてもらった。
まずこの家のことから。
この家は200年以上の歴史があって今は一般人が住んでるけど昔はこの町の当主が住んでたんだって。
それでその当主はこの家の先祖である2匹の竜の力を手に入れようとした。
そして継承の儀式を行った物のその人は竜族の力の証である牙に認められなかったらしい。
その後も跡継ぎ達が継承の儀式を行ったが、誰1人として認められた人は出てこなかった。
さらに20人目の儀式の時に今までの当主たちの怨念が現れ、2匹の竜は祠として封じられ、その場にいた人達はみんな死んでしまったそうだ。
私が幼いときに聞いた悲痛な叫びはその当主たちの声で、おおきな目玉もその当主達の怨念の集まりなんだって。
そして次に私がいま持っている竜の牙のこと。
前に説明したとおりこれは竜族の力の証である牙で認められた人以外には反応しないらしい。
「あなたは私たちの封印を解いてくれました。そこであなたにお願いがあります。」
「な、なに?」
白い方が真剣な眼差しで私をじっと見つめてくる。
そして黒い方も彼に習うように続けて言った。
「俺たちと契約をしてくれないか?」
け、…契約?
契約って何か取引とかするときにするアレ?
頭の整理をしようと思って黙っている私に黒い方が私に言う。
「契約をすれば竜族の力がお前に宿る。だが危険なこともある。」
「危険な…こと?」
私がそう言うと白い方が頷いて続ける。
「竜族以外にも魔族やその他にも色々な族種がいます。その族種と契約を結ぶ人間もここ最近で増えてき始めています。ですがその力を悪用する人間が増えてきて、様々な族種達が苦しんでいるのです。竜族の力はかなり稀少で珍しい力です。契約すればきっとねらわれるでしょう。」
なるほど…まだよく分かんないけど大体の事態は把握できた。
この世界とは違う世界の種族=族種と契約を結ぶ人間が増えてきて、その中からその力を悪用する悪い人が出てきている。
族種は一度契約すると相手が自ら契約を破棄するか、力を失うまで契約を解除することが出来ず、抗うこともできない。
つまり契約相手が悪人だからといって契約している族種も悪い族種では無いのだ。
基本的に族種は性格が温厚らしい。
つまり、私は契約をしたらその悪人達に狙われるけど、それを利用して族種を助けていって欲しいのだと2匹は言う。
もちろん普通だったらやっかいごとはイヤだし命が危ない目に遭うなんて考えただけで怖い。
だからイヤだと誰しもが言うだろうけど…
「分かった…契約…結ぶ…」
私は契約を結ぶことを話を聞いて決心した。
今まで誰の役にも立てなくて助けられてばっかりだった私。
誰かの役に立てられるようになるのが私の一番の願いだった。
族種さん達は人じゃないけど…それでも私に助けられるのなら助けたい…
「ホントにいいんだな?止めるなら今の内だぞ…」
黒い方が最後に確認をとってくる。
だけど今更そんなこと言われたって私の決心は変わらない。
静かに私が頷くと2匹も頷き、「じっとして目を閉じてくれ」と言われた。
そして継承の儀式が始まった。
「我が族種と契約を望む者。汝の名は竜華。彼女に我が竜族の力を授ける」
その途端に体が温かくなった。
何かが体の中に流れ込んでくるような感覚になった。すこしだけ気持ち悪い…
「汝、契約者となりて我が竜に名前を授け力を受け継ぐことを此処に命ずる」
その後、体が浮遊したような感じになり流れてくる感覚が消えた。
何も感じなくなり目を開けてみると2匹は微笑みながら私を見ていた。
どうやら継承の儀式は成功したみたい…とりあえず安心した…
「さぁ、早速だが俺たちに名前をくれよ」
「分かった………って………えっ!!名前!!」
驚いて2匹を見ると、とても嬉しそうな顔をして私を見てる…。
黒い方に至っては尻尾をユラユラと揺らしちゃってるし…
そうだなぁ…それじゃあ名前は…
第8話「力を受け継ぎし者」でした。
なんかさらによく分からん展開に…!!
次からはまた学校生活のほうも取り入れつつ族種のお話も盛り込んでいきたいと思います。
あ、あの2人どうしようか…