表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第五話 ポチ見参


「さーて、えっと君、名前なんだっけ?」


車の中で待っていた男達の内の、一人が聞いた。

彩妃はご丁寧に自己紹介をする。


「あ、申し送れました。わたくし、弥勒地彩妃と申します」

「彩妃ちゃんかー。かーわいいねー。お父さんはお金持ちなの?」

「明治時代から続く洋服店の社長をしております」

「おっほー! じゃあ、お金いっぱいくれそうだねー!!」


四人の男達はかなり興奮しだしていた。

そして「ちょっと待っててね」と言い何かを相談しだした。

だが、簡単に全員の意見が一致したらしく、すぐに元の位置に戻り、ニヤニヤしながら彩妃に話しかける。


「じゃあ、彩妃ちゃん。これからさ、ちょっと楽しい事しようよ」

「楽しい事ですか? ですが、まず紀香さんと康人さんに会わないと」

「ああ、大丈夫大丈夫。そのうち来るって」

「ですが、先程は公園で待っていると……」

「あああ!! うっせーなああ! 別に待ってねーよ! 康人さん? 誰だっつーの!!」


そう叫ぶと、彩妃の両側の男達が身体を押さえだした。

彩妃は何が何だか分からず、とりあえずニコニコしていた。

運転席から後ろを向いていた男の手には、いつのまにかビデオカメラがあった。

どうやら、『楽しい事』をした後には、その映像をつかって弥勒地家を強請る作戦らしい。


そして、一人の男の手が、まさに彩妃のスカートを捲ろうとした時、


「ひっ! な、なんだこいつ!!?」


男が指差した先には、車の中を覗き込むように窓にベッタリと顔をくっ付けている誰か。



それは健太だった。



「おいっ! この中で何やら、ものすごーく怪しい事が行われているぞ!!」

「えっ! 本当に!?」


後ろの方に待機していた康人も駆け寄ってきた。

そして二人して、ガラスに顔をくっ付け中を覗きこむ。

すると、運転席にいたビデオカメラの男が降りてきて、二人に凄む。


「おいっコラ! テメーら、なに人の車ん中ジロジロ見てんだよ!!?」


そう言われた健太は、パッといつもの平静さを取り戻した。


「大変失礼致しました。実は人を探しておりまして、弥勒地彩妃という方をご存じないでしょうか?」

「みろくじ? ……あっ」


男の表情が一瞬変化したのを、健太は見逃さなかった。


「ご存知……ですか?」

「あ? し、しらねーよ!! ちっ、もうどっか行けよ!!」

「嘘だああっ!!!」


なんと、そう叫んだのは康人だった。

康人は、男の前まで行きガッと胸倉を掴んだ。


「おれ、見えたぞ!! 中に男と彩妃が乗ってた!!!」

「あぁ!? うっせーぞガキ!! さっさと失せろ!!」

「彩妃を返せ!!!」

「うぜーーんだよっっ!!!」


男は、退こうとしない康人に苛立ち、思い切り殴りつけた。

康人は「うっ」と呻いて、車の後ろの方へ殴り飛ばされた。


「害蟲っ!!!?」


せめてそこは名前で呼んでくれと思いつつ、康人は地面にひっくり返る。


「ちっ、早く消えねーからだぞ、ったく」

「お待ち下さい。本当にお嬢様をご存知ないんですか?」

「あ、あぁ。知らねーよ」

「いっ、つー……嘘だ! おれは見た!! あれは絶対に彩妃だ!!」

「だから、知らねーっつってんだろおおが!!?」

「…………」


健太は何も言わず、康人の方へ歩み寄った。そして、彼の手を引っ張って起こした。


「分かったろ! そのガキ連れて早く帰ってくれ!!」

「分かりました。帰ります……」


何かを思いつめた様に、健太は自分の拳を見つめている。そして、ギュっと力強く握る。


「……彩妃を返してもらった後でなあああ!!!!」


そう叫ぶと、思い切り車のガラスを殴りつけた。

ガラスはいとも簡単に粉砕し、中では驚く男達とまだ事態を把握してない彩妃がいた。

そんな彼女に、健太は手を差し出し、優しく言葉を掛ける。


「お嬢様、お迎えにあがりました」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ