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陰謀

3日間のエルカトルでの滞在を終え

クラウス達はワピチに向けて出発する為に

新しく馬を借り、荷物を積み込んでいた

「荷物が増えましたね」

行きに比べ、倍くらいに膨れ上がった荷物

ここに今から男2人を乗せて歩く馬のことが心配になったディオは不安そうに呟いた

「ああ?うん、お土産が思ったより嵩張っちゃったねぇ…」

増えた分の荷物は庁舎の役人達へのお土産である

年に一度のレプレイスになると、みんなが欲しいものリストを渡してくるくらいには、アットホームな職場なのである

「おっと、忘れるところだった」

クラウスに手招きされ、何かと近付くと

彼はディオの首の後ろに手を回し首飾りを付けた

「えっ?」

「君さ、戦う時に突っ込んで行くじゃない

再生能力が高いから気にしてないのかも知れないけど

いつも傷だらけなのが気になってたんだ

だからボクからのプレゼント」

銀の細工が施された緑色の魔瘴石のネックレス

効果は持ち主を攻撃から時々護るというもので、確率で攻撃を弾いてくれるらしい

「いや、それならクラウスさんが着けるべきです!

俺はちょっとやそっとじゃ死なないし

怪我もすぐ治るから…!!」

「ンふふッそう言うと思ってね…ジャジャーン!」

クラウスは胸元からディオの首に付けたネックレスと同じ物を取り出して見せた

「受け取ってくれるでしょ?」

クラウスはニッと笑った


帰りは行きよりもスムーズに進んだ

宿屋の主人の対応は相変わらずではあったが、レベルが上がった訳でもないのに

ディオの動きが格段に良くなったのだ

ワピチ領に入って最後の日程も、時間にだいぶ余裕がある

そんな中、馬の手綱を握るクラウスは何を思ったのか急にネフロイトとは別の方向に馬を向けた

「えっ?あのっ…」

「いいからいいから」

何が良いのか分からないが、馬に乗せられている身であるディオにはどうしようもない

そのまま馬に揺られ、農地を横切り森林に入って行く

どんどん人里離れた方向へ進んでいくクラウスにディオはただハラハラと辺りを見渡す事しかできなかった

随分と森の深いところまで来て

クラウスは徐に馬から降りて適当な木に繋いだ

こっちだと彼が下生えを掻き分けると、洞窟の入り口がある

中は緩やかな下り坂になっており、数分歩くと開けた場所に出た

その空間の真ん中には地底湖があり

天井は崩落し日光が降り注いでいる

湖の水は淡い水色で透明度が高く、水底が見え、水の中を泳ぐ魚の鱗がキラキラと光を反射し、湖が輝いているようだった

「綺麗な…場所です」

「そうだろう?」

湖の淵には肉厚の半透明な花弁の花がまばらに咲いている

物珍しいその花に触れようと手を伸ばすディオだが、クラウスに止められた

「ユウヤミグミはとても希少価値が高い植物で絶滅が危惧されている

それでいて錬金素材において強い効果が期待できるから密猟者が絶えない」

「あっ俺、知らなくて…」

大丈夫だよとクラウスは笑う

「何となくやる気が出ないような疲れた時とか、1人になりたい時に

コッソリここに来る、ボクの秘密の場所なんだ」

「そ、そんな特別な場所、俺に教えていいんですか?」

「あはは!君だから教えたんだよ」

苔の生えた岩に腰を下ろしたクラウスは、頬杖をついてディオを見上げた

「今年のレプレイスは今までで一番楽しかったよ

ありがと、君に頼んで正解だった

いつもはエドアルドとロベルトが脇をガチガチに固めてきて「公務ですので」っつってさぁ

全然露店を見て回る時間もくれないし」

そう言われたディオは、帰ったら自分は怒られるのではと心配になる

「何より、色々な君が知れた

食事に誘うだけでは知ることが出来ない

…魅力的な君をね」

「…そっ…それは、クラウスさんこそ…」

領主とは、厳格で完璧な人間だとディオは思っていた

だが、今回の旅でクラウスは完璧ではなく彼もただの1人の人間で

想像よりもずっと親しみやすい相手だと分かった

「君さえ良ければ、来年も2人で行こう」

「光栄です…でも、みんなは良いって言いますか?」

今回はかなり急な事でのやむをえずの2人旅である

クラウスは天井に開いた穴を暫く見つめた後、「盛るか」と不穏な言葉を小さく呟いた

「戻ったよー」

庁舎の庭を清掃していた役人にクラウスが声を掛けると

瞬く間に人が集まり彼を囲った

「領主様!ご無事で何よりです!」

と心配していたという声もあれば

「西国の茶葉は手に入りましたか!?」

などと、お土産の催促まで聞こえる

「はいはい、順番にね…並んでほら」

ここで荷物になっているお土産の大半を配ってしまう

皆が掃けた後、エマが1人残っておりニッコリと微笑む

「おかえりぃ〜ホルホルぅ

良い顔してるわねぇ、楽しかったぁ?」

「うん、とても有意義だったよ

あの時、種族を理由に選考のし直しをしなくてよかった、ありがとね」

はいこれ、とクラウスはエマにお土産の小箱を渡す

「あらぁ、私のはいいって言ったわよぉ?

…まぁ、エルフの魔法のオルゴール高かったんじゃないのぉ?」

「大切な人には良い物を贈りたいでしょ?

大体、値段を気にするのは野暮じゃないの?」

「ふふふ、そうねぇ…あなたと思って大切にするわねぇ」


◆◆◆◆◆


クラウスと別れたディオは、自宅に向けて歩いていた

最初、レプレイスの従者をしてほしいと言われた時

ラビッシュは猛反対した

『レプレイスだぞ!?そんな時にお前について来いなんて頭おかしいだろ!?

絶対酷い間に合う!!断れよ!!』

勿論、レプレイスがどんなものかディオ自身も分かっていた

だから、それなりの覚悟をして望んでいたのだ

確かに嫌な目には沢山あったが、そんなのはいつもの事である

『君に頼んで正解だった』

優しく微笑む彼の笑顔を思い出し、貰ったネックレスの魔瘴石をギュッと握る

「…もう少し、一緒に…」

ブンブンと首を振った

「何バカなこと…きっと気をつかわせてた

それを居心地がいいなんて、俺はダメな奴だ」

そんな独り言をいいながら、自宅の大きな扉を開ける

「ディオ!」

ミーティアが叫ぶように名前を呼びながら

彼の元に走り寄ってくる

「ただいま、どう「大変なんだ!ラビッシュが!!ラビッシュが!!」


◆◆◆◆◆


「いい加減に認めろ、ゴミパンダ」

そう広くない鉄格子の中で手足に枷をはめられたラビッシュは

自警団の若い男から、もう長い時間尋問を受けていた

「俺はやってねぇ!!

何度もそう言ってるだろファーレス!」

「お前らはいつも“俺じゃない”って言うよなぁ!?

フルールの鳴き声は聞き飽きた!

白状しろこの盗人め!!」

若い男はイラついた様子で檻を激しく蹴り飛ばした

一瞬、怯むラビッシュだが

それでも直ぐに歯を剥き出し吠える

「何度言やぁ分かるんだ!?耳ついてるか!?

アレはちゃんと金を払って買ったもんだ!

盗みなんかしてねぇ!

言葉が分からねぇのか!?あぁん!?」

「まだ自分の立場が分かってない様だな」

反抗的な態度を取り続けるラビッシュに

苛つきを隠さない自警団員は、ボソッと短く詠唱した

途端に、ラビッシュの手足に付けられた枷から電撃が走りギャン!と悲鳴が上がる

「17日、トルビナの果樹園から

マダムルビーが盗まれた

貴様と同じ、アライグマベースのフルールが逃げていくのが目撃されている!

そして、貴様はマダムルビーを持って歩いていた

貴様以外の誰だと言うのだ!!」

「アライグマベースなんて、探しゃ何処にだっているだろ!?

俺じゃねぇ!俺は露店で買ったんだ!」

「嘘をつくな!貴様のような汚いフルールに果物を売った者は誰も居ないと市場で聞いているぞ!」

「それこそ嘘だろ!?俺はちゃんと…ギヤアアアア!!!」

容赦なく電撃を流され、ラビッシュはのたうち回った…


◆◆◆◆◆


「あのっ!すみません!領主様!」

執務室で留守にしていた間に溜まった書類に目を通していたクラウスの元に

少し前に別れたばかりのディオが、血相を変えてやってきた

彼のあまりの剣幕に驚きつつ、クラウスは眼鏡を外してどうしたのかと問う

「ラビッシュが!…俺が留守の間に連れて行かれて…!!」

「どうして?」

「じ、自警団に…盗んだって…

お願いです!助けて下さい!

ミーティアはラビッシュじゃないって!

ラビッシュは…俺の家族なんです…!」

クラウスは眉間を指で摘み、それは深く長い溜め息を吐いた

「彼が本当に盗みを働いているなら

君の頼みでも助けてはやれない」

「ラビッシュが盗む理由がないです!

お金だってちゃんと持ってます!

絶対に人違いなんです…!」

懇願するディオに押し負けたクラウスは、あまり気乗りはしないが立ち上がった

「分かったよ…話を聞きに行こう

ただ、彼が犯人だった場合は

それ相応の裁きをちゃんと受けてもらう

…いいね?」

「は、はい…!」

そうして自警団舎の扉をクラウスは叩くことになる


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