戦場へ
翌日、庁舎の応接室でソフィとクラウスは今後の動きについて話し合っていた
「あの人が捕まったって本当なのかしら…」
「ボクもそこは少し疑ってる」
コロゴロフとミックは明らかに王よりも弱い
2人が手を組んだとして、圧倒的に格上の相手をどうにか出来るものだろうか
「どちらにせよ、ミックはほぼ確実に脅せばなびく
問題はコロゴロフの方だ」
「それはそうね」
応接室の扉が叩かれ、エマが顔を出した
「ホルホルぅ〜、エルカトルの方角から
騎竜が一騎向かってきてるわぁ…撃退するぅ?」
「え、何処の所属か分からない感じ?」
「そうねぇ…初めて見るわぁ」
ソフィとクラウスは顔を見合わせ庁舎の庭に出た
向かってくるそれを観察していた者から
望遠鏡を借りて見ると、確かに真っ直ぐこっちに向かってくる竜が居る
「…デカいなあの騎竜、なかなか見ないサイズだし
クラックでもランナーでもなさそう」
「攻撃の準備はしておきましょう」
ソフィは首に掛けていた指輪を右手の中指に嵌め、詠唱を始める
クラウスも鞘に収めた剣を片手に、いつでも抜刀出来るように身構えた
皆が緊張している中で、果たしてそれはネフロイト庁舎の庭にズドン!と地面を揺らして降り立った
その操縦者を見た2人は攻撃の予備動作を解く
騎竜から飛び降りた男は、確かにノルウォギガスの領主エイベル・ヴァラハだったからだ
「クリスタルレイ奪還への参加表明はこちらで良かったですか?」
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エイベルをさっきの応接室へ案内し
王とその城の奪還へ向けての作戦会議が本格的に始まった
「上空から見た様子ですと…」
エイベルはネフロイトへ来る道中で、クリスタルレイ城にかなり接近して来たらしく
机に広げられたエルカトルのマップに駒を置き始めた
彼が言うには、城下街の全門は反乱軍に制圧され閉ざされており
エルカトル領の騎士達がこの門を開けようと戦っていたが開門するどころか敗走
城も完全に反乱軍によって制圧され
城の騎士達は外に出る事も、入ることも出来ずに戦っていたという
「クリスタルレイの騎士達はまさに袋のネズミ状態です
全員殺されるのも時間の問題かと思います
ああ、裏切り者は城に篭っていました
城に近づく私を見て、反乱に加わると思ったのか笑顔でしたけど
通り過ぎたら罵倒と攻撃を受けました」
「…ソフィ、君のところはどのくらい出せそう?」
「ウチは出せても1000ね
コモンゲラートとの境界の防衛も考えないといけないもの」
「ワピチも出せて2000だな
丁度、畑の植え替えの時期でそれ以上はキツい」
「50ですね」
エイベルが提示した兵士の数に、2人ともは?と首を傾げた
「いやいや…そこはもう少し頑張って貰わないと…」
「そうよ、せめて三桁はだしなさい!」
「その代わり、レベル60超えの精鋭です
50しか用意できない理由はそのためですが」
これには2人とも黙るしかない
千単位の兵士達は、普段は普通の領民をしている臨時の兵士達であり
レベルは一般人程度で20〜40とバラついている
「もっと少ない数で攻めるのは如何です?
その方が素早く行動も取れるし、敵に気付かれにくい
お二人の使える兵士でレベル60超える者を何人揃えられますか?」
クラウスは考えた、ネフロイトの人間から自分を含めて5名
各地区を任せている貴族から9名
ギルドに頼み込んで後何人かが関の山だろう
同じく考えていたソフィも渋い顔をしながら21と答えた
「ならそれだけで行きましょう」
「東の門が一番手薄でしたので、ノロイーストから東門を目指して
少数精鋭で攻め落とし、一気に城まで行きます
城の門は私の騎竜に破壊させますので
残りの精鋭達で帰り道の保持、向かって来た敵の撃退
私達領主と信頼できる数人で王の奪還を狙いたい」
「君の乗ってきたあの竜は…」
「安心して下さい
アレは確かに“魔獣”ですが、完全に飼い慣らしが済んでいますから」
ーコンコンと応接室の扉が叩かれ
エマが再びクラウスに用事を伝えにきた
「エドアルドが戻ったわぁ
それで…少し困ったことになっててぇ」
庁舎の外に出ると、エドアルドとプルーデン
更に知らない人物が2人いた
出てきたクラウスを見て、プルーデンは深く頭を下げる
「領主様、私の右側に居ますのが
スケイルメイト現リーダーのノーブル
左側がその右腕のシェイドです」
「貴方がホルツマン様…!やっとお会いできた
貴方の話はプルーデンから伺っております」
ノーブルはディオと同じS型のリグマンであり
その容姿は街を歩くだけで黄色い声が上がりそうなそういう男だった
対してシェイドの方は、ドラゴンベースC型の男性であり
漆黒の鱗と無数の角、真っ赤な瞳で魔物の様な出立ちをしていた
クラウスはニコニコと当たり障りなく接した後
エドアルドの手を引っ張り少し離れた所に連れて行った
「ちょっと、どうなってるの!」
「こ、断ったのですが…どうしてもと言われて」
「ああ…もう…最悪のタイミングだよ
今、エルカトルでは反乱が起きてるんだ
王には会えないどころか今から助けに行くんだよボクらは!」
「…!…ベアの軍隊がコモンゲラートを進軍してたのはそういう理由ですか…!?」
「なに?ちょっと今なんて…」
話をするクラウスとエドアルドの間に、気配もなくプルーデンがぬっと顔を出し
クラウスはひゃっ!と小さく悲鳴を上げた
「それは由々しき事態ですね
領主様、我々も戦いますよ!」
「ええっ待ってそんな…」
プルーデンはクラウスが止めるのも聞かず
ノーブルとシェイドに反乱の鎮圧に手を貸そうと進言し、それが二つ返事で通ってしまった
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「…という訳で、紹介する
此方がスケイルメイトのリーダーノーブル様
その右腕のシェイド様
そして、使者のプルーデン」
応接室で待っていたソフィとエイベルにリグマン達を紹介した
「ああ、前の会議で聞いた…
私はソフィ・デュモン
ノロイーストの領主よ」
「ノルウォギガスのエイベル・ヴァラハです」
2人は案外すんなり受け入れてくれたので、クラウスは心底安堵する
「もう一つ、報告がある
コモンゲラート領をベアの軍勢がエルカトルに向けて進行中らしい」
「…きな臭くなって来たわね
では、一度戻って精鋭を集めてきます
ノロイーストのミーブリズで会いましょう」
ソフィは自らの飛空艇で戻って行った
「では、私も」
エイベルは大きな竜の背に乗り流れ星の様に帰って行く
「では、私達も準備をしましょう
ミーブリズまでは輸送用の大型飛空艇で一気に飛びます」
鳩を飛ばし強い騎士だけを集め、クラウス達ワピチの精鋭も
王奪還に向けてミーブリズに向かった




