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ゴミの価値

それはニゲラが始まって5日目のこと

今日も真っ暗な中、ゴーレムと協力しながら

果樹園を魔物から守っていたラビッシュは

ゴーレムの数が減っているのに気が付いた

「あれっ…アイツらもう3体くらいいたよな」

ラビッシュが守っている果樹園の辺りには

全部で7体のゴーレムが配備されている

それが、いつの間にか4体しか見えるところに居ない

もしかしたら、見えないところに居るだけではと思ったが

その原因は割とすぐに分かることになる

ラビッシュの視界にいた、ゴーレムの一体が

何かに反応してそっちの方へと向かって行った

何だ?と思いその後を追う様に果樹園から道に出る

ゴーレムは何か人影の様なものを追ってどんどんと離れて行ってしまう

「…はぁ!?何処行くんだよ!テメェの持ち場ここだろオイ!」

叫んだところでゴーレムには届かない

訳が分からないと、果樹園に戻ろうとして愕然とした

さっきまでそこをウロウロしていた

残りのゴーレムも、別の方向へとどんどん遠のいて行くのだ

「オイオイオイオイ!!??」

突然のゴーレムの暴走に、ラビッシュは混乱し

その場であたふたと走りゆくゴーレム達を交互に見る事しかできない


そんな時、果樹園の方から

複数の足音が耳に届いてラビッシュは耳をピンと立てた

「何だ…!?何なんだよ!」

慌てて果樹園に飛び込むと、そこには10人程のフルールが居て

大切なグロウシードをむしり取っていた

「おいテメェら!何してやがる!!

止めろ!勝手に取るんじゃねぇ!!」

ラビッシュは叫びながら走って行く

4人のフルールがそんな彼の前に立ち塞がった

「はぁ?お前どこの群れの奴だ?

ここは俺らの縄張りだぞ

食い物が欲しいなら別でやれよ」

「ほら、帰れチビ、さもなきゃどうなるか分からないぞ?」

肉食ベースのフルール達に囲まれ見下ろされたが、ラビッシュは怯まなかった

「ふざけんな!ここはメネンデス果樹園だ!

この土地もブドウも全部、メネンデスのおっさんの物でお前らの物じゃねぇ!!」

啖呵をきったラビッシュの背後に立っていた

フルールの男が、石で彼の後頭部を殴りつけようとした

しかし、普段魔女と戦っているラビッシュにはそんな攻撃はお見通しである

素早くしゃがみ込み、男達の間を抜けるなどお手のものだった

「…チッ、同胞だから警告してやってんのに!言葉は通じるけど話が出来ねぇっての分かったわ!」

ラビッシュはズボンのポケットからナイフを取り出し、自分より大きなフルールの鼻面を切りつけた

「ぎゃぁっ!テメェ!!ぶっ殺す!」

その場にいたフルール達が、一斉に襲いかかってきた

いくら魔女を討伐するパーティーにいるとはいえ、多勢に無勢である

1人で複数人にボコボコに殴られながら、複数人をボコボコにし返すくらいにはラビッシュも負けてはいなかった


そうやって殴り合いを暫く続けていると

奥の方からまた別の人影が数人近付いてきた

「おーい!新人ども!ぶどう取るのにどれだけ時間かけてんだ?

待ちくたびれて来ちまったじゃねぇーか」

両脇に強そうな犬ベースの男を連れ

ハイエナベースの男が怒鳴りながら歩いてくる

ラビッシュはその声に聞き覚えがあった

「おい、何やってんだお前ら」

ラビッシュを追いかけていた、フルール達はビクッと身体を震わせると

尻尾を丸め、その場に直立不動に立つ

「こ、このよそ者が邪魔を…」

「はぁ?こんなチビに手こずってんの?」

睨まれたフルールは分かりやすく震えている

「…てめぇ…キングだな」

「あ?誰、お前…」

「忘れたとは言わせねぇ!俺ぁラビッシュだ!テメェでつけた名前だろ!!右も左も分からねぇ俺をよくも騙したな!」

キングはしばらく考える様な素ぶりをした後、ああーとニヤついた

「俺はな、使えそうにない奴にはみーんなラビッシュ(ゴミ)って付けてんだ

お前は自分で出したゴミのこと一々覚えてんのか?ねぇよなぁ?」

キングはゲラゲラ腹を抱えて笑う

「そうかよ…そんなお前がゴミって付けた奴が今じゃ

人間の街で市民権もらって豪邸に住んで

毎日豪華な飯食ってるってのに

お前は相変わらずコソコソ泥棒とは惨めだなぁ?キングさんよぉ」

キングの目の色が変わった

「ラビッシュの分際で…2度と口を開けなくしてやる」

どけ!と両隣の犬男を押し除け、ラビッシュの目の前まで来たキングは

ラビッシュの首を両手で締め持ち上げた

そして、鋭い牙の並ぶ口で頭部を噛むと、亀の甲羅も噛み砕く強力な顎で

彼の頭を砕くために、万力のように力を加えた

ラビッシュはこの間合いを待っていた

隠し持っていた錆びたフォークをキングの左目に深く突き刺したのだ


果樹園に絶叫が響く


キングは錯乱しながら目に突き刺さったフォークを抜き取ろうとし

周りの犬男達がそれを止める

「ぐぁあああっがぁああっ!!!

クソっ!このゴミがぁあああ!!!

許さねぇ!必ず後悔させてやるぅうう

覚えてろよぉおお!!!」

捨て台詞を吐き、キングとその取り巻きは果樹園から逃げて行く

「おう!両目失いたくなけりゃ

二度とくんなよ!!」

ラビッシュはその後ろ姿にケタケタ笑いながら野次を飛ばした

「…ハハ!やってやったぜ…」

フルール達が居なくなり、ラビッシュは後ろに倒れるように寝転んだ

「ディオちゃ〜ん!パンダちゃんなんだけどぉ…」

2人と交代しようとエマは外へ出てきてたらしいのだが

別の農園を見回っていたディオの元へ小走りにやってきた

「酷い怪我をしててねぇ、回復の奇跡を受けられる教会に運んだわぁ」

「そ、それって、大丈夫なんですか!?」

彼女が言うには、メネンデス果樹園に声を掛けに行ったところ

ボロボロになって地面に倒れているのを見つけたのだという

「命に別状はないわぁ

ただぁ、戦えるようになるにはぁ2〜3日は掛かるみたいよぉ?

あなたは…大丈夫ぅ?」

そこら中を血で赤く染めたディオを見て、エマは不安そうに言う

「俺は大丈夫です、あ、これ返り血で…

さっき窃盗団が来けど、全部片付けました」

「あらぁ…」

おそらく、幾つかの窃盗団が申し合わせて襲撃に来たのだろうというのがディオの見解だった

「その…すみません

農作物に多少被害が出てしまいました

数人は死なない程度に痛めつけてから逃したので、当分は来ないと思います」

「いいのよぉ、そもそもぉ

いつもなら農作物全滅だからぁ」

雑談をしていた2人の所へ、ダイアンがやって来くる

「ディオ!お前の仲間がヤられたって聞いたぞ!」

「えっ!ダイアンさん、ニゲラですよ!?

人間は外に出たら危ないです!!

俺が全部やるんでみんなは安全な場所にいて下さい!」

「あ、アタシのこと心配してくれるのかよ…///

けど…ほら、お前1人に背負わせるのは違うだろう?

一先ず、仲間が良くなるまででも

お姉さんもお前のために…な

つっても、アイテムでゴリ押ししてギリ2時間居られるくらいだからアレだけどさ」

両手の人差し指をツンツンと胸の前でつついて、ダイアンはもじもじとする

「ディオちゃん?ベルタちゃんもぉ

自分のアトリエで、壊れたゴーレムの補給とか強化とかずぅっとしてるのよぉ

戦い方は人それぞれだけどぉ、みんな一緒に戦ってるわぁ

だから、1人で背負いすぎないでぇ?

あなたはワピチにとって大切な人なのよぉ?」

少しでも身体を休めて、とエマは微笑んだ


ディオは2人に深々とお辞儀をして

休憩を取ることにした

帰り道、ちょっとした花を摘んでホルツマン邸に向かう

そして、クラウスの部屋のバルコニーから窓越しに彼の優しい笑顔を見て帰るのが

何となくディオの日課になっていた

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