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prologue~1

2010年 12月24日、イブの朝。

冷たい風の吹き抜けるニューヨーク、マンハッタン。

グリニッジビレッジにあるワシントンスクエアパークを望むホテルで、僕は窓を開け 冷たい冬の朝のマンハッタンの風を受けた。

冬晴れだ。

夕べは強行日程で訪れたこの旅のスケジュールの疲れもあったせいか 久しぶりにちゃんと眠れたようだ。

日本に居る時はどうしても仕事のことが頭から離れず、つい睡眠時間も減りがちで睡眠不足の日が多い。

何杯かのコーヒーを体に流し込んだ後 ルームサービスで軽い朝食をとり、身支度を済ませ着替える。

ジーンズにブーツを履き Tシャツの上には厚手のシャツ。

街の音が聞こえる。

クリスマスシーズンのニューヨークの街の音。

それから僕はまたコーヒーを飲み 分厚いダウンジャケットを手にして、部屋を出た。


ホテルから出た直後にタクシーを拾い ロウアーマンハッタンへと向かう。

ブロードウェイやソーホー、トライベッカ、キャナルストリートを横切る。 

トリニティ教会が見える。 

合衆国裁判所を左手に望み市庁舎前。 ここを左へ折れればそこはブルックリンブリッジだ。

そして あの忌まわしい9・11の舞台となったワールドトレードセンター・・・20年前も10年前もその栄華を自ら称えるかのように立ちすくんでいた巨人。 

今は悲劇の場所、そしてこれからは新たな希望の象徴として生まれ変わるのだと 『そこ』へいくために拾ったキャブのドライバーは話す。

たとえツインタワーが消えても 全てが思い出に包まれている街、ニューヨーク。

ロウアーマンハッタンのボーリンググリーンの手前あたりで僕は車を止めてもらった。

すぐそこは バッテリーパーク。

歩く。


クリントン碧国定記念館の前を通り 一息をつきながら海沿いに立つ。

目の前には冷たい風を運ぶアッパーニューヨークベイ。

その先には・・・カヴァナーズ島とエリス島。

そして・・・リバティ島。

ほぼ30分おきに巡回されるリバティ島へのフェリーのチケットを購入し乗り場へと向かった。

時刻は12時を過ぎていた既に長蛇の列。 その横では大道芸人が芸を披露している。

なにもかも あの頃のままだ。

やっとフェリーに乗れる時間になり 僕は船内の野外デッキの椅子に腰掛けた。

クリスマスシーズンということもあり デッキは大勢の観光客や記念写真を撮る人々で溢れている。

ゆっくりとフェリーが動き出す。

背後にはゆっくりと遠ざかっていくマンハッタン。



(なんだよ、お前・・・

 さっきからずっと見てばっかでさぁ・・・)


『だってぇ・・・』


愛おしい笑顔を浮かべていた彼女。


(どうしてもここに連れてきたかったんだ。

 この場所で お前にどうしても話したいことがあるんだ)


『うん・・・』


手を繋いだあの日。

僕の話を聞き 全てを受け入れた上で 彼女は言った。


『10年後 またこの場所で逢いたい・・・』


『“ 運命 ”・・・レイは信じる?

 あたしは・・・信じてる。

 だって・・・レイに出会えたことは “ 運命 ”だと思ってるから』


あの時君は泣きながら 無理に作った笑顔で僕の手を握りながら話した。


フェリーはリバティ島へ到着した。

僕にとっては3度目の“ 自由の女神 ”の前だ。


21歳の頃 僕はこの街を訪れ、そして1年近く滞在した。 それが初めてのニューヨークだった。

その頃 僕は この島へ訪れ、あえて自らの意思で“ 自由の女神 ”へ登ることをやめていた。

33歳の頃 僕は再びこの街を訪れた。 まるで嵐のような渡米期間だった。 わずか4日の滞在。

その時に僕の隣には彼女が居た。 しかし “ 自由の女神 ”へ一緒に登ろうと言う僕の提案を彼女は断った。

彼女は10年後にまた会いたいという約束を僕に残した。

そして・・・。


43歳。 あれから10年・・・。

長いようで短かったこの10年。

それでも ただ一瞬ひとときも 君を忘れることなかった。

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