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相応しくない相手

今日も少し早い時間から庁舎に出勤したクラウスは、大量の荷物を自分の机の上にドサッと置いて溜め息を吐いた

「おはよぉ〜あらぁ?それはぁ?」

コーヒーを持って執務室に入ってきたエマは

机に山のように置かれた、本のような物を見て不思議そうに聞く

「これ?これね、ぜーんぶボク宛のお見合い写真

笑えるだろう?笑ってくれよ…」

辟易とした表情でそういい、本の山を叩いた

エマはその中の一冊を手に取り開く

クラウスの相手にしては若過ぎる女性の写真に、あらあらと彼女は声を漏らした

「何処から嗅ぎつけてきたのやら

ホルツマン家の財産と権力ってそんなに魅力的かい?

こんなのレティシアの二の舞でしょうに」

「そうねぇ〜1ミリでもいいから、愛が欲しいわよねぇ」

写真を次々に見るエマに言われ

クラウスの脳裏には笑顔のディオが思い浮かんだ

「…例えばだけど、愛があるなら

同性でも許されると思う?」

「世間的に許されはしないでしょうねぇ

使徒はきっと認めないでしょうしぃ

それを信仰する領民が反乱を起こすかもぉ?

何ならぁ、他領から攻撃を受けるかもぉ」

「…そうだよな」

クラウスはふぅとエマの淹れてくれたコーヒーを一口飲む

「そんなに気になるのぉ?」

「いや、例え話だよ?」

慌てて訂正してエマの方へ顔を上げると

目の前にお見合い写真が開いた状態で掲げられていた

その写真は何処からどう見ても立派な青年である

「え、なにそれ…」

「あなたのお見合い写真じゃないのぉ

確かにこの子、顔はすごく良いわよねぇ

こういう子が好みだったのねぇ」

びっくりしてエマから写真を受け取ると、ひらりと手紙が落ちてきた


ーーーーー

離婚したんだってなオカマちゃん

お前にお似合いの相手を紹介してやるよ


 心優しいコルゴロフより

ーーーーー


手に持っていたお見合い写真と手紙を真っ二つに破り、ゴミ箱に投げ入たクラウスは

目の笑っていない笑顔でエマに頼んだ

「大量の腐った野菜クズと堆肥を

バブナークのアイツの家に1トン

お礼として送りつけてくれる?」

「戦争になるわよぉ?」

この日の業務として、ニゲラで被害を受けたギルドへ足を運ぶ

ギルドの建物は丁度半分が壊れてしまっていて、外から中が丸見えになっているが

冒険者達はそんな建物の中で、いつも通り飲み食いして騒いでいた

「…すごいな」

そんな彼らに変に関心しながら、カウンターのダイアンの所まで行く


「お、大将待ってたぜ」

ダイアンは左腕を吊った状態でクラウスを出迎えた

「遅くなってごめん、てか、どうしたのそれ」

「どうって、んなのニゲラでやったに決まってらぁ」

大型の魔獣が建物を壊した時に、巻き込まれたらしく

そのまま、その魔獣の討伐を手伝ったせいで重度の魔素中毒まで患い

大変な目にあったとダイアンは笑った

「教会で奇跡は受けないの?」

「アレ1日あたりの定員があるだろ

アタシは怪我も痛みも慣れっこだけど

普通の領民はそうじゃねーだろ」

教会で受けることが出来る“回復の奇跡”という魔法は

治癒力を格段に高め、怪我の全治を何倍にも早めてくれるのだが

術者の魔力には限りがある

まだまだ、ネフロイトの街にはこの奇跡を必要としている領民が沢山いた

「アタシらはタフだ!そうだろ野郎ども!」

さっきまで好き勝手に騒いでいた冒険者達は、ダイアンの号令に合わせ

オー!と雄叫びをあげた

その身体には、皆何処かしら怪我を負っている


「…そうか…すまない

早急に被害の見積もりを出して修繕に当たろう」

「あ、大将ちょっと待て

その…もう一つ話があるっていうか…

場所を変えて話がしたい」

モジモジするダイアンを見て、クラウスは直ぐにでも帰りたくなったが

さっきの話を聞いて無碍にすることも出来ず、渋々承諾した


ダイアンとやって来たのは小洒落たカフェ

彼女はクラウスに何か聞く前に

ブラックコーヒーを二つ購入すると、テラス席に移動した

「ほら、アタシの奢りだ」

「んー、うん、ありがと」

ブラックコーヒーを受け取り座る

そして、ダイアンが話し出すのを待っていたのだが

彼女はモジモジするばかりで、中々話が始まらない

「…あのね、ボクまだ仕事が山積みなんだけど」

「まっ!こういうの慣れてねぇんだよ!!

ああっクソっ!…アタシさ…ディオに告白しようと思うんだ…!」

両人差し指をツンツンしながら、顔を真っ赤にして彼女は言った

その言葉に何とも言えない表情を浮かべクラウスは暫く無言のままコーヒーを啜った


「ーいやなんか言えよ!!!」


応援するとか、アドバイスするとか、何かあるだろうと憤慨するダイアンに

クラウスはうーんと唸った

「ディオはやめた方がいい

というか、ダメだ」

「は?何がだよ!ダメって何だよ!!」

「どうしてディオなのさ

男ならそこら中にいるよ?」

クラウスの言葉に激怒したかと思えば

また乙女モードに入ってディオの良さについて語り始める

「ディオは強い…ギルドのどんな奴よりも強くて勇敢で…顔がイイ

冒険者にも強くて勇敢な男がいるって思うだろ?

ディオはあんなゴロツキとは違う

優しくて礼儀正しさも備えてる…

しかも、カッコいい…顔がすげぇ好み

そ、それに、アレが2本あるんだろ?///

つか、どタイプに告白するのの何がダメなんだよ!!」

クラウスは、はぁーと長いため息吐いた

「ディオは獣人の男性だ

彼と結ばれても子供は望めない

世間の目は非常に厳しいものになる

… ほら、獣人で男だから

同性なんてよくない絶対ダ…ぶぁっ!?」

激しい衝撃を受けクラウスの体は椅子と目の前のテーブルごとひっくり返った

強かに背中を打ちつけ悶絶していると、彼の身体がグッと持ち上がり

胸ぐらを掴まれた状態の彼をダイアンが睨み上げていた

「てめぇ、それはつまりなんだ

アタシがおとこ女だっていいてぇのか?え?」

「ちょっ待って苦しッ…死ぬッ」

ぱっと手を離され、地面に落ちたクラウスはゲホゲホと咳き込んだ

「次言ったらぶっ殺す」

中指を立てて突きつけ、飲み終えたコーヒーの紙コップを彼に投げつけたダイアンは

地面を揺らす勢いの足音を立てながら去っていった

店からは店員が飛び出して来て

クラウスのことを心配しながら、倒れた椅子やらを片付けてくれている

(ボクは一体どうしてあんなことを言ってしまったんだ…)



庁舎から4日後にエドアルドの予定が空く旨を鳩が伝えに来た

プルーデンはワクワクしながら、何かお土産でも買って帰ろうと市場を歩いている時に

学舎帰りのミーティアと偶然出会した

「あれ?お買い物?」

「ええ、お土産を買って帰ろうと

4日後にスケイルメイトに一度帰るので」

「お、そうなんだ…寂しくなるね」

またすぐ戻って来ますよと笑うプルーデン

ミーティアにオススメのお土産なんかを聞いて2人で市場をぶらぶらと歩いた

「…そういえばさ

最近、ディオの元気がないんだけど何か聞いてる?」

魔女狩りに出ても、技にキレがなく

危うい場面も何度かあるんだと不安そうに話す彼女に

プルーデンは思い当たる節があれど伝えるべきか悩み

本人に聞いてみるのがいいのでは?

なんて、変なアドバイスをしてしまった


そのまま、適当なお土産を買って家に戻る

すると、家の中からラビッシュの叫び声が聞こえて2人は顔を見合わせた

「おいラビッシュ!近所迷惑だ…」

「ミーティア!!お前からも何とか言ってくれよ!!

やめろ!やめてくれって!ディオ!!」

その唯ならぬ叫びに、2人は慌てて声のする方へと走る

そこでは、ディオが机に突っ伏すように泣きながら自分の腕に噛みついていた

彼の鋭利な歯で、裂けた皮膚からは血液がとめどなく流れ出している

「ディオ!何やってんだよ!?

血が出てるじゃん!!」

「ああっ大変だ…!」


3人が必死に呼びかけて、やっと口を離した彼の腕は

噛みついていた部分が千切れかけていた

「何でこんなことした!」

ラビッシュは怒鳴るばかりで

ディオはごめんなさい、ごめんなさいと謝ることしかしない

これは良くないと、プルーデンは間に入り

ラビッシュをミーティアに任せてディオを部屋に連れて行った


「…どうしたんですか?

もし話せるなら聞かせて下さい

無理に話さなくてもいいですから」

「俺、聞いちゃったんです…

クラウスさんが…ダイアンさんと…ゔーっ」

また泣き始めた彼の背をさする

「クラウスさんっ…獣人で男は…同性はダメって…うーうぅっ」

「ああ…ディオ、聞いて下さい

4日後に私はスケイルメイトに帰ります

…一緒に来ませんか?」

「でも…俺…」

「あなたの代わりに魔女を狩れる人員は用意します

領主様から一度離れてみませんか?

広い世界を見てみたら、何か変わるかも知れませんよ

何もスケイルメイトに永住しろと言っているわけではありません

帰って来たくなったら帰ればいいのです」

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