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山歩きの流儀

ロセウムの月のスノームースは夜間でも10度を下回る事は滅多になく

日中なら暖かい日で20度はあるので旅をするのには快適な時期ではある

「…すごいな…あの地震で出来た断層だろう?

これ、ワピチもこうなのかな…

そうなると道も整備しないといけない」

北門から出た彼らは、真っ直ぐワピチを目指すディオが通ってきた最短ルートを選んでいた

山を越える必要があるので、難易度は高く

当初ディオは猛反対したのだが

手に入れられた装備の少なさから、あまり時間を掛けられないという事情もあり

結局彼は妥協せざるを得なかった

かつて、舗装されていた道にはヒビが入り歩き難く所々で断層が出来ている

目の前にある1mはある段差を乗り越え進んで行かなければならない


先に段差を乗り越えたディオはクラウスに手を差し出した

「ありがと」

危険だとアンセルモやバベットには止められたこの道程だが

クラウスは全く無理ではないと考えていた

「そういえば、ディオってレベル幾つ?」

「…レベル…ですか…

実はよく分からないと言われてしまって」

レベルというのは冒険者レベルの事で

基本的にギルドが認定するものである

ギルドが用意した合成スライムに対して、一撃で与えられるダメージを基礎値として

そこに、固有スキルの数、習熟度等を加算して算出される数字である


「何度やっても合成スライムが飛び散ってしまって…

ダメージが測れないとダイアンさんにちょっと怒られました」

「ああ…まあ…普通はレベル20以下で受けるテストだからね…」

どう考えても、出会った頃からディオのレベルは50を軽く超えている

でなければ、魔女を専門に負けなしで勝ち続けるのはかなり困難な事なのだ

結局、スライムが勿体無いからとそれ以上の測定は行われず

固有スキルや熟練度を見て適当に出されたのが

「なので推定レベル70って言われてます」

「いい加減だなぁ…

そうだ、今度ボクと本気で戦ってみようか!」

ディオとは魔女狩り公務員実技試験で一度戦ってはいるが

彼はパーティーとして、クラウスと戦っているので

個人的な力量ははっきりとは分からなかった

「えっ!本気でクラウスさんと…!?

だ、ダメですよ!もし怪我なんてさせたら…俺立ち直れないかも…」

「いや、いやいや、ボクも高レベル帯だよ

そりゃ現役冒険者ではないけれども」

一般市民のレベルは高くても大体20止まり

兵役を受けた者などで、戦闘経験を積んだ者やよく居る冒険者でも殆どの人がレベル40前後が関の山

レベル50を越えるにはかなりの努力と、素質が無ければ難しく

領地を治める者達は血筋という素質と、整った環境、そこへ努力を足して地位を維持しているのだ

「一応、ボクこれでもレベル的には85で…

あ、これ内緒ね!レベルの公表はしないようにって言われてるから」

「えっそんなに高いんですか…!?

それってギルドだと伝説級ですよ!?

エルカトルのギルドだって80に到達している登録者は居ないって聞いてます」

「それは…まあボクら領主や貴族は指標として使徒からレベルを調べられるけど

ギルドにら登録してないからなぁ

真面目に鍛錬積んでる一般貴族ならレベル50は普通だと思うし

ただ、エドリック王はボクより絶対高いよ」

「…クラウスさんって強いんですね?」

「その言い方、嘘だと思ってるでしょ…

ボクの場合、魔法攻撃が通りやす過ぎて

相手によっては滅茶苦茶弱くなっちゃうんだよねぇ…

ただ、魔法が使えない相手になら

かなり強いと自信を持って言えるね」

クラウスはディオを見てニヤッと笑う

「俺は惚れた弱みも合わせて惨敗確定ですね」

だから戦っても何も面白くないですよと、ディオは言うが

クラウスは引かなかった

「んじゃあ、君がボクを負かせることが出来たら

一日君の言うことを何でも聞くよって言ったら…ヤル気でる?」

「…何でも?本気で言ってますか?」

「本気さ…どんな事でも聞くよ」

“何”とは敢えて言わないが、クラウスの微笑みが艶かしく見えて

ディオはゴクリと生唾を飲み込んだ

「わ、分かりました…でも先ずはネフロイトに無事に帰り着かないと」

2人の進む先に聳え立つ、ゲリリート山と連なる山脈

あそこへ辿り着くのにもまだ数日掛かりそうだという現実があった


クリスタルレイの城下街から約4日

途中で休憩を交えながら歩き続け、やっとゲリリート山の麓まで辿り着いた

「参ったな、想像してたよりずっと遠かった…

君は一体どんな速度で走ってきたのよ…」

「実はあの時の記憶はあまり無いです

でも、一瞬も立ち止まらなかったのは確かだと思います」

「若いって羨ましいよホント…」

適度に休憩は取っていたとはいえ、歩き詰めでここまで来たクラウスは

年齢的ないものもあって疲れがだいぶ蓄積していた

しかし、自分が帰ると言い出し

ディオの制止を振り切ってここまで来た経緯もあり

先に進まなければとクラウスは己を奮い立たせた


ゲリリート山を越えるには、無理をせず順当に進んで2日かかる登山となる

「獣道を歩くと滑落とか魔物、盗賊に出会うリスクが高くなります

少し遠回りでもちゃんと登山道を行きましょう」

ディオはそう数歩先を歩き始めた

クラウスはそんな彼に着いていく

ワピチを囲み要塞としている山脈の中の一つの山であるゲリリート山は

4号目を超えた辺りから険しさを増す

ここからは魔物や盗賊の数が激減する為、襲われる心配は減るが

滑落などの事故が起きる確率がぐっと上がり

そして、8号目まで行くと道が無くなる

ワピチ側の麓へ降りる道は、そもそも作られていないのである

「“天然の要塞”だなんて言って、ワピチに通じる登山道を作る事に猛反対したのを今凄く後悔してるところ…」


登りは登りでしんどいのだが

下り側は整備された道もなく、更に膝に強い負担が掛かる

「こんな事態でも無ければ

山を越えてワピチに入ろうとは思いませんからね

しんどいですが、魔物や盗賊団の動きを考えると、俺はこのままで正しいと思います」

「そぉ…?まあ君が言うなら…」

適度に休憩を入れ、山の中で野営もしたが

山の中と平原では野営の緊張感も全く違う

そのせいか、クラウスは眠ってもあまり疲れが取れていなかった

下り初めて半分くらいのところで2人は盗賊団と出会した

規模の小さい盗賊団なのか、人数はそんなにいなかったので

ディオと2人であっという間に片付け

そのタイミングで休憩を取ることになる


「クラウスさん、このフルール食料を持っていますよ」

物言わぬ死体となった盗賊団の持ち物を漁っていたディオが使えそうな物を持ってクラウスへ持って来た

ドライフルーツを差し出し、それを食べるようにと促してくる

「どっちが盗賊だか分からないな」

「襲ってきたのはあっちです

死んだ者に食べ物は必要ありません

…俺、間違えてますか…?」

「まあそうだ」

その後も襲ってきた者を返り討ちにして

都度、道具や装備を剥ぎ取った

ディオは顔色ひとつ変えず、使えそうな物を全て回収し

死体の処理も完璧にこなす


「…どうしました?」

盗賊のフルールの1人から生皮を剥がすディオを、少し離れて見ているクラウスと目が合い彼は問い掛けた

「いやぁ結構容赦ないなと」

「野山で出会うフルールで襲って来る者は人ではありません

二足歩行でも言葉を話しても動物と同じと考えて下さい」

「ボクもフルールは嫌いだし

それは分かるよ、ただ毛皮を剥ぐとは思わなかったから…」

慣れた手つきで一枚皮を作り上げたディオはそれを畳みマジックバックにしまい、血のついた手やナイフを拭いた

「流石に肉を食べたりはしませんが

この人は特殊な毛皮を持っていたので…

えっと…その…すみません…俺、気持ち悪いですね」

不意にディオの頭の中で、いつかシピに言われた言葉が再生された

「ボクはやれないけど

君を批判するつもりもないよ

この盗賊に負けていたら、ボクらが骨まで利用された訳だろう?

コミュニティの外は厳しい…お互い様だ」

てっきり気持ち悪がられると思っていたディオは驚いたような顔をする

「それにしても、外の君はいつもの何倍も頼もしいね

君をもっと好きになっちゃうよ」

「…あっ…そ…の…」

「はは、可愛い君も大好きだ」

「も、もう…少し下れば、山から出れます

…が、頑張りましょう…」

クラウスの屈託のない笑顔に耐えられなくなって、ディオは頬を赤らめ顔を逸らし死体の処理に専念した

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