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空の行商民族

ハダルがディオ達の邸宅に上がり込んでから数日

そのハダルが、ネフロイトの庁舎を訪れた

「いらっしゃ…調子はどう?」

応接室のソファに座るハダルに、声を掛けながら向かいに座るクラウス

「ええ、お陰様で今日にも空を飛べそうです」

ミノバトC型だと思われる彼は、哺乳類と比べ表情は読み取り難いが

リグマンよりも声に感情が乗るらしく

その声音から、少なくとも悪い感情を持ってはいないという事が汲み取れた

「それで、今日はどんなご用件で?」

「領主様が私に持ち掛けた“取り引き”の話をしたく参りました」

ボロボロの彼がネフロイトに運び込まれた時

ディオに頼まれ、彼の治療を行い

今日まで街に留まり自由に過ごして良いという許可を与えていた

大切なパートナーの頼みだからというのも勿論あるが

領主として、ワピチにとって有益な取引き先の開拓をも目論んでいた

「…それはつまり、検討してもらえたってことでいいです?」

メルザーガ人は、自分達こそが気高く最高の人種であるとして

その他の人種を見下している節があるため

初見では対等な取り引きが難しい相手である

以前、農作物の新しい取引相手として考えた事もあったのだが

自慢の作物を二束三文で買い叩かれそうになって辞めた事があった

あの時は縁もゆかりもないただの客だったが

今のクラウスはハダルの恩人である

「ええ!私はココが気に入りました

これからはネフロイトを行商ルートに入れようと思います

…もちろんお友達価格で」

歌うようにハダルは言う

これは好感触だと、内心ガッツポーズを取りながらもクラウスは務めて冷静に礼を述べた

「行商ということは、ネフロイトに定住するつもりはないってことだね?

ラビッシュの事があるから、君が望めば市民権を渡そうかとも思ったのだけど…」

ミーティアの話から、確実に2人は番になったのだと思っていたクラウスだが

それを聞いたハダルは、瞳孔を広げて明らかに苛ついた様子で嘴を鳴らした

「ゴミパンダとはさっき別れました!」

「あっそうなの?それは失礼…「聞いてください!!あいつはパートナーとしてはクズだ!!」


他人の知情の絡れなんて好んで聞きたい話ではないのだが

彼はお構いなしに何があったかをクラウスにぶちまけた

興奮し過ぎて所々何を言っているか分からないところはあったものの

要約すると、ラビッシュはただヤリたいだけで

パートナーとしての勤めを全くはたさないクソ野郎だということだった

「…それは怒って当然だ」

大事な取引が彼のせいで頓挫したら、どう締め上げてやろうかとも思ったが

どうやらその話とこの話は別なようで

ただただハダルは愚痴を吐き出す

「そうでしょう!?

私は、私は…汚物に塗れた私の羽を、丁寧に優しく拭いてくれたから…

この人は汚らしいフルールではなく、素晴らしい人なのだと思ったのに…!!

やっぱりフルールはゴミ屑ですよ!!」

(それはそう…)

フルール嫌いなクラウスは口から毒が漏れそうになってキュッと口角を引き締めた

今度はめそめそ泣き始めた目の前のハダルに取り敢えず寄り添っておく


その日のうちにハダルは母国、ガーデンホープへ飛び立ち

ミーティアも自分の家に戻れる事になった

メルザーガと対等な取引きの約束も取り付け

万事解決とホクホクして退勤したクラウスだったが

彼より少し後に帰ってきたディオの様子がいつもと違う事に気が付く

いつもは私室に戻って来ると、一番に自分の元に来て抱きついたり

甘えるようにクラウスの手に頭や頬を擦り付ける彼が

今日は向かいのソファに腰を下ろし、視線を床に落として目を合わせようとしない

(あれ…?ボク何かしたか?)

知らぬ間にディオの気に触るような事をしたのだと思い

問いかけようと声を上げると、彼も同時に声を発して2人は口を止めた

「あっごめん、何?何だった?」

「い、いえ、クラウスさんこそ…」

お互いが譲るので埒があかない

「ああっ分かったじゃあボクから、様子がいつもと違うからどうしたのかと…」

「あ…その…それなんですけど…

クラウスさん…俺と居て我慢とか…嫌な思いとか、してませんか…?」

「…なんで?全くしてないよ」

キョトンとするクラウスを見て、ディオの表情が少し緩んだ

「その、ラビッシュとハダルの事で…」

ディオは今日、普段のパーティーでネフロイトの北側にある街の境界柵の整備と

街の外側にある農園の警備に行ったのだが

その時にハダルとの破局を聞かされたという

「ラビッシュはその…

シたらそれで終わりというか…彼にとってはそれが番ったって事みたいで…」


初めて交わった日から数日はラビッシュもハダルを気に掛けていたようだが

その数日が終わると、ラビッシュの態度は元の素っ気ないものになったようだ

そんな彼の主張としては、男というものは子孫を残すために次から次に新しい女を抱くものだといい

番の男としての役目はちゃんと果たしたと主張した

「そもそもよ!アイツ男なんだぜ!?

一日中何日頑張ったてガキも出来ねぇぞ!?

俺にこれ以上どうしろってんだよ!」

というのがラビッシュの言葉

ハダルはラビッシュと、2人で食べる食事の準備や家事などの生活を共有したかったのだろうが、こんな感じなので

早々に愛想を尽かされたという訳だろう


「…これって…ベースとか、種の違いのすれ違いですよね…?

だから…俺たちは…俺は…クラウスさんの負担になってないかって…

俺が気付いてないだけで嫌な思いさせて、嫌われて…たら…」

2人はリグマンと人間の番である

自分達も実はすれ違いが起きているのではないかと不安で仕方がないようだった

「おいで」

クラウスは両手を広げ、暗い表情のディオを呼んだ

「甘えてくれる君を気の済むまで撫で回すの、ボクも好きでやってるんだよ

君が嫌じゃないなら…ここにおいで」

ディオはおずおずとクラウスの所へ行き、その腕の中にゆっくりと身を寄せた

「…大丈夫、安心して

ボクは君が大好きだ、愛してるよ」

ディオの背中を子供をあやすように優しく撫でてやる

「お、俺も…!愛してます!

貴方無しでは生きていけません!!」

「ふふ、ありがとね」

それにしてもと、ディオを撫で回しながらクラウスは言葉を続けた

「君の所のフルール、同性とそういう事をしそうに無いと思ってたんだけどね」

「…はい…陰茎が付いてるは嫌だって言ってました…

だから俺もアレ?って思ったんです

そしたら、C型のメルの男性には付いてない事が多いみたいで…」

鳥類ベースのメルザーガは、鳥類の特徴が強く発現している

その為か、獣寄りの型であるほどに

外性器を持たない男性が多いのだとか

本の読めないディオは、ミーティアを頼ってメルザーガについての本を読んでもらったのだが

お陰でラビッシュとハダルの関係がより生々しくなってしまい後悔したと

髪をくしゃくしゃになるまで撫でられたディオは笑った

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