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未練がましい男

日の光に青や緑に輝く羽を纏い

ネフロイトの大通りを歩く1人のメルザーガ人

数日前にディオのパーティーにより、盗賊団のアジトから救出された

ガーデンホープの行商人であるハダルは

ネフロイトでちゃんとした治療を受け、まだ飛ぶことは出来ないまでも

1人で歩き回れるまでには回復を遂げていた

行商人ということもあり、社交的なハダルは目立つ体色と種族という事で

良くも悪くもネフロイトでは話題の人物に…


そんなハダルは今日もある一軒の邸宅の扉を叩くのだ

「…んだよ!毎日毎日!!」

「ラビッシュ、会いたかった

今日も君は素敵だね!!」


そんな日の午前、街に程近い農園を荒らす

魔物への対応を依頼されたディオ達は、ネフロイト東の街の境界で待ち合わせていたのだが

やって来たラビッシュがくたびれていたので

ディオはどうしたのかと聞いた

「どうもこうも…この前助けたメルが毎日付きまとってきてうぜえんだよ…

ここに来る前も絡まれて、いい加減疲れた」

「ハダルだっけ、嫌われる事はあっても好かれる事なんて殆どないんだから良かったじゃん」

ミーティアの辛辣な言葉にラビッシュは鼻の頭に皺を寄せた

「俺はな…!女が好きなんだ!!

あのメル、男だぞ!?毎日毎日凝りもせずに男相手に愛を囁きにくるイカれ野郎だぞ!?」

「そ、そうだよね…

同性に恋愛感情を抱くなんて…変だよね…」

思わぬところでディオに被弾してしまい、ラビッシュは慌てた

「ちっ違う、お前に言ったわけじゃ…!

お前らはそれで良いんだろ!?

けど俺は女が好きなんだってば!!

ちん◯こなんか付いてるやつにその気になんてなれっかよ!!」

「まあ、放っておけばそのうち諦めるんじゃない?」



はたして、ハダルは次の週にはラビッシュを訪ねて来なくなっていた

翼が治らないので、まだネフロイトに滞在していたが

露店のとある女性を口説く場面が、度々目撃されるようになっていた


その日、新しいグローブを探して市場に出て来ていたディオとラビッシュは

丁度女性を口説くハダルを目撃する事になった

「…よかったね、付き纏いがなくなって」

熱烈な愛の言葉を迷惑そうな女性に語りかけるハダルを見て、ラビッシュはさぞホッとしただろうとディオは一安心した

ラビッシュ自身もこれで心が休まる

と、思いきや

何故か沸々と怒りのようなものが腹の底から湧き上がってきていた


「…んでだよ…」


防具を売る露店へ歩みを進めていた筈が

ラビッシュは立ち止まり付いてきていない事に気が付きディオは振り返る

「どうしたの?」

「ーお前は俺を好きなんじゃねぇのかよ!?」

止める間もなく、ラビッシュは女性を口説いていたハダルに掴みかかっていた

その気迫に露店の女性は逃げ出し、辺りは騒然となる

襟元を掴まれ引っ張られたハダルは目を丸くし驚いたまま

牙を剥き出し唸るラビッシュを見た

「来なくなったと思ったら

ファーレスなんかにマジで言い寄りやがって!」

「君は私を受け入れてくれなかったじゃないか…

番いでもない君にとやかく言われる筋合いはないと思うが!?」

「んなこと…!!」

ハダルの言う通りである

ラビッシュは彼にとって何者でもない

彼が他の誰かを口説くのを咎められる立場にはないのだ

それはラビッシュ自身も分かっているのに

無性には腹が立って仕方がなかった

「ラビッシュ…!お願い何もしないで!!」

ディオはラビッシュがハダルに暴力を振るうのではと思い

何とか事を納めようと隙をみて彼を一撃で落とそうと考え走り寄る

露店の商人や領民達は、この騒ぎに狼狽え遠巻きに様子を伺っていた


「…もしかして、妬いているのかい?」

ハダルは目をぱちくりとさせ、黒い瞳にラビッシュを映した

「…は?…何を…!」

ラビッシュが怒りのまま罵詈雑言を浴びせようとした瞬間

マズルを飲み込むようにハダルに咥え込まれてしまい、んぐっ!?と変な声を上げた

「待って!!悪いのはラビッシュだけど!!」

ディオはハダルが反撃したのだと思い

彼のマズルが千切られる前に止めなければと、2人を引き離した


「ラビッシュ!大丈夫!?」

引き離されたラビッシュは、その勢いのまま尻餅をつき

ビックリしたような顔のままディオを見上げた

「…お、おう…」

一方ハダルは目を細くしてラビッシュを見つめる

「私はあなたにフラれたのだと思っていました

…私があの女性を口説くのを咎めるということは、私を受け入れてくれるんですね?」

彼の声には怒りの感情はなく

愛おしそうにラビッシュのマズルを優しく啄んだ

「…今夜、伺いますね」

ハダルはそう言うと、唖然とするラビッシュに微笑み

ディオに軽く会釈してその場を颯爽と去っていったのだった


日が落ち、辺りが暗くなった頃

ホルツマン邸の玄関扉を叩く者がいた


「急に押しかけちゃってごめんなさい」

「大丈夫だよ

ボクが出てきちゃったけど、多分ディオに用事だよね?呼んでこよう」

「あ、いや、うーん…

今日は領主さんに相談が…」

使用人によって客間に通されていたのはミーティアだった

報せをうけてきたクラウスは、こんな時間の珍しい訪問者の為に茶菓子を用意する

「ボクに相談?えーなになに?

どしたの?おじさんに対応できそ?」

向かい側に座ったクラウスに、ミーティアは本当に申し訳なさそうにこんなお願いをした

「あの…今日だけでいいので、泊めてもらえませんか…?

物置部屋とかそんな部屋で大丈夫なので…」

「ああそんな事?急で驚いたけど歓迎するし、ちゃんと客室を用意させてね

…でも、君の家はどうしたんだい?」

ミーティアにはクラウスがディオのパーティーに与えた立派な邸宅がある

それなのに泊めて欲しいというのだから

クラウスはその訳を聞いた


ミーティアは苦虫を噛み潰したような表情をしてから、非常に言いづらそうにポツポツと家に居られない理由を話した

「ハダルが家に来て…」

「君達が助けたメルザーガの人だね」

「その…ラビッシュとハダルが…煩くて…」


予告通り夜になってラビッシュを訪ねてきたハダルは、それまでしてきたように

ラビッシュを延々と口説き始めた

いつもと違ったのはラビッシュの態度

今までは怒鳴り散らし追い返していたが、彼を家に入れ

ラビッシュはそのまま彼の好きにさせていたらしい

「家に帰ってきたら食堂に2人が居たんだけど…イチャついてて…

ラビッシュに部屋に行けって怒ったら、部屋に行ったんだけど…もう煩くって…」


“何が”とは言わないが、どう煩いのかは何となく想像がついてクラウスは顔を歪めた

「それは…災難だったね…」

「ごめんなさい」

「まあ、ゆっくりしていきなさい」

謝ることはないとミーティアに言い、彼女の為に部屋を用意させクラウスは自室に戻る


「クラウスさん、ミーティアは…」

部屋で待っていたディオは、一体何の用事で仲間が来たのか気になるようで

ソワソワと落ち着きのない様子で彼の元へ歩いてきた

「ああ、ラビッシュの事でね」

「ラビッシュが何かしましたか…!?」

「あ、いや…何か悪さをしたって話じゃなくて

メルザーガの人が家に来てるから

落ち着いて眠れる場所を貸して欲しいって話だったよ」

ディオは言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かったらしく

え?という顔から徐々に居た堪れないと言ったように表情を変えた

「…な、なんかごめんなさい」

「ああ気にしないで?

しかしそうだなぁ、世帯を持つとなると住む場所を分けた方が良さそうだ

年頃の女の子への配慮なんて、あのフルールがするとは思えないしねぇ…」

クラウスとしては、ラビッシュ個人にあの邸宅を与えるのは気分が良くはなかったが

メルザーガの商人であるハダルに取り入って貿易の幅を広げたいなんて思いもあった

「…あの娘もここに住むぅ?」

「え、良いんですか…?」

「まあ、部屋は余ってるし…

君の妹分の彼女ならボクは構わないよ」

そう言うと、ディオは少し嬉しそうにした

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