これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜
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宜しくお願い致しますm(_ _)m
「来たか」
「リシャール帝国の偉大なる太陽にご挨拶申し上げます」
人払いされた王城の謁見室。
目隠しをされた高貴な令嬢と、その令嬢を支えるように寄り添う騎士がリシャール帝国のジルベルト陛下に呼び出されていた。
「帝国の太陽にご挨拶申し上げます」
最上級の敬意を込めて挨拶したサラと、型式的な挨拶を述べた騎士アベル。
サラは、陛下に最期の願いを申し出ようと心に決めていた。緊張からゴクリと唾を飲み込み、陛下の言葉を待つ。
本日呼び出されたのは、サラの処遇が決まったということ。
その内容はサラの予想通りならば、死刑宣告だろう。
そのことを予想していたかのように、サラは、まるで葬儀にでも行くような装いだった。
漆黒のドレスに身を包み、特殊な眼鏡をかけた上から目隠しをされ、さらにベールを被っている。
腰まであるゆるやかなウェーブがかった艶やかな黒い髪、透き通るような肌、華奢な体つきは庇護欲を誘う。
隠されたその瞳は、神秘的な虹色だった。
虹色の瞳は、呪い子の証。その瞳を見たものは死んでしまう。サラを取り上げた者は亡くなり、すぐに目を覆った。けれど、目隠しを嫌がり取り外してしまうサラ。世話をしていた母も、ほどなくして命を落とした。早急に特殊な眼鏡を装着され、王家管轄の施設に引き取られた。
サラの容姿に惹かれる者は多い。だがその力により、忌み嫌われていた。
眼鏡をかけていても、魔力は強大なので、その目を見たものは意識を失う。
その為、本日の謁見は、眼鏡の上に特殊な布で目隠しをしているのだ。
もうすぐ20歳を迎えるサラにとって、心構えしていたこととはいえ、受け入れ難いことだ。
「そんなに畏まらなくてもよい。だがそのまま顔は上げないでほしい、大丈夫だとは思うが、皆が不安あるのでな。サラ、若いそなたに、このような残酷なことを伝えなければならないことを許してくれ。
そなたの処遇が決まった……明後日だ……他国から魔術師長のカイルが帰ってくる。その日に決行となる。最期に、何か望みがあれば、できるだけ尽力しよう。何か望みはあるか?」
「はい……畏れながら申し上げます。私
の最期の願いは、アベル様と一夜を過ごすことです」
「な!」
サラを支えるアベルの手が動揺から緩む。
サラはアベルの腕に自分の腕を絡めるようにぎゅうとしがみつく。
「……分かった。アベルは独身だったな。婚約者がいるのなら、私から説明しよう、これは王命だ。部屋を用意する。カイルが来るまで過ごすがいい。サラ……すまない」
「とんでもございません、願いを聞き届けてくださり感謝致します」
この国では魔法を扱える者が多い。
火魔法に特化した者、水魔法、氷魔法などそれぞれに特化した能力を持つ。
成長と共に魔力量も増えていくので、制御出来ずに暴走することが多々ある。暴走すると周囲を巻き込むことになり、怪我人が絶えない。
呪い子のサラの魔力は強大で、成長と共にますます不安定になっていった。
15歳頃までに魔力の安定しなかった者は、20歳を過ぎて生きていた者はいない。
いつ魔力の暴走を起こすのかも分からないサラの処遇をどうすべきか、陛下は20歳を迎えるギリギリまで待ってくれていたのだ。
私なんかに謝ってくださるなんて、陛下は本当にお優しい。
きっと、早く死刑にするようにという声があっただろうに。
特別に用意された部屋で、サラはアベルと二人きりになり複雑な心境だった。
アベルは勇敢な騎士だった。先の戦争で、片目を負傷をし、目が不自由になっていた。一線を退き、王家管轄の施設の警備の仕事をしていた。
施設にはサラのように危険な能力を持った者たちが暮らしている。
眼鏡をしているとはいえ、不安がる者も多く、片目を負傷したアベル以外近づこうとしなかった。
希望の持てない人生を送っていたサラにとって、アベルに恋に落ちるのは仕方のないことだった。
蔑んでくる他の方達と違って
アベルは優しかった。
特別に私に優しかったわけではないわね。ただ、普通に接してくれていただけ。
そのことが、どれだけ嬉しかったか想像もつかないでしょうけれど。
まるで、自分もただの一人の女性になったみたいで、心が救われたの。
ずっとずっと一人耐えてきた私にとって、初めて感じた温もりだった。
そう、単純にあなたに恋してしまうほどに。
誰に会う訳でもないから、身だしなみなんてどうでもよくなっていたのに。
ここから出ることもできないのに、国からの贈り物として沢山のドレスや宝石がとどくから開封せずに山積みにして放置していた。
でも、あなたに綺麗だと思われたくて、書物も送ってもらって、流行のドレスや化粧の仕方も一人で学んだ。
あなたの特別な人になりたい一心で。
あなたは色々と話してくれたわね。
外の世界の話は何もかもが新鮮だった。
あなたは優しいから……。
その優しさにつけ込んでごめんなさい。
でも、どうしても、最期に、貴方の温もりを身体に刻みつけてほしいの。
王命が言い渡された時、あなたは愕然としたでしょうね……。
本当にごめんなさい。
でも、私は、今、天にも昇る気持ちだわ。
大好きなあなたに抱かれるのだから。
最高の思い出と共に、この世を去ることができるから。
王命を断ることなんてできないものね……。
あなたが今、どんな顔をしているのか見るのが怖い。
でも、目を負傷しているとはいえもしものことがあってはいけないから、目隠しは外さない。
「アベル様……これは王命です……どうか、
触れるのも嫌かもしれませんが……最期の願いなんです、抱いてください……」
サラは緊張から震えながら言葉を口にする。
抱いてくれなかったらどうしよう……
あまりにも自分勝手な願いだから、罪悪感に押し潰されそうになる。
瞳からは涙が溢れ、目隠しにうっすらと沁みを残している。
「アベル様……?」
アベルから返答がないことでサラはますます不安になっていた。何も見えないのでどこを向いていいのかも分からない。
「サラ……」
突然ガバリと力強く抱きしめられて、急かされるようにサラの唇は奪われる。
キスされているのだと理解した時には柔らかなベッドの上に寝かされていた。
「アベル様、抱いてくださるのですか……?」
「サラ、これは王命です、言葉は不要です」
いつもの優しいアベルが、荒々しい息遣いで迫ってくることにサラは混乱していた。
「アベル様、怒っているのですか?」
「サラ、半分正解ですが、怒っていません……目隠しはこのままで……見えないと不安ですよね。大丈夫です」
「ひゃぁ!」
見えないサラを気遣うように、言葉で説明しつつ、アベルはサラの手を取る。
見る見る顔中が薔薇色に染まって押し黙るサラ。
アベルはそんなサラを空色の瞳で切なげに見下ろす。
「サラ……」
金色の髪をかきあげて、アベルは
ずっと抑えていた感情の制御が出来ずにいた。
アベルもまた複雑な心境だった。
初めてあなたを見た時、天使かと思った。
透き通るような肌、綺麗な顔立ち。
目もとが隠されていても、その美しさは滲みでていた。
騎士として活躍していた時とは違い、怪我をしてからは周囲の私へ対する扱いも変わっていた。
自分で言うのもなんだが、以前は街を歩けば令嬢達に取り囲まれて、身動きできなかったくらいだ。告白されたことも一度や二度じゃない。
今とは雲泥の差だ。女性への免疫がなかったわけではない。だから美しいあなたに対しても緊張することもなく、接することができていたと思う。
あなたといると、不思議と素直になれた。
交際したことがあるのか聞いてきたことがあったよね。
あなたに気にかけてもらえたのが嬉しくて、
あわよくば私がいい男だと勘違いしてくれたらと、
少しでもあなたの気になる存在になれたらと、
敢えて否定しなかった。
本当は知識だけで経験なんてない。
それなのに……
こんな事があっていいのか。
あなたに触れ、私を受け入れてもらう。
そんな夢のようなことが。
私はこんな邪な考えを持った人間だったのか。所詮は男か。
自分が恥ずかしい。
辛い運命を受け入れて、死を覚悟する心まで綺麗なあなたとは大違いだ。
軽蔑されないだろうか。
サラ……愛しています…あなた一人で死なせません。私も……
まるで、何かのスイッチが入ったかのように、アベルはサラを求める。
「嬉しいです、サラの初めてが私で……サラの……」
最初で最後の人になりたいという言葉を、アベルはぐっと飲み込む。
くそっ!
アベルは考えることを放棄し、サラに愛情を注いだ。
◇ ◆ ◇
ずーんと重い感覚がしてサラは目を覚ました。
「あれ?」
真っ白な空間に、サラの寝ているベッドのみあるという状況に動揺する。
目隠しが!
慌てて、目を触ると眼鏡をしていうことにほっと安堵する。
「アベルさま……?」
横に寝ているはずのアベルの姿はなかった。
夢でも見たのだろうかと、ふと胸元へ視線を向けると夜着の隙間から沢山の紅いあとが見える。
アベルさま
夢でなくて良かったと、自身を抱きしめるようにサラは両腕をさすった。
昨夜のアベルの熱い身体の感覚が甦る。
「やぁ、目が覚めた?」
場違いなほど朗らかな声で呼びかける人物がサラを見つめていた。
「‼︎」
サラは咄嗟に、シーツを掴み目を隠す。
「あぁ、大丈夫だよ、眼鏡はしていてね。目隠しは必要ない、僕もそれなりに魔力もってるから、えっと……何から説明しようかな…僕はカイル、聞いたことある?」
「カイル魔術師団長様?え⁉︎」
サラは慌ててベッドから飛び降りると、カーテシーをする。
「こ、こんな格好で申し訳ありません」
サラはシーツを夜着の上から羽織ると、カイルと目線を合わせないように足もとを見た。
「はは、気にしないで楽にして。陛下から呼び出しを受けたのはいいけど、僕も時間がなくてね。」
「カイル様が、私を……?」
サラは遂にその時がきたのだと悟った。
万が一のことが起こらないように、ここへ連れてこられたのだろう。
この国で最高の魔力量をもつカイル魔術師団長は、その力を求められて他国へ呼ばれることも多いと聞いている。
「うーん、僕、あんまりこういう説明苦手なんだけどね、サラ嬢、君の魔力は貴重だ。それで、こういう時に酷なことを言うけど、君の亡きあと、君の魔力を提供してもらえないかな?」
「魔力を……?」
サラは、とある文献の内容を思い出した。
亡くなった直後は、魔力がまだその身体に宿っている。その魔力を、病気で魔力不足症になったものに提供することで、病気を治すことができる。
そんなの黙ってすればいいのに、わざわざ同意を得ようとするなんて、カイル魔術師団長様は律儀な人だなとサラは思った。
「どうぞ、私の魔力でお役に立てるならお好きになさってください。お尋ねくださるなんて、カイル様は真面目な方ですね」
にこにことしていたカイルの顔つきが急に険しくなり、サラを食い入るように見つめている。
カイルの足元をみていたサラはその表情の変化に気づかない。
「なるべく新鮮なうちがよくて…生きているうちでも提供できる?」
サラは言われた意味が分からずに、答えることができなかった。
生きているうちにということは、痛みを伴うのかもしれない。
「はは!ごめんごめん、こわがらせちゃったね、魔力は血液に多く含まれているんだけど……ねぇ、サラ嬢、その瞳……すごい魔力量だ。きっとそこから多くの魔力を抽出して、多くの病気の人を救えるはずだ。二度と見ることが出来なくなるけど、その瞳を提供してくれる?」
「カイル様、私は……この目のせいで、ずっと苦しんできました。母も、乳母も私が命を奪ったのです……それなのにのうのうと生きていて……
でも、陛下やリシャール国の皆さんには感謝しています。こんな恐ろしい私なんかを、今まで殺さずに育ててくださったのですから。感謝しかありません。ですから、もしも、少しでも誰かの命を救えるのなら、カイル様のお好きになさってください。ただ……最後にアベル様を……いいえ、なんでもありません。できれば痛くないといいのですけれど」
ボロボロと堪えていた感情が溢れでるように、大粒の涙が頬をつたう。
泣き笑いをしながらサラはカイルの顔をみる。
カイルの紫色の瞳は真っ直ぐにサラの瞳を見つめていた。
その瞳を見ていると、サラの視界は端から白いもやが現れていくように霞んでいく。
何も見えなくなった途端、サラの意識はぷつりと途絶えた。
「最高の研究材料が手に入った。アベル、これで借りは返したからね」
カイルの意味深な呟きと共に、白い空間からサラの身体は転移した。
◇ ◆ ◇
「サラ、起きてください、サラ」
「んん……アベルさま?」
目を覚ましたサラは何も見えない状況に混乱していた。
目を触ると眼鏡をしていない。そして……
「きゃーーーーーーーーーーー」
「大丈夫です、サラ、落ち着いてください、私がいますから! 一生、私があなたの目となります!」
「アベル様……目が……」
子供のように泣きじゃくるサラを優しく宥めるようにアベルは抱きしめる。
「サラ、昨日伝えなくてすみません。これは嘘でもなく、王命なども関係ありません
サラ、あなたを愛しています!サラ、これからは自由です。ですが、どうかこれからもずっと、守らせてください!
今まで行けなかった分、色々な所に行きましょう。それなりに稼いでいるので、苦労はさせません。サラの気に入った場所に家を建てましょう。
何も怖がることはありません、あなたの目となり、手となり、足となり、何不自由ない生活を約束しますから!」
「アベル様……?」
「今は、まだ、混乱していますよね……大丈夫ですから」
自分の状況が分からず混乱するサラを、アベルは付きっきりで支えた。
ずっと恋していたアベルと一緒に過ごしているので、サラも気持ちを抑えることができなかった。
昼夜問わず二人は濃密な時間を過ごす。
しばらくして落ち着いたサラは、カイル様が助けてくれたのだと理解した。
呪いの瞳は強大だったが、カイルが瞳を除去することに成功した為、サラは自由の身になった。
先の戦争でアベルは、カイルを庇い片目を負傷していた。
それ以来カイルはいつかアベルに恩を返したいと思っていた。
そんな時に陛下に呼び出され、サラと対面し、サラの人となりを見て、原因の瞳の除去を試みたのだ。もちろんサラに言ったことは嘘ではなく、サラの瞳から魔力を抽出して多くの命を救っている。
けれど、もう1つの瞳は魔力を抽出した後に、アベルへと移植されている。
「もしもまた呪いの力が宿った時に、苦しむのは私でありたい」
誠心誠意を込めて断言するアベルだったが、カイルはアベルの心の内をみすかしている。
「かっこつけてるけど、本当はサラ嬢と一つになりたいとか思ってるんでしょ?」
「うるさい」
アベルの脳内はサラ畑なので、ことの真偽は不明だが、アベル自身の瞳をサラに移植しており、二人とも片目のみ見える状態になっている。
自分のものを受け入れてくれたと、にやけるアベルは少し精神的に病んでいるのかもしれない。
けれど、幸せそうに寄り添う天使のようなサラの姿を見ると、そんなことどうでもよくなってくる。
リシャール国民皆で二人の幸せをずっと見守っている。
◇ ◆ ◇(2025.6.29 追加エピソード
どうして片方の目しかないの? です↓)
「ぅっ……うっ……おかあさまぁ!うわぁーん……」
「あら、あら、ルークどうしたの?こっちへいらっしゃい」
太陽の光のように輝く金色の髪を靡かせて、泣きじゃくる男の子が駆けてくる。
片目を隠すようにヴェール付きの帽子を被った女性──サラは、庭園のガゼボから男の子に呼びかける。
ルークは、椅子に腰掛けているサラの膝に飛びつくと、その日の出来事を語り始めようとした。
「ほら、泣かないで、よしよし、お母さまが抱っこしてあげますからね、あ、あら?ルーク?」
サラの向かいに座っていたアベルが、サラから引き離すようにルークを抱き上げる。
「痛いっ、お、お父さま、痛いです……お母さまがいいです!うぁーん……ひいっ!」
抱き上げたルークに向かいアベルが何か言葉を発すると、先程まで泣きじゃくっていたルークの表情が一瞬にして凍りつく。
「サラ、無理をしてはいけません。今は大事な時なのですから。そうだろう?ルーク」
「は、は、はい!お父さま、申し訳ありません……お母さまには近づかないです、はい……」
「ほら、ルークもこう言っています」
柔和な笑みを浮かべたアベルとは反対に、ルークの顔は引き攣っている。
「まだ、幼いんですから、甘えたいわよね?ルーク、いらっしゃい」
「サラ、もうすぐルークはお兄ちゃんになるのですから、大人にならないといけません。どうして泣いているんだ?」
「ひぃ!え、え、えっと、その、ウォーレンが、ウォーレンが、お父さまとお母さまの目が……片目だって……バカにしてくるんです……」
「ルーク……ごめんなさい……つらかったでしょう……」
「サラが謝る必要などありません。ルーク、よく聞きなさい。お父さまとお母さまは深く誰よりも愛しあっているんだ。運命の相手なのだよ。分かるかい?
自分の半身と呼べる存在なんだ。サラがいない世界でお父さまは生きていけない!私達は二人で一つなのだよ。目も身も心も二人で一つなのだよ。とっても愛しているから、お父さまとお母ささまは、愛の証として、瞳を交換しているんだよ──」
「アベル!も、もうそのくらいで……子供に何を言っているのですか……」
誇らしげに胸を張ってまだ語り足りないと不満を漏らすルークと、頬を染めて恥ずかしそうにしているサラ。
そんな二人を見て、ルークは常々思っていることが口から出てしまう。
「やばい……」
けれど、どこか普通とは言えない両親のことが、ルークは大好きだった。
ただ一つ気をつけなければいけないことがある。
お母さまに近づいてはいけないことだ。
お父さまは誰であろうと、お母さまに触れることを許さない。
「サラ、ここで休んでいてくださいね。ルークと男同士の話がありますから」
有無を言わせぬ物言いでアベルはルークを抱き抱えて行く。
「お、お父さま……?」
サラと距離を取った所でルークを下ろすと、氷のように冷たい声で問い詰め始めた。
「ルーク!」
「は、は、はい!お父さま……」
「それで?ウォーレンとは、どこのクズ野郎の息子だ?
まさか、泣いて帰ってきただけじゃあるまいな?お前の役目は何だ?」
「は、はい!それは、もちろんお母さまを守ることです!」
「違う!サラに心配をかけるんじゃない。サラのことを少しでも悪く言うやつは消せ!」
「ひぃ!む、無理です……
ウォーレンは…怖くて……」
「ならば、強くなれ!」
それ以降、ルークの剣術指導が始まった。もちろんアベルの個人指導だ。
護衛であってもサラの周囲に自分以外がいることが許せないアベル。
その為、サラの身辺を守るのはアベル、外のことはルークに任せるために。
ウォーレンとその親は王都から追放された。
サラの瞳によって、多くの命が救われたので、ジルベルト陛下より特別な爵位が与えられている。
それにより、サラを傷つける者は、誰であっても処罰できるという権限をアベルは手に入れている。
ジルベルト陛下は、アベルの良心を信じて与えたが、念のため監視の者を送っている。
監視の者は、いつも簀巻きにされて王城の入口に放り込まれてしまう。
ジルベルト陛下は、サラが末長く幸せでありますようにと祈ることしかできない。