第四話 探せ!!
同時刻、紀香と康人は必死になって彩妃を探し回っていた。
「おい三条! いたかっ!!?」
「はぁ……はぁ……だ、だめ。ゲーセンの周りも探してみたけど、どこにもいない」
「どうすんだよ!! あいつ、ただでさえ世間知らずなんだぜ!!?」
「そんな事……あたしだって、分かってるわよ!!」
「おれ、もうやだぜっ! あの変な執事に殺されかけるの!!」
「誰に殺されるんです?」
そう言った康人の背後に、健太は気配もなく立っていた。言葉は丁寧だが、その顔には物凄い気迫が籠められている。
その後ろには、セバスチャンがニコニコしながら手をヒラヒラさせていた。
「ポチ!! セバッさん!!」
「あわわわわわわわわわわ」
「なぁ害蟲。何故、私が貴様を殺すのだ? ん?」
健太が、前に屈んで思い切り康人に顔を近づける。
「まぁまぁ、ポチ君。そんな凄まないの。紀香お嬢様、いったいどうしたんです?」
「大変なの!!!! 彩妃が、彩妃がいなくなっちゃったの!!」
「お嬢様がっ!?! 害蟲ぅうう!! 貴様ああああ!!!」
「ひいいい!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」
今にも襲い掛かろうとする健太をセバスチャンが押させ、彩妃の捜索に二人も加わる事になった。
四人はゲームセンターを中心に、それぞれ四方に分かれて手分けして探す事にした。
彩妃は世間知らずだか、だからこそそう遠くへは行かないだろうと考えたのだ。
だが逆に、まったく行きそうな場所も思い当たらなかった。
そんな四人の気も知らずに、彩妃は男と並んで歩いていた。
二人はゲームセンターからは、すでにかなり離れてた場所にいる。
「あの、二人はいったいどこにいるんでしょうか?」
「あ? あ! ああ、二人ね。あのーなんて言ったかな、男の子の方」
「康人さんですか?」
「そーうそう! 康人ね、康人。俺のツレがさ、康人と知り合いらしくてさ」
「そうなんですか?」
「うん。そんで、そいつら今、公園にいるらしいからさ。俺が車で送っててあげるよ」
「まぁ! 何から何まで本当にありがとうございます。あの、ぜひ何かお礼を」
「お礼なんて、そんなのいいのいいの! 後で何かしてもらうよ! ……たっぷりとね」
「はい!」
彩妃は完全に男の事を、通りすがりの親切な人としか見ていないようだ。
男は「こっちこっち」と言って、裏路地へ入っていく。
その前方には、黒いバンが止まっている。見たところ、どうやらガラスは全部マジックミラーで、中はまったく見えない仕組みになっている。
男は、「悪いけどツレも乗ってるんだ」と言ってドアを開けた。
中には残りの三人が乗っていた。
「いらっしゃーい。さ、乗って乗って!」
彩妃は、言われるままに車に乗り込んだ。