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第三話 ゲームセンターで迷子


その頃、執事達を上手く撒いたと思っている三人は、街をブラブラしていた。

どうやら、もっぱら健太の話題で盛り上がっているようだ。


「しっかし、弥勒地んとこの執事はおっそろしかったなぁ! チビるかと思ったぜ」

「本当はチビったんじゃないのぉー?」

「チビんねぇえよ! ガ、ガキじゃあるまいし……」

「ポチは、そんなに怖くないですよ? ただ真面目なだけです」

「いやいや!! 怖すぎるわよ!!」「いやいや!! 怖すぎるだろ!!」

「そうですかぁ??」

「だいたい、何でポチなのよ?」

「え、可愛くないですか? だってポチですよっ!?」

「「い、いや、まぁ、そうだけど……う、うーーん」」


二人は彩妃の天然爆発に着いていけないと思い、それ以上はあきらめた。

それから一行は買い食いやウィンドウショッピングをして楽しんだ。

そして、大型のゲームセンターに入ったとき、康人が「トイレ!」叫んで行ってしまった。

丁度二人きりになったと思い、紀香はふと疑問に思った事を聞いてみた。


「そういえばさ、あんたポチには敬語使わないわよね? 第一、まずポチだしね」

「あっ、言われてみればそうですね。お家でも使用人さん達にも敬語ですのに。なぜでしょう?」

「それってさ、もしかしてあんた、惚れてんじゃないの??」

「……?」


紀香の言葉の意味がよく理解できなかったのか、彩妃は首を傾げている。


「だからぁ! ポチの事が、ス、キって事!!」


そう言われて、やっと把握できた彩妃が、今度は物凄い勢いで取り乱しながら、顔を真赤に染めた。


「ままっまままっまさかぁ! そそそんな事、そんな事、ありえま、せ……ん?」

「自分でも、どうなってんのか分かってないのかよっ!」

「だってだって……ポチは、ポチですよ? そんな、だって、そんな……」

「あー分かった分かった。ごめんごめん! あたしが悪かったわよ。忘れて!」

「そんな事……」

「あっ! ほら!! あれ面白そうじゃん! やろうよ!!」


彩妃が、自分の中で思考迷路に迷い込んでしまったのを見て、紀香は話題を変えるように、ゾンビを銃型のコントローラーで撃って倒すゲームをやりだした。

するとそこに、康人がトイレから帰ってきた。

康人は辺りを見回し、「あれ? 弥勒地は?」と聞いた。

紀香はまだゲームに集中していたが、康人の質問が頭の中で繰り返されてやっと振り返る。


「…………え?」



「困りました」


彩妃はゲームセンターの中をウロウロしている。

紀香に言われた一言が気になって考えているうちに、逸れてしまったのだ。


「うーん、完全に迷ってしまいました。どうしましょう」


彩妃は今時の女子高生にしては珍しく、携帯電話を持っていない。

何故なら、何時如何なる時でも健太が着いていたからだ。

そんな明らかに迷子の彩妃を、四人組の男達の中の一人が見つめていた。


「おいっ、ちょっと見てみろって」

「あ? なんだよ! 今これに集中してんの!」

「おい。あれって皇麗学院の制服じゃね?」

「え、マジで!?」


彩妃達の通う高校はここらではかなり有名で、制服も変わった物なので、一目でどこの生徒かが分かってしまうのだ。


「マジだ! うっほ! ムチムチだあ!!」

「どーする?」

「イクっきゃないっしょ!」

「でも確か、あいつらって常にボディーガードみたいのが一緒にいるだろ」

「今は一人だぜ? つか、あの子迷ってんじゃね?」

「よし……俺にまかせろ」


そう言った男が彩妃の方へ歩いていった。

そして、彩妃の前まで行くと、なんとも人懐こそうな顔で話しかけた。


「やっほ! なんか迷ってるみたいだけど大丈夫? どったの?」

「あの、友達と逸れてしまいまして」

「友達ってもしかして皇麗学院の?」

「はい。男の子と女の子と三人でいたんですけど……」


さすがは世間知らずなだけあって、彩妃は何の疑いも無く自分の状況を説明してしまった。


「あぁー……そーいやー、俺見たよ!」

「え! 本当ですか!?」

「うん。その制服、結構目立つしね。彼等も誰か探してるみたいだったから気になってたんだよ」

「どこにいるか分かりますか??」

「おいで。連れてってあげるよ」

「ありがとうございます!!」


彩妃は満面の笑みで頭を下げ感謝した。

男は彩妃の肩に手をかけ、先導するようにゲームセンターの外へ出る。

その背中では、後ろ手に親指を立て仲間に合図を送っていた。


残りの三人はそれを見て、反対側の出口から出ていったのだった。



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