表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/102

second rape

「穢らわしい…」「一体何人の相手したんだ?」「俺の相手もしてくれよ」

大勢の領民に囲まれ、四方から心無い言葉を投げかけられ

ディオは目の前が白くなって動けなくなった

理由が分からず狼狽えるミーティアの横に立っていたラビッシュが吠える

「ふざけんな!!急になんなんだよ!!」

牙を剥き出し怒りを露わにした彼に、領民達は一瞬怯んだが

人数で勝る彼らは直ぐにラビッシュに対して反撃した

「黙れフルール!このコソ泥の犯罪者め!

このトカゲが性奴隷だってことはもう皆んな知ってるんだぞ!!」

「はぁ!?ふざけんな!!

ディオは性奴隷なんかじゃねぇ!」

叫ぶ彼に丸められた紙が投げつけられ

誰だ投げたやつは!と怒鳴りながらそれを拾い中を見たラビッシュは顔を強張らせた

その紙には、過去のディオの姿があったからだ

「な…なんだよこれ…」


「毎日領主の矛を磨いてやってんだろ?」


ディオはもう立っていられなかった

襲い掛かる過去のトラウマと人々の好奇の視線

何もかもがあの時に戻ってしまったようで

全身から立ち向かう力が抜けていったのだ

「お…おれ…ご…ごめんな…さい…」

人々に怯えうずくまり、震えながら謝るディオを領民達は罵り続ける

「や…止めろ!ディオを悪く言うな!

2人は私の命の恩人で家族だ!」

ミーティアは怒りに弓を取り矢をつがえ民衆に向けた

これに一部の人間は怯んだが、この事で彼女も非難の的になってしまう

「これだから孤児は…」「獣人に攫われて洗脳されてる!」


そんな中で誰かが石を投げた事で

他の領民達も石を拾い彼らに投げ始めた

「なっ…!イテッ止めろ!」

「危ないじゃん!いい加減にしろよ!!」

「ークソぉ!もう我慢できねぇ!!」

ラビッシュが武器を抜いた時

「道を開けろ!!」

民衆の群れの向こう側から、天を裂くような怒号が響き

領民達は何かを避けるように二手に割れた

人の波の向こう側からクラウスが真っ直ぐ歩いて来る


「モ…モジャモジャ…」

彼は真っ直ぐ3人の元まで来るとうずくまり震えながら泣くディオを守るように立った

そして一度大きく深呼吸してから領民達に普段は出さないような声量で語りかける

「君達は彼らに何をしてもらった忘れたのか?

不作だった農作物が豊作に転じたのは誰のおかげだ?

2度のニゲラを乗り越えられたのは誰のおかげだ?

彼らが身を挺し、時に命を削って戦ってくれたからだろう!?

こんな誰が撒いたか、出所も分からないようなビラを何故信じる!?」

集まった領民の中で騒めきが起こる

確かにそうだと言う者と、でも写真があると後に引けないのかビラを正当化しようとする者で分かれ始めた

「そうだ…私達はいつだってワピチやネフロイトの為に戦って来た

領主さんは真っ当な仕事をくれて

健康で文化的な生活を送る権利をくれたんだ…!!」

ミーティアの叫びに更に騒めきは広がる

「確かに先代ヴィリバルトは大切な皆の血税を自らの私腹を肥やす為に使ったが

私がそうでは無いことは君たちも知っている筈だ

私利私欲の為に彼らを雇った訳ではない証明なら

君たちが納得するまで帳簿でも何でも見せよう!」

全員が納得した風では無かったが

集まっていた領民達は少しずつ掃けていき

最後まで残っていた少数の人間も、自分達の分が悪いと分かると捨て台詞を吐き帰って行った


自力で歩けないディオに肩を貸し

何とか執務室まで運んだクラウスは、今回の事の詳細をディオ達に話す事にした

「君達を巻き込む形になってしまった事

どう償えばいいか…本当に申し訳ない」

ラビッシュは牙を剥き今にも襲い掛かる勢いで、そんなクラウスに罵詈雑言を浴びせる

「ファーレス!テメェらはいつもそうだ!

都合よく俺達を消費して…!

気に入らない事があるといつも俺らのせいだ!!」

どんどんヒートアップする彼に、今回ばかりはクラウスも嫌味を返したりせず

その全ての言葉を受け止めている

「ラビッシュもう止めて…」

しかし、今回の一番の被害者であるディオが悲痛な声を漏らした

「…俺は…物心ついた時から

もう…そういう扱いでした…

ごめんなさい…俺みたいな汚物がいたから…

クラウスさんまで…卑しい人間だと思われた…俺のせいだ…俺がいたから…」

「違う、違うよディオ…

君はちっとも悪くない、君は被害者だ」

両腕で頭を抱え込み、ディオは静かに泣き始めた

「…チッ、おいモジャモジャ!

どうしてくれんだよコレ!

こんな状態じゃ俺ら仕事なんて出来ねぇぞ!?」

「その通りだな…」

集まっていた民衆の大多数は集団に便乗した者だろう

あとは強い正義感を持った者

彼らは恐らくデリアの話が公表されれば静かになる

しかし、タチの悪いのは

あの場で最後まで残っていた、間違いを認められない者や

何でもいいから叩きたい者達だ

彼らはきっと、この後もディオ達に嫌がらせを続けるに違いないとクラウスは考えた

「ねえ、ディオ…ボクを見て

ボクは君が昔何者だったかなんて気にしない

君といることでボクが罵られても構わない

事実じゃない言葉なんて刺さらないしね」

涙でくしゃくしゃのディオがクラウスを見る

「この先もきっとボクと一緒にいると

嫌な思いをさせると思う…

だけど、ここに居てくれないだろうか

ボクは君が居ないと…」

「…いいんですか…?…俺は…汚い…」

「もう!汚くないの!

分かった!そんなに言うなら、ボクは君のゲロだって浴びてやるぞ!」

ヤケクソな訳の分からない説得にラビッシュとミーティアはドン引きしたが

ディオには響いたのか「はい」と彼は答えた


一先ずディオ達を彼らの住まいに帰す為に

庁舎の職員で腕っぷしが強く、信頼のできる数人に送らせる事にし

クラウスは今後どうやって、この事態を収拾するべきかを思案し始めた時に執務室にベルタが入って来た

彼女は明らかに不機嫌な表情でクラウスの机に書類の束を置いた

「…疑ってるのかい?」

クラウスの言葉に、キッと彼を睨む

「火のないところに煙は立ちませんから」

「君も庁舎の職員だろう

彼が庁舎で何してたかなんて、一番分かってるんじゃないの」

ここ最近、庁舎に入り浸っていたディオがしていた事といえば

清掃や整頓…あとは後回しになりがちな雑務である

「…分かってます、確かに私達は何もしてません

で?ホルツマンさんはどうなんですか

あの人、半日はあなたの執務室に居ましたよね」

「えぇ…確かに居たけど

彼は大人しくソファに座ってたよ」

「…どうだか」

「はぁ…ボクが執務室で彼とイケナイ事してたなんて思ってるの?

ボクは君を襲った貴族とは違うよ

君はそういう“無欲”なボクが好きで

その理想からボクが外れてしまいそうな現状に怒りを覚えてる…違うかな?」

「はぁあ!?ちっ違います!!

そもそもディオさんが性奴隷だったって知ってて公務員にしたんですか!?

庁舎は風俗店じゃないんですよ!?」

「奴隷だったのは知ってるよ

ただどういう扱いを受けていたのかなんて詳細は聞いてない

君だって辛い記憶を思い返して言葉になんてしたくないでしょう?

“彼は強く魔女が狩れる”それ以上は求めてないしね

…それ自体が凄いことになんだから」

ベルタはもう自分が何に怒ってるか

よく分からなくなっているのだろう

でも!だって!を繰り返すので、クラウスはピシャリと言い切った

「彼は生まれて直ぐに奴隷商に売られた!

性奴隷は望んだ道じゃない!

君はそんな彼に性奴隷として生きろと言うのか!?」

「…そんなこと…」

「ボクはディオをこのまま雇い続ける

誰が何と言おうと彼はワピチの宝だ

…彼に卑猥な言葉をかけた奴を片っ端からしょっぴくくらいのつもりでいるぞ」

ベルタはクラウスに睨まれ一歩下がる

「わ…私は、ホルツマンさんの心配をしてるだけなのにっ!このバカ!!」

泣き出すかと思いきや、ベルタは逆ギレして扉を壊す勢いで部屋を出て行った


「…全く、困った娘だ…」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ