フリークショー
*虐待描写あり
数頭の馬が引く馬車5台からなる一団が
ラビフィールドの舗装された道をゆっくりゆっくりと進んでいく
“クリーピー”と名乗るこの旅芸人の一座は
街から街を転々としながら演芸を披露して生計を立てていた
いくら道が舗装されているとはいえ
馬車の車輪がオンボロでは、道の凹凸や石を踏んだ衝撃を緩和できない
ガタン…ガタン…と不規則に荷台は揺れ
御者を務めるクリーピーの団員は、その度に不愉快そうにため息を吐くのだ
そんな彼らが辿り着いたのは
ラビフィールドの中でも比較的大きな街マグレシア
一座は街の中には入らず、街の入り口付近に馬車を停め
2つの馬車に積んでいたテントを4人の従業員で設営し
“旅するフリークショークリーピー!”の看板を立てた
まだ日は高く時刻にして14時頃
彼らのショーは日が暮れた20時頃から日の登る前までの夜間に行われる
迫る公演の為に一座の団長を務める
お腹の出っ張ったニキビ面の中年男が4人の団員をテントの中に集め
今夜の段取りを再確認した
「演目順は事前に打ち合わせた通り
マグレシアには“俺達の客”が多い
今日は一番いい衣装を着せて出せ
おい、ドン!餌をちゃんとやっとけよ!
この前みたいに“接客中”に無反応になられたら金にならんからな」
「…へぇ」
ドンと呼ばれたこのどこかボンヤリした男
この旅芸人の一座では猛獣使いとして売っている
打ち合わせが終わった後
ドンは直ぐにテントの裏でキャンプの準備をしていた踊り子のエリカの元へ行った
「餌はあるか?」
「ゴミならそこ」
ドンの方へ見向きもせず、エリカはニンジンを乱暴に切り鍋にぶち込んだ
そんな彼女の足元に置いてある、汚い錆びの目立つ金属バケツにドンは手を伸ばす
「ちょっと、触ったでしょ!」
「し、してない!」
エリカに肩を蹴られ、ドンはギャっと身を縮めた
「本当に名前の通りドン臭い奴…
何よ、さっさと行けよ!!」
彼女の剣幕にドンは慌ててバケツを拾い、逃げるように2番馬車の荷台に飛び込んだ
一座の馬車の荷台は、2台がテント等の仕事道具や日用品を積んでおり
1台が団員の部屋、もう1台が団長の部屋
そして残りの1台であるこの2番馬車は
この一座の1番の出し物である獣人の檻が詰め込まれていた
ここには鉄の檻が4つあり、希少なS型の獣人が2人、C型獣人が1人入っている
大人が立つことも、体を伸ばして寝ることも出来ない程小さな檻の中に
2メートルを超える長身の獣人が服も着せてもらえず、固い床に身体を丸めて寝転がっていた
そんな檻をドンはガンッと乱暴に蹴り
檻の上からバケツの内容物を獣人に浴びせる
同じように他の2つにも餌を与えると
不機嫌なドンは荷台を出て行った
彼が出て行き暫くしてから、やっと檻の中の獣人達はゆっくり起き上がる
「…お、りんごの芯がある
おい、食うか?ディオ」
C型のアライグマベースの男が汚い床に散らばった“餌”の中からりんごの芯を拾い
数㎝先の檻の中に投げ込んだ
「ありがとう…あ、食べ掛けの魚
俺、食べないからラビッシュ食べて」
ディオと呼ばれた青年はりんごの芯をくれたラビッシュに焼き魚の骨と皮と内臓を差し出した
「スラット、これ食べて」
「…ありがとう」
フライドチキンの骨を更に隣のS型獣人の女性に差し出す
彼らは“餌”と呼ばれた“残飯”や“生ゴミ”を必死に齧り命を繋いでいる
掃除も殆どされていないこの不衛生な荷台の狭い檻に閉じ込められた彼らが
この檻から出られるのは基本的にショーの時だけ
腐った食物で腹を壊そうが、不衛生のせいで病気になろうが
関係なくショーの時には外に出され働かなくてはならない
床に散らばる残飯を貪り終えたくらいに、ドンがバケツを持ってまた戻ってくる
彼は今度はバケツに水を持って来ており
獣人達はそれを頭から浴びせられるのだ
更に食器を洗うのに使うような粗末なスポンジを投げ込まれる
これで身体を自分で洗えと言っているのである
この時、女性であるスラットだけはドンが身体を洗う
彼女にはショーの後に特別な仕事が必ずつくから、特別綺麗にしないといけないとドンは言い訳するが
実際はそれは口実で猥褻目的なのは明白だった
ディオもラビッシュも彼女が乱暴されている間、目を瞑り堪えることしか出来ない
「…へへ…へへへ…お前は良い子だ…
今日も頑張れよ…へへへ…」
ズボンを履き直しドンは出ていく
そして地獄の夜が始まる
街外れに突如立ったテントに、何人もの大人が次々と入って行く
2人の踊り子が観客の前で異国の踊りを踊り
軽業師の男が危険な曲芸をこなす
しかし彼らの演芸は“余興”にすぎない
客達が待ち侘びているもの…この一座のスターは獣人であり、目玉の出し物は獣人のショーなのである
ドンと共に入場したリードをつけられたラビッシュは曲芸と称した虐待をうける
剣山のようなマットの上を歩かされ、重しをつけられた上で水に沈められ
どう見てもくぐれない火の輪をくぐれと鞭打たれ
血だらけになり泣きながら命乞いをする彼を民衆は爆笑しながら眺めるのだ
ラビッシュの出番が終わると
次はディオとスラットが客の前に出される
2人とも裸と殆ど変わらない衣装を着せられ
観客の前で自尊心をすり潰すようなポーズや行為をさせられる
そうやって大勢の好奇の目に散々晒された後、やっと表向きのショーは終わる
この後は観覧料以外の料金を払った
特別な客の相手をする、裏のショーが始まるのだ
特にスラットとディオは
さっきのショーで欲情した男達に滅茶苦茶に玩具にされる
抵抗なんてする気力も湧かない程に
何度も何十人もの人間に穢されて、穢されて…
(ヤダ…もう…嫌だ…)
いっそ殺してと願いながら、ただ堪える事しか出来ない
「おい、ちゃんとやれよ
こっちは高い金払ってんだぞ」
男がディオのザンバラ髪を鷲掴み押さえ込んできた
激しい嘔吐感と吐瀉物が上がってくるが、抵抗してもマトモな物を食べていないディオの手に力は入らず
なされるがままになる
「…ぅゔ…ぐぅう…」
粘膜が傷付き腫れて血だらけになっても誰も心配もしないし、止めてはくれない
それどころか、皆一様に笑いながら彼を蹂躙し続けるのだ
「リグマンはちょっとやそっとじゃ死なねぇらしい…色々試してみようぜ」
男の手がディオの痩せた首を締めた
・
・
・
「ディオ!!」
ディオを取り囲んでいた無数の悪意に満ちた笑顔が消え、不安そうに彼を覗き込む2人の仲間が目の前にいた
「凄くうなされてたから起こしたんだけど…」
ミーティアに言われて初めて
自分が夢を見ていたのだとディオは気が付いた
「最近毎晩うなされてるよ
何かあったのか?何か出来ることある?」
真っ直ぐに見つめてくるミーティアの優しく純粋な瞳すら今は恐ろしく感じる
汗ばんだ額を撫で「大丈夫、ごめん」と目を伏せ小刻みに震えている彼に
ラビッシュは何となくその悪夢の内容を察した
「ディオ、ほらよ久しぶりにモフらせてやらぁ」
ラビッシュは自らの腹辺りの被毛を彼の顔に押し付けた
温かく柔らかなフワフワとした毛並みが心地よい
檻に入れられて動けない中で
どうしても涙が止まらない時、ラビッシュは自分がどんなにボロボロでも檻越しに手を繋いでくれたのを思い出す
「…あと2体魔女やる予定だったけどよ
1体倒したら今回はもう帰ろうぜ」
「…うん、ごめん」
◆
ディオが仕事に復帰して数日経ったある日
いつものように庁舎へ向かうクラウスは、何やら領民の様子がおかしい事に気付いた
いつもは挨拶を交わす露店の店員が
今日は声を掛けられまいと、店の裏に引っ込み
井戸端会議をする主婦達は、クラウスを見て訝しげな表情をした後
ヒソヒソと声を潜めて何かを言っていた
(…何だ?)
不思議に思いながら庁舎につくと、その門の前には何人もの領民が集まっていて
彼らは一様にクラウスを汚い物を見るような目で睨んだ
流石にこれには驚いて訳を聞こうとクラウスが彼らに話しかけようとした所
エマが彼らとクラウスの間に入るように出て来て彼に執務室へ行くように急かした
庁舎の中も変な雰囲気になっていて
職員達は入って来たクラウスを遠巻きに見ている
ベルタなんかは目があった瞬間、鬼の形相で睨んできた
足早に執務室に入ると、エマは扉を閉め
はぁーと長い溜息を吐いた
「ねぇ?何なの?みんなどうしたのさ」
訳が分からないとエマに言うと、彼女は困ったような顔で一枚のビラを彼に差し出した
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リグマンのディオは
旅芸人の一座の性奴隷
クラウス・ホルツマンと
庁舎の職員は領の金で獣人の性奴隷を買い
日常的に捌け口にしている
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一枚の画像にそんな文章が添えてあった
その画像は酷く痩せ細り、ザンバラ髪の死んだような表情のディオが
一糸纏わない状態で卑猥なポーズを取らされている、そんなものであった
これを見たクラウスから一瞬で表情が無くなる
「早朝にネフロイトの街中に貼ってあったのぉ…
一部の職員と私で手分けして剥がして回ったけどぉ…」
チラッと窓の外を見るエマの視線の先には
怒れる領民達の姿がある
「私たちは貴方がそんな事しないの分かってるしぃ
庁舎でそんな事起きてないのは皆分かってるのよぉ
けどぉ…こういうの信じちゃう人も居るのよねぇ」
クラウスは手に持っていたビラを火の魔法で一瞬で灰に変え
ラックに立ててあった剣を手に取り腰に下げると、窓から鳩を飛ばした
「…少し出てくる」
「まぁ…殺さない程度にねぇ?」
分かってるよと言ったクラウスの微笑みは
確かな殺気を含んでいた




