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番の証

一先ず一度、自領に戻ってきてたクラウスを庁舎でディオが出迎えた

「クラウスさん…!」

壁の外で乱戦に参加していたので

着ている防具も何から何までボロボロの状態である彼を見たディオは

今にも泣き出しそうな顔をしている

「大丈夫だよ、ちゃんと帰ってきたでしょ?」

「ううっ…俺…まだ尻尾…うぅ…」

最近自切したばかりのディオはクラウスの怪我に差し出せるものがなくて静かに涙を流す

「ヤダな、泣かないで?

ボクが虐めたみたいじゃないの」

泣くディオの頭をわさわさ撫でていると

エマが声をかけてきた

「明日にはまたクリスタルレイに行くのよねぇ?」

「ああ、そうだね

今回の件で反乱軍に加わった者の処分とか、後任とか…王のアレとか

とにかく面倒くさくなりそうだよ

こっちの犠牲者の事は君に任せてもいいかな?」


反乱軍とベアとの戦いで

5名の貴族と、数百名の尊い領民を失った

彼らの葬いも行わなければならない

「大丈夫よぉ、任せてぇ」

「…クラウスさん…また行っちゃうんですか…」

忙しくてなかなか会えないのはそうだが

ディオにとって、クラウスのエルカトル行きは

もうトラウマレベルである

「うん…ごめん、行かないといけない」

「ねぇ?ホルホルぅ

明日はディオちゃんも連れてったらぁ?

最近色々あったじゃない、あなたにも癒しがないとぉ…

かなり酷い顔してるわよぉ?」

クラウスとディオの関係は、相談の結果

秘密にするという事に決まり

クラクスの告白を知っているのはエドアルドとプルーデンだけのハズなのだが

エマは知っていると言わんばかりにニッコリと微笑んだ

エマの勧めでクラウスの従者として

レプレイス以来の城下町へ来たディオは

そのあまりに代わり果てた光景に言葉を失った

美しかった街並みは、先のニゲラで崩壊し

先日の戦闘で街には死の臭いが立ち込めていた

治安も悪くなっているのか

あちこちで暴徒と化した民衆が、国王に対してのフラストレーションを暴力的な方法で発散していた


前回泊まったホテルも建物に被害が出ていたため休館しており

当面の賓客は、城内の部屋を貸してもらえる事になっていたため

ディオは初めて、クリスタルレイ城の中に入城する事になった


通されたゲストルームは、流石は城というだけあり

全てが恐ろしく高いのだろうと思わせるような物で揃えられている

ディオはそんな部屋の中が怖くて、床にひかれたカーペットすら避けて

何もない部屋の隅にちょこんと座った

「ええ…どうしてそんなところに?

こっちにおいで、椅子に座りなよ」

「で、でも、そんな高そうな椅子…

座ってもし壊れたら…俺弁償できません…」

ビクビクと部屋の家具に怯えるディオに思わずクラウスは笑った

「普通に使ってたら壊れないって

それに座って壊れても弁償とは言われないよ

…というか、君の分の部屋も用意できるって言ってたけど

良かったの?ボクと一緒で…」

元々一人用の部屋なので、ベッドが足りない

これに関してはクラウスは自分がソファで寝ればいいかと思っていたが

「クラウスさんが嫌じゃないなら…

少しでも長く一緒に居たいです」

「ディオ…」

実はこの二人、お互いの気持ちを打ち明けたあの日から今日まで

互いの仕事の忙しさから、こうしてゆっくり2人で時間を過ごす事が出来ていなかった


「…あ、もうそろそろボクは行かないと

このホルツマンの紋章を付けてれば

まず何も言われないから、この機会に城の中でも見学しておいで」

会議に行くというクラウスを見送るために

ディオも一緒に部屋の外へ出ると

丁度プルーデンに出会した

プルーデンは2人を交互に見て、一度首を傾げたが

直ぐにいつもの調子で話し始めた

「2人とも居らしていたのですね

領主様、会議にはノーブルも出席します

どうかよろしくお願いします

あ、そうだ…彼にはあまり優しくしなさらないように注意してくださいね」

「ん?優しくしちゃいけないのかい?」

「ええまあ、少し面倒な人なので」


廊下を歩いていくクラウスを見送り

部屋に戻ろうとするディオをプルーデンは引き止めた

「少しお時間あります?

良かったら私とお城の中を探検しましょう」

「え?あ、はい」

会議室には王とノーブル、そして反乱を起こした2人を除いた領主が集まっていた

今回の反乱はその余地を与えた自身の落ち度であると

先ず王はその場の全員に深く頭を下げた

「それでは、反乱を起こした者達の処分を決めていこうか」

反乱罪は重罪

未遂であっても、企てただけで非常に重い罪が課せられるものだ

首魁はどのような場合でも極刑である

「マルク・コロゴロフとミック・フェルリンデンの2人は死刑」

これに誰も反対はしない

「それに付き従った貴族は聴取ののち

死刑又は無期懲役を課す」

騎士として参加した貴族の中には、家族を人質に捕られた者もいた

無期懲役はその者への措置だろう


そして、彼らの後任問題である

これにはコロゴロフ達に従わなかった数人の貴族達の中から選ばれる事に決まった

サモーズとコモンゲラート領の区域から貴族が大幅に減ってしまうので

他領で区をあてがわれていない貴族の分家から選出する話になった


昼から始めた会議だったがここまでの話で、日はとっぷりとくれてしまい

会議はまた明日に持ち越される事になった

「まあ、一日で終わるような話では無いのは分かってたからね」

「疲れたわ…夜更かしは美容の敵なのよ

私は21時には眠る事にしてるのに…」

ソフィはブツブツとボヤいている

「食事が部屋に用意してあるって言ってたけど」

「17時以降は何も食べないことにしているの」

今の時間は22時、どうやらソフィは食べる気はないらしい

「緊急事態とはいえ、自領の事もありますから早く帰してほしいものですね

それでは、おやすみなさい」

エイベルはサッサと部屋へと戻って行った

「はぁ…彼、取っ付きにくいわね

それじゃ、クラウスまた明日ね」

「ハハハ彼は魔物の話だと結構饒舌だよ

おやすみソフィ」

ソフィを見送るとクラウスは廊下でノーブルと2人きりになった

「せっかく来て頂いたのに、外交の話しが出来なくて本当に申し訳ない

その上、戦争にまで巻き込んでしまって…」

「いや問題ない、貴方は我らの家族同然

いつでも力を貸す所存だ」

「それ…シェイドさんも言ってましたね」

シェイドはそう言って、身を挺して窮地を救いに来てくれた

「ハハハ、シェイドは貴方の息子ではありませんか!」

リグマンは一度信用した相手に非常に友好的になるのはクラウスもプルーデンやディオと接していて分かっていたが

それにしてもシェイドの息子発言はよく分からなかった

「あのディアナ様の父上というだけあって

貴方は本当に素晴らしい方だ

他の2人はリグマンである私をいないものとして扱っていたというのに」

そこでハッとなる、今の今まで忘れていた“シェイド”その名前は

確かにプルーデンから聞いた娘の惚れた相手の名前と同じであった

「では私もここで、また明日会いましょう

ホルツマン様」

「ああ、ええ…良い夢を」

クラウスも部屋に戻ると、ディオが緊張したような面持ちで食事も取らずに椅子に座って待っていた

「あれ…先に食べてて良かったのに」

上着を脱いでラフな格好になってから

クラウスはディオの向かい側に座る

「…あの…」

食事を始めようとすると、ディオが小さく声を発したので「ん?」と彼に視線をやる

彼は少し戸惑ったように目を泳がせてそれから小さな声でお願いをしてきた

「…俺の…首を噛んでください…」

「なんでよ?」


顔に婚姻色を発現しながらディオは何故そんなことを言ったのかを説明した

クラウスと別れ、プルーデンと城の中を見学していた時に

「それで、領主様は結局やめたんですか?」

なんて聞かれたのだという

何のことか分からず、聞き返すと

“番の証”がどちらにも無かったから

プルーデンはディオがクラウスを振ったのだと思ったらしかった

「だから、違うって俺たち誓いましたって

って言ったら不思議そうにされて」

物心が着く前から人間の世界で、人間の文化で育ったディオは

“番う”という事を“付き合う”の意味だと思っていたのに対して

プルーデンがいう“番う”は“結婚”に相当し

更に特殊な手順が必要だと初めて知らされた

「…首を…噛むんです…

男性が女性の…その…する時に

それで“番い”になると言われました

あっあの!重要なのは首に残る傷痕で!///

だからそのっ噛んでくれるだけでいいので!!///」

「…なるほどね、だから“番の証”なのか

でも、噛んだところで君たち次の日には治るんじゃないの?」

このリグマンの不思議な婚姻方法では

お互いにその気のある場合において、傷痕が消えずに残る

なので、片方が無理やり噛み跡を付けようとした所で

次の日には綺麗さっぱり治ってしまうし

逆にいえば、一度番うとどちらかが死ぬまで

この証は消えることもないのだといわれた

「だから、若気の至りで番った若者が

証を消すために相手を殺しちゃう事件もあるくらいだってプルーデンが…」

「…えぇ…で、ボクが噛むの?」

「お、俺!貴方のものになりたい…!」

ディオの歯は、尖っていて噛まれればタダでは済まないのは考えなくても分かる

そういう意味でも、クラウスは自分が噛むのが妥当なのかもとは思った

「あと16年、順当にいけばボクの噛み跡が残ることになっちゃうよ…?

本当にそれで大丈夫?ボクは今のままのお付き合いでも全然大丈夫だけど」

「16年…?どうして期限付きなんですか?

俺、クラウスさんが寝たきりになっても

全部お世話する気満々ですよ?」

「ああ…うん、どんなにゴネても70までしか人間で居させてもらえないからね

70の誕生日には使徒が迎えに来ちゃうから

貴族の当主ってそういう決まりがあるからさ…」

「…そうなんですか…」

ディオの事は好きだし

内心、人間同士がするような結びつきもあればと思いながらも

互いの年齢や種族、身分の違いから

もっと気楽な恋人でいるつもりだったクラウスは少し困ったように頭を掻いた


「…16年…貴方になら殺されたって構わない

16年で貴方を使徒に奪われないくらい

俺…強くなります」

「ははは…参ったな

そんな覚悟されちゃったらさ…」

真っ直ぐに見つめてくるディオにクラウスは良いんだね?ともう一度確認した後

座る彼の後ろに回り、その頸に強く噛みしめた

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