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感染者

「ーチッ!いつの間に…!」

こうなってはもう穏便に済ませられる訳はない

ヘルロフはサーベルを引き抜き

木の影に半身を隠していた張り付いた笑顔の民衆達に向けた

「旦那様…!」

クラウスはエドアルドに呼ばれ振り向くと

村の広場に集まっていた者も全員が

満面の笑みで此方を見ていた

「ああ…これはマズイぞ」

全員がその場で武器を抜き構える


そのまま暫く睨み合っていたが

村の広場に居た1人が走り出した瞬間

全員が5人に向かって全力で走って来た

「ー!!エド!絶対に“身代わり”はするな!」

「はっ!?しかし旦那様!」

クラウスは剣に火属性を付与した


押し寄せる大量の人間


元使徒であるパラフェトイ達に寄生されているであろうそれは

見た目はただの人間であるうえ、これを完全な敵として見ていいものかと

同じ人間であるクラウス達の攻撃には迷いがみられた

一方でディオは圧倒的なパワーで彼らの首を飛ばし、頭を叩き割るが

とにかく数が多すぎる

「ーっ!キリがない!」

押し寄せる大群に返り血を浴び、血脂で武器を持つ手が滑る

どうにか殺さずに無力化出来ないかとエドアルドやクラウスも剣で応戦するが、段々と押し込まれていく

森の方の人々を相手していたヘルロフ、エルンストの2人も苦戦を強いられ

人々の群れに5人は完全に取り囲まれてしまった


民衆達のレベルの方が圧倒的に低いのだが

彼らには恐れがなく、痛みで怯むこともしない

腕が取れても、血だらけになっても

死ぬまで向かってくる彼らにディオを除いた者達は戸惑いを隠せない

「ーうわっ!クソッ離せっ!!」

ヘルロフの足に這いずる男が絡みつき

それに気を取られた彼は、傾れるように押し寄せた民衆に身動きを封じられた

「ヘル坊!」

パーティーの全員にバフと治療の魔法を掛け続けていたエルンストは

拘束された彼を助ける為に、詠唱を止め

大杖を振りかざし民衆に向かって行った

鋭利な杖の先で貫き、柄で強烈な殴打を繰り出すその戦い方は戦士さながらではあったが

直ぐに大量の人々の腕に絡め取られ地面に捩じ伏せられてしまった


「エドアルドさん…っ!

…クラウスさん!クラウスさん!!」

ディオの視界の端で2人が人の波に飲まれていく

一瞬見えた苦痛に歪むクラウスの顔

ディオの腹の底から熱いものが込み上げ

取り付こうとしている人々に対し

滅茶苦茶に手斧を叩き付け咆哮を上げ

クラウスが消えた人の山に分け入った

掴み掛かった相手の骨が砕けようと構わず引き剥がし

抵抗する者の喉を噛みちぎった

「…ぐっ…クラウス…さん…!」

「ディ…オ…」

地面に組み敷かれた彼を見つけて手を伸ばしたが、彼の手を握る前に

ディオの身体はとんでもない力で後方に引っ張られ吹き飛ばされた


木の幹に強かに後頭部と背中を打ち付けた彼は

その衝撃に視界が霞む

咳き込みながら、それでも立ち上がり

自分をクラウスから引き離した者を睨む

「領主の身体が2つも…手に入れば再び栄光を取り戻す足掛かりになる…

お前も大人しく我々の仲間となるのだ」

エルンストがスタニスラフだと言った教会の装衣を身に纏った男が

満面の笑みを貼り付けた数人の取り巻きに囲まれてディオを見ていた

「…殺す」

番に手を出されたディオは、逆鱗に触れられた竜の如く怒っていた

そんな彼の肩に、ポタッと何かが落ちて来た

それは白い蛆虫の様に見えたが…

よく見ればスタニスラフの足元から

その小さな蛆のようなものが何百匹と這って向かって来ていた

ディオは咄嗟に肩のソレを振り払い

目の前に迫っていた蛆のような物を踏み潰した

その瞬間、スタニスラフの横に居た者達が飛び掛かってくる


彼は手斧で向かって来た人々をめった打にしたが、1人の頭部から斧を引き抜き

額がバカッと割れた瞬間、そこから大量の血液と共に蛆のようなソレが飛び出してきて

ディオの顔面に降り注いだ

「ー!!」

血液で視界を奪われ

顔面に何かが這う気持ちの悪い感覚が走り

手でそれを払ったが遅かった

1匹の蛆のようなソレが、ディオの鼻腔にスルリと入り込んだのだ

「ーあ゛ぁ゛!!」

鼻の奥に激痛が走り、その場にうずくまる

身体の中を食い破られる激痛に悲鳴が上がるが

鼻腔からボタボタと大量の血液と共に彼の中に潜り込んだソレが排出され

苦しそうに地面でのたうち、やがて溶けるように消滅した


ディオの血液に触れた蛆のようなソレは

地面にいたモノも全て溶解していき

その様を見ていたスタニスラフがたじろいだ

「…貴様…人間じゃないな!?」

ここはサモーズであり、ワピチではない

スノームースではあるが、迫害を避ける目的で

ディオは獣人らしい特徴を隠すような服装をして来ていたのだ


彼が人間ではないと察したスタニスラフは明らかに動揺し

それが伝播したのか、周りの人々の統率が鈍り

特にディオを捕まえてようとした者達は、スタニスラフの方へ逃げ出した


何故だかは分からないが

敵が明らかに自分の血液を恐れていると分かったディオは

手首を斬りつけその血液を浴びせるように腕を振った

「ひぃいい!!」

スタニスラフが悲鳴をあげて逃げ出す

すると他の人々も彼と同じ方向に走って逃げ出した


ディオは彼らを追うべきかと考えたが

解放され、地面に倒れたままのクラウスを見てそちらに駆け寄った

「クラウスさん…!」

息はしているが意識のない彼を抱き抱え

彼の周りからも、地面を這って逃げていく蛆のようなものを複数匹見たディオは

考えるよりも先にクラウスの口の中に自らの腕から流れる血液を流し込んでいた

「飲んで…!お願いだから…」

口の端から赤い筋を使って血液が溢れる


ディオは傷口に口をつけ、自らの血を吸うとクラウスの口に口を付けた

無理やり血を流し込もうとしたのだ

ーゴホッ!!

抱えていたクラウスが盛大に咽せ

口の中の血液をディオの顔面に噴射した

「ゴホッゲホッ!!苦しっ…喉がっ…!!」

「ああっ!良かった…!良かった…」

顔面をまだらに赤く染めたディオはポロポロ涙を流しながら

ゲホゲホ咽せ、嘔吐するクラウスを抱きしめた 


その後、同じように朦朧としていた他の仲間を一先ずルクソンポールまで連れ帰り

ルッベルス邸で処置を行った

ヘルロフを含む3人は意識こそあったものの、朦朧としており会話もままならなかったが

スプーン一杯分のディオの血液を飲ませると

彼らは魔力下しを使った時のように嘔吐し、正気を取り戻した

吐瀉物の中にはうねうねと蠢く、あの蛆のような物が多数含まれていたが

それらは徐々に溶解して消えてしまった


「…ああっ!クソッ!!」

一頻り吐き終えたヘルロフは悔しそうに壁を殴った

「壁に八つ当たりしたって事態は好転しないぞ

王に報せるのもそうだが、手遅れになる前に

早急に対策を練らねばならない」

ヘルロフに帰る旨を伝え、クラウスが邸宅を後にしようとしたところ、玄関でエルンストが待っていた

「ホルツマン様、私は個人的に教会の者を追おうと思います」

「…危険だ、気持ちは分かるが止めなさい」

「しかし、バインが教会の…使徒の残党ならば

手をこまねいて見ている訳にもいきません」

彼の覚悟を決めたような表情に

今ここで説得したところで、意味がないと感じたクラウスは

溜め息の後、充分気をつけるように言い含め邸宅を後にした


クラウスは外に出ると、手帳を取り出し

直ぐに王に手紙をしたため、鳩として飛ばす

「エド、直ぐにネフロイトに戻ろう」

「はい旦那様」

「ディオ、君に協力してもらわないといけないかも知れない…」

「はい」

3人の乗った飛空艇は空を切るようにワピチを目指した

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