同じ気持ち
第15話 「同じ気持ち」
視線のことで頭がいっぱいの竜華。
そんな彼女を見て赤亞は第一印象を思い出す。
「で、どうだったのよ?女帝の監視。一日様子を見張ってたんでしょ?」
「あぁ。だがさすが女帝様だな。完全に俺様の気配には気づいてた。」
ケラケラと笑いながら男は言った。
「ちょっとアクセル!まさか見つかったんじゃないでしょうね!?」
女の方がギョッとした表情でアクセルという男を睨み付ける。
その様子にアクセルは「おいおい・・・」と声を上げながら両手を挙げて首を振った。
「落ち着けよレイア。気づかれたのは気配だけさ。姿は見られてない。」
「何よ。ビックリしたじゃない・・・」
「気配”には”って言っただろ・・・」
レイアという女は緊張が解かれたかのようにドッとソファーに座り込んだ。
部屋には大きなソファーにテーブル、そしてシャンデリアと高貴な雰囲気が醸し出されている。
棚の上などには骨董品や花も飾ってある。
それを指でいじりながらアクセルは不意にニヤリとした表情で楽しそうに笑った。
「でも結構楽しかったぜ。かくれんぼ。女帝ってば周りを警戒してずっと視線を動かしてたんだもんよ。おかげで少し危なかったかもな。」
「何よ。結局は苦戦してたんじゃない。で、女帝って子供なんでしょ?どんな子だった?」
レイアは楽しそうに笑いながらアクセルを見つめる。
アクセルもフッと笑ってから一枚の写真をレイアに投げつけた。
そこには校庭と思わしきところで友達と楽しそうに笑う桃色の髪と金の瞳の少女の姿があった。
まだどこか幼い顔に少しの気品と儚さが漂っている。
「へぇ~結構カワイイ子ね。で?この子があたし達の新しいcibleなのね。」
「あぁ、そうだ。この子なら、あの方を・・・」
少し顔を陰らせ2人は俯く。
なんと自分たちは情けないことだろうか。
こんな少女に重荷を背負わせるようなことをしなければならないなんて・・・
しかし目の前にある希望を捨てるなんてことは出来ない。
一度、一瞬にして希望という名の未来を失っただけに・・・
こわい。こわい。怖い。コワイ。
自分の中でその言葉だけが絶えずにリピートされてまたリピート。
背中に駆け抜ける痺れるような感覚は竜華の意識を乗っ取るほどに大きくなっていった。
「う・・・り・・・竜華殿・・・」
「ぐ・・・ぐるじい・・・おえっぷ・・・」
そんな彼女の腕の中で顔を真っ青にしながら普段より大きめに体を小さくしていた双竜が呻き声をあげていた。
しかし、恐怖に体を震わせている彼女に声は届かなかったようで締め付ける腕の力は緩む気配がない。
「おい!おい!!」
それを見かねた1人の少年が彼女の肩を激しく揺さぶり声を掛けた。
今度はまっすぐと耳に届いたのか彼女は腕をパッと放し、双竜は情けなく彼女の膝の上に落下した。
「え・・・あ・・・あれ?」
目の焦点を合わせて顔を上げると自分と同じ瞳、自分より少し暗い桜色の髪をした少年「赤亞」と目が合う。
交錯するまばゆい輝きを持った黄金の瞳が互いの顔を瞳に写す。
彼の瞳に映る自分を見ていると何とも言えぬ安心感が全身にあふれ出し、ようやく体の震えが止まった。
「・・・大丈夫・・・みたいだな」
竜華の肩の震えが止まったのを確認して赤亞はふぅっとため息を吐いた。
そのため息から自分が何か彼を心配させるような事をしたのかと思いとっさに竜華は「ごっ、ごめんね!」と頭を下げた。
そんな彼女の様子に小さく赤亞は笑った。
「俺だけか?」
「え・・・?」
「ほら、膝の上。」
「ん?・・・・・・・・・・・あーーーーっ!」
赤亞に促され視点を膝の上に移すとハクとクロエがまだ少し青い顔で苦しそうに呼吸を繰り返している。
とっさに2匹を抱き上げて竜華の方は「ごめんね!!」と繰り返していた。
2匹の方はもう気にしてないようで彼女の肩や頭によじ登り、頬にすり寄ったりなどして戯れている。
竜華の方もさっきの恐怖はもう消えたのか、震えが再発することはもう無かった。
それからしばらく経った頃。
「おい。」
「ぅえ?なに?」
今日の仕事を探しに行ったジェイクを待っている時に赤亞は竜華に話しかけた。
少し間抜けな返事をして振り向く竜華に少し真剣な顔をして問いかける。
「今日なんかあったろ。」
「っ!」
そう言うと、とたんに竜華は顔を少し強ばらせた。どうやら図星のようで。
大きな黄金色の瞳がまた少し揺れ始めている。
どうやら怖いことにでも出くわしたらしい。
「あ・・・いや、その・・・ただ今日1日・・・嫌な視線を感じてて・・・ずっと見られてる感があって・・・」
「・・・」
俯いて少しずつ話す竜華を見て赤亞はやはりと思った。
異界の中で彼女の存在が大きくなりつつあるということに。
そもそも族種のなかで最上位の竜が契約者を持ったという事だけでも相当な出来事で。
恐らく今までの歴史上で初かもしれないとジェイクも話していたのを覚えている。
そんな人物が此処に来たときの第一印象について表には出さなかったが驚いたことも。
1つはやはり彼女の見た目。2匹の竜と契約したと聞いていたからか、少し偉そうなヤツだと思っていたが、実際は気が弱そうな細っこい自分と年も変わらない少女だったこと。
しかしその見た目にかかわらず、強い意志と心を持っているということ。
そしてもう1つ。
瞳の色も髪の色も自分と同じだということ。
初めて彼女と顔を合わせたときに一瞬だが目を見張った。
恐らく竜華は気づいてなかっただろうが・・・
何もかもが同じではない。
瞳の色は互いに引き込まれるようなまばゆい黄金の輝き。
髪の色に関してはこちらの方が少し暗い桜色をしており、彼女の方は綺麗な桃色だ。
しかしそれでも他人から見れば同じ色に見えるだろう。
そう、並んだら双子と間違えられてもおかしくないほどに。
自分の癖のある髪型が幸いしてか周りにはそうは見えないようだが・・・
家族の髪や瞳の色を受け継いでいない赤亞にとっては衝撃的な事だった。
そうやって考え事をしていると竜華がこちらを上目遣いで見ていることに気がついた。
桃色の前髪の隙間から輝かんばかりの瞳が不思議そうにこちらを捕らえている。
とっさに彼女の頭に手が伸びた。ほぼ無意識だ。そして撫でる。
「うにゅ・・・・・・」
【柔らかいな・・・】
撫でながら不意に赤亞はそう思った。
サラサラでフワフワで触り心地のよい髪。花のような臭いが鼻をかすめる。
そう思ったところで自分は一体何をやってるんだと思い彼女の顔を見ると、何やら気持ちよさそうに目を細めていた。
それを見た途端になんだか不思議な気分になり、またもや無意識に彼女の髪を激しく掻き乱す。
「ちょっ!・・・・・・・・」
「悪ぃ、ちょっと遊んでただけだ。」
そう言って赤亞はパッと手を離す。
チラリと目だけで彼女を見ると、両手でボサボサになってしまった髪を押さえながら唇を尖らせていた。
しかし、元々くせが無い髪なのかすぐに元の形に戻っていく。
そして彼女は少し元気になったようだ。
「視線のことなら双竜達に見張りを頼めばいい。何なら俺の族種も見張りに回すぞ。」
「え・・・でもそんなことしたら五十嵐君に何かあったら大変なんじゃ・・・」
「問題ない。多分俺は狙われてないだろうからな。」
そう、恐らく敵のねらいは竜華のみ。
もちろん双竜の方も狙われているだろうが先に狙うとすれば明らかに彼女だろう。
竜と人間、どちらが先に狙いやすいかと言われれば誰もがきっと人間という。
人間は単体だけでは弱いのだから。
自分たちも狙われていたとしても、それはあくまでグリコのおまけの様なモノだ。
「それと、明日は俺が放課後にそっちに寄る。」
「それって迎えに来てくれるってこと?」
「まぁ俺の族種がそっちにいるんだし。その後近くの見回りに行くのはどうだ。」
「うん・・・いいけど・・・」
「決定だな。忘れんなよ。」
「わ、忘れないよ!」
最後に茶化してみると恥ずかしいのか竜華は少し顔を赤くして怒った。
大分顔色が良くなったと赤亞は心の中で思う。
なぜか彼女といると普段の自分とは全然違う自分がいる気がした。
普段は人との関わりをあまり持たず、無愛想と言われ、自分でもそう思っていたのに。
まるで妹の心配をしている兄のような感覚だ。
「なんか、五十嵐君と話してると不思議な感じ。なんか・・・うまく言えないけど、懐かしい・・・ような・・・」
隣で竜華が異界の冷たい風に髪をなびかせながら静かに言った。
それは赤亞が感じた思議な気分と酷く酷似していて。
「あぁ・・・何でだろうな。」
風が不意に強くなった。
第15話「同じ気持ち」
すみません。と一言いいたい気持ちでいっぱいです。
2ヶ月以上開けてたのね・・・
まぁ見てくれる人なんてあまり居ないでしょうけど、毎日1つでもアクセスがあったので嬉しかったです。
さてこの物語のメインとなる竜華と赤亞で私はどうしてもこんな感じにしたいというのがあります。
それは、「背中合わせがしっくり来る関係」
分かりませんよね(・ω・;)
分かってくれたら嬉しいです。
実は私自分でキャラのイラスト描いてるんですけど、その時に竜華と赤亞を背中合わせにしてみました。
キャラの表情が表情なだけにシリアスでした。
まぁヘタだからしょうがない。うん、ヘタだから・・・
そもそも絵の載せ方とか知らないんですけどね。
所変わってプライベートの事で。
高校受かりましたー!やたー!!
まぁ、5教科で180点以上が合格ラインなんていう安い高校でしたけどね・・・
お馬鹿な私は5教科で230点が精一杯ですが何か?
卒業式も先週の金曜日に終わって今は自宅警備員として家でダラダラしてます。
たまに友達の家に出張にも行きます。
あ、私人間として終わってるわ(笑)
それと小説情報変えました。
色々なんかゴメンなさい・・・