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賢者の一声

ぼんやりと視界が戻り、目の前にはやけに凝った造りの天井が広がっていた

「お目覚めね、気分はどう?小鳥ちゃん」

「頭がズキズキする…」

クラウスが頭を押さえながらゆっくりと身体を起こすと、ソフィが椅子を持って来てその横に座った

「ええっと…どうなったのこれ

ボクまさか殴られた?」

確か自分は反乱を起こしたコロゴロフと対峙しようと、扉を開けた筈だったと

痛む頭で思い出した

「違うわ、貴方は重度の急性魔力あたりを起こしたの」

ソフィがあの時、何が起きたのかを話してくれる


クラウスが扉を蹴破り、足を踏み入れた途端

彼はその部屋に充満していた高濃度の魔力の香りに包まれ

マイナス値のつく魔力耐性の低さが災いし

急性の魔力あたりから嘔吐、一瞬で意識を失った


彼が倒れた事で危険を察知したソフィは

素早く自らに魔法を数分弾くバフを施したが

エイベルをカバーするのには間に合わなかった

「あなたって本当に金◯付いてるの?」

「何そのナチュラルなセクハラ…

この話のどこに関係があるんだい」

「後から分かった事だけど

あの部屋に充満していた魔力の香り

要は魔法ね…あれは男性に対する強烈なチャームだったのよ」

その後は地獄のようだったとソフィは語る


「あの子、普段は済ました顔しているのに

なかなかの趣味をしてるようね

奥様が心配になるわ…」

バフを掛けるのが遅れたエイベルは、はたと魔法の詠唱を止め

部屋の中、王のベッドの上でシベティと思われる女を組み敷いていた全裸のコロゴロフをすごい勢いで殴り飛ばした

コロゴロフはその勢いのままベッドの反対側に転がり落ち

エイベルは彼を捕縛するのかと思いきや

コロゴロフと入れ替わりにシベティの上に跨り、彼女に乱暴を働いた


暫くして起き上がったコロゴロフは、全裸のままエイベルに掴みかかる

理性を失った2人が揉みくちゃに殴り合うのを見て、慌ててプルーデンがエイベルに加勢し

その間にソフィは強力な睡眠の魔法を詠唱したのだ

「無差別的に効果が出る魔法を使う場合に

信用できる獣人が仲間に居るのは有効ね

…信用できる獣人というのが、まずいないのが難点ですけど」


そして、プルーデンと自分を除く

その場の全ての人間を眠らせ

コロゴロフを全裸のまま縄で縛り、部屋の隅で同じく全裸で伸びていたミックも縛り上げ、2人とも地下牢に転がしておいたという

「シベティだったかしら?

あの魔族の娘は禁術のデバフを掛けておいたから暫くはただの娘よ

この城に居て急にエッチな気分になったり、卒倒したりはしないと思うから安心して」

「そんな事が…はぁ、魔力耐性の低さを有り難く思う日が来るとはね…ははは」

醜態を晒さずに済んだとはいえ、あまりの情けなさに乾いた笑いを漏らす

こうして反乱軍のトップを捕らえ

王と城の奪還に成功した訳だが

まだ終わりではなかった

「それで病み上がりなところ悪いのだけど

ベアの軍勢が城下街の目と鼻の先まで迫ってる

それを退けない限り、私たちは終わりよ…」

スノームースの兵士も騎士も反乱で疲弊している今

この国はベアにとっての格好の餌食となってしまった

「どのくらいの規模の軍勢なの?」

「万単位よ…」

コロゴロフがベアと手を結び進路を提供していたために

大規模な敵の軍隊の、最深部への侵入を許してしまっていた


「…そうか…王はもう動ける?」

「ええ、戦ってもらわないと困るわ」

エイベルは自領に援軍を呼びに戻ったという

「分かった、ワピチに鳩を飛ばして後ろから遊撃させる」

鳩を飛ばしエマにその指揮を委ね

クラウスは魔力下しの副作用を残したままベッドから降りた



コモンゲラートを進んで来たグラウンドベアの軍隊は

真っ直ぐクリスタルレイの城下街までやって来て西門を攻撃し始めた

先の戦いで消耗していた正規軍の兵士や騎士は直ぐに劣勢に陥る

コロゴロフの放送で知った“魔族の女”の存在によって不信感を抱いた者も少なくない

そのため、王の号令も殆ど意味をなさなかった

「援軍が到着するまで、なんとか持ち堪えさせないと…」

壁の上から魔力の矢で援護射撃をするソフィも、相手の量が多すぎて魔力が底をつき始めていた

クラウスも一般兵や騎士に混ざり

門の前で敵を迎え撃つが、かなりギリギリの戦いを強いられている


一瞬でも気を抜けば死ぬ


そんな極限な緊張に神経が尖る

西門の陥落までもう僅かというところまで来た時

周囲の温度が急激に下がり、暗雲が垂れ込めてきた

「フィンブル」

低く響く声が唱えた


恐ろしい寒さが、その場に居た者に襲い掛かる

「ーっ!」

その声に聞き覚えがあったクラウスは

勝利を確信するのと同時に、巻き込まれて死ぬ未来を見た

このまま凍る…そう覚悟をした時に

シェイドが外壁の上から、クラウス目掛けて飛び降りてくるのを見る

そして、彼は急激な寒さに身動きの取れなくなったクラウスをしっかりと抱きしめた

「私は“サラマンダー”という種がベースのリグマン!

貴殿は私の家族!必ず守る!」

黒い鱗と鱗の間が紅く発光し、彼が身を小刻みに震わせる度に

シェイドの身体は熱を発した


終わりの冬が去った後

クリスタルレイの西門前には、数千を超える人間だったものの氷像が

生々しい表情のまま立ち尽くしていた

「ああっ!なんてこと…」

敵も味方もなく全て死んでしまったと

ソフィは壁の上で膝をついた


「…熱い!焼ける!!」

その中でクラウスは生き残り悲鳴を上げた

シェイドの発熱が死の氷を退けてくれたのだ

「良かった…無事で…ぬうぅ少し休ませてくれ…」

シェイドはというと、体力を発熱に使いすぎたのかオーバーヒートしたのか

そのまま倒れてしまった


一瞬で軍のおよそ半分を失ったベア達は

得体の知れない強力な攻撃の前に隊列を乱した

そこへ、やっとノルウォギガスから魔獣の混じった援軍が駆けつけ

更に後方からエマが率いるワピチの二千の兵が押し寄せたことで、ベアの軍勢は総崩れした

「畳みかけろ!」

外壁の中に居た兵士や騎士も打って出て

ベアの軍隊を切り崩していく

これには堪らずベアは撤退を始めた


逃げ帰る彼らを王は深追いするなと止め

この戦いではスノームースが勝利を収めることができた

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