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一日の幸せ  作者: RYUNA
13/19

クラリネット

第12話「クラリネット」


順調に異界の守護者として仕事をこなす竜華。

そんな竜華に三神がある誘いをする。

-------------


今はね、ただ前に進めるだけ進むしかないんだよね・・・


いま出来ることを私はやらなきゃ


何1つ守る事なんて出来やしない


-------------



「くそっ!!いったい何なんだよ、あの餓鬼どもは!!!」


ここは東京都の渋谷あたり。

都心部ということもあり街は昼と変わらず活気に溢れていた。

そんな活気をよそに、ただひたすらに暗い道が続く路地裏に1人の影。


「なんだってこんな事に・・・ッ!!」


そうぼやきながら走り続けていると目の前には壁。

行き止まりだった。


【引き返すかっ!いや・・・それじゃ餓鬼どもと鉢合わせになっちまう!!】


男は焦っていた。

せっかく手に入れた物を奪われ、元の生活に戻ることが。

何より怖かったのだ。


「せっかくの力を失ってたまるもんか!!!」


「それは無理だよ」


「ッ!!!!!」


あわてて後ろを振り向くと、13才頃の女の子が1人。こちらを見ていた。

その彼女の両手には白と金でデザインされた拳銃が2つ握られている。

そしてその彼女の隣にもう1人、同じ年ぐらいの男の子も現れた。


「あぁ、アンタにその力を扱う意味は皆無だな」


そういう彼の両手にも円の形をした手裏剣が握られている。

男は冷や汗を垂らしながらも冷静に逃げる方法を考えていた。


【いくら何でも相手は所詮子供。殺されそうになれば尻尾を巻いて逃げるはず・・・】


「ふんっ!お前ら子供に何が出来る?正義ごっこのつもりか?あぁ?」


そういって相手を挑発させようとする男。

その後に自分のパートナーを向かわせ開いた道を駆け抜けようというのだ。

だが向かい合っている2人は男に対してただ睨み付けるばかりだ。怯む気配もない。


そしてただただ焦っている男の後ろに-巨大な影-


そのまま男はその影に押しつぶされ意識を失いすべては朝日と共に元に戻っていった。




ジリリリリリ・・・


「う~~んぅ・・・」


朝の光が差し込み、それは窓から1人の少女を照らした。

鳴り続ける目覚ましを止め、少女は体を起こして盛大に欠伸をして体を伸ばす。


「ふわぁ~。もうこんな時間なのかぁ・・・」


目覚ましを見てみると6時50分。

昨日は夜に少し遠出をして帰ってきたのが夜中だったのでさすがにまだ眠い。

ふと枕元に目をやるとハクとクロエが並んで寝息をたてていた。

まだ昨日の疲れが取れきってないのだろう。このままにしておくことにしよう。


「竜華ちゃ~ん。朝ご飯よー」


一階からの呼び声は久々に聞いた母の声だった。

「は~い」と返事をしながら竜華は急いで制服に着替え鞄を持ち、一階に下りていった。




「ふわぁ~・・・」


「竜華。寝不足か?」


「めずらしいね。いつも早めに寝てるのに」


1時間目が始まる前の休み時間。

やはり眠気が取れず、小さく欠伸をすると優輝と貴之が竜華の側に寄ってきた。


「あ~うん。昨日ちょっと夜更かししちゃってね」


「へぇ~生真面目な竜華がこれまた珍しい」


とりあえず夜更かしと行っておくと貴之は意外そうに目を見開きそう呟く。

そういう貴之も毎日夜更かしをしているそうなのでかなり眠そうである。


「とりあえず1時間目はじまるから席につこう」


優輝が話に入ってきて2人にそう告げる。

その時、竜華と貴之の欠伸が見事にシンクロした。





「じゃあね!また明日!」


「あぁ!」


「じゃあな!!」


あっという間に時間は流れて放課後に。

貴之と優輝は卓球部の体験入部に行ってしまい、教室には竜華だけだった。

今日は教室の鍵締めの順番が回ってきており、最後まで残っていた。

窓の確認をして教室を閉め、職員室に鍵を返す。それが仕事だ。


「失礼しまーす」


職員室に入ると、いつもより先生の数が少なかった。

おおかた体験入部の手伝いなどに回っているためだろう。

大変そうだな~と思いながら棚の横に鍵をひっかける。

そして鍵を返してそのまま出て行こうとすると誰かに呼び止められた。


「あ、大浦さん。ちょっと良いかな?」


「はい、あ、三神先生」


竜華を引き留めたのは担任である三神裕子だった。

その美しい美貌は先生も生徒も虜にするであろう正に学校のマドンナと影で言われているらしい。

三神先生は竜華に聞きたいことがあったようだ。


「あなたは何処の部にも入らないの?」


「あ~はい、全然考えてないです」


「私、あなたのお母さんからクラリネットが出来るって聞いたんだけどね」


そこで竜華は先生の言いたいことがなんとなく分かった。

つまり勧誘をしているのだろう。三神先生は吹奏楽部の顧問だった。


「でも、私ただ趣味でやってるだけだし・・・」


音楽好きの兄の竜慈の影響からか彼が中学に上がって吹奏楽に入った際に竜華は父が持っていたクラリネットに少し興味を持った。

そういう竜華の父「竜牙りゅうが」も音楽が好きだったらしく、トランペットとクラリネットを吹いていたらしい。

しかし、まだ当時小学校低学年だった竜華にはクラリネットのしくみは分からなかったので、竜慈に組み立てて貰い、それを眺めたりして暇を潰していた。

そして中学年に上がった頃、父の部屋の書斎で父が作ったクラリネットの吹き方というたくさんの資料を偶然見つけたのだ。

その時、音楽記号が分からなかった竜華は竜慈から記号を教えて貰い、その他は独自で資料を見ながらクラリネットを暇な時に吹き続けてきたのだ。

なのでもう今年で吹き続けて2年か3年目になる。

気づけばもうほとんどの曲は吹けるようになっていて、最近では父が作った曲も吹くようになってきた。

そんな彼女を是非、吹奏楽部に迎えたいのだと三神先生は言う。


「あなたがいてくれれば、新入生達にも自信がついて良いお手本になれると思うんだけどね~」


別に吹奏楽に入っても良かったのだが、ある1つの事情がそうしてもそれを拒んだ。

竜華は『異界の守護者』として違法者を捕らえる仕事をしているので部活に使っている時間の余裕が何処にもないのだ。

それに元々人見知りな性格なので人がたくさんいるところが昔から苦手なのも原因の1つだ。


「あ~でも勉強とかに専念したいので、やっぱりいいです」


とりあえずやんわりと断っておくことにした。

すると先生は一瞬残念そうな顔をしたが、また微笑んで竜華に告げた。


「入る気になったらいつでも言いに来てね。歓迎するわ」


その微笑みはとても綺麗でつい見とれてしまったのは内緒。




「お待たせ~」


「いえいえ、学校お疲れ様です」


学校の近くのスーパーの前で竜華はジェイクと待ち合わせをしていた。

普通のシャツに上着を羽織っている姿はそこの高校生とあまり変わらない印象をしている。

年齢こそ何歳かは不明だが、まだ相当若い方だろう。見た目だけ。


「では、さっそく行きましょうか。昨日の族種がお待ちかねです」


「うん。そうだね」


刹那-強い風が吹き荒れ、2人の姿が一瞬にして消え失せた。





第12話「クラリネット」でした。


いやーなんか戦闘シーンが出ましたね。間接的にですけど。

今回は日常に目を向けて書きました。

本当は竜華ちゃんがお友達とショッピングに行って事件に巻き込まれるお話にする予定だったんだけどね。

なんか面倒くさくなっちゃって(笑)

だから新しい設定を追加。そしてパパの名前は竜牙に。

アレだよ、仮○ライダーが由来です。たまたま部屋でキーホルダーを見つけたのよ。

ていうか私もクラリネットやってたんですが、独学で出来るモンなのか少しアレです。

私なんかまともに曲吹けるのに2年近く掛かったよ・・・

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