表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第4話

「どうやって、僕と馬車と荷物を運ぶんだ?かなりの重さと大きさがあるけど……」


「えっと。こうするの」


 彼女は手をかざし、魔法で空中に何か穴をあけた。


 そして、穴を広げ、ワームホール的な異空間を開いたかと思うと、そこに馬車と荷物を全部吸引してしまった。


「なにこれ……すご……」


 あんぐりと口を開けて、驚くしかなかった。一瞬のうちに僕の馬車と、荷車に積んであった大量の箱と荷物が消えてしまったのである。


「私の時凍庫にいれておけば、大丈夫。で、後はエストだけど」


 と、彼女はこちらに振り向いて、楽しそうな笑顔で。


「私が羽で飛んで、エストを抱えるの。これですぐに移動できるよ」


「……必然的に、お姫様抱っこじゃないか」


 羽があるので、おんぶの恰好はできるかもしれないが、キツそうだ。そうなると、お姫様抱っこをするしかない。


 まさか、女の子に逆にお姫されるとは。想像したら、顔で加熱できそうなほど赤くなってしまった。


「せめて。せめて、君の名前を教えてくれないか。そういえば聞いてなかった」


 名前も知らない女の子に、お姫様抱っこされるなんて、どんな罰ゲームだ。せめてもの抵抗に、名前だけでも聞いておこう。


「フリーデルだよ。エストの家はどっちかな?」


「フリーデルね。家はここから南西……あっちだな」


 方角を知らないかもしれないので、指で場所を差す。


「じゃあ抱えるね、エストっ」


 少し声が跳ねている。楽しそうである、この娘。


「よろしく……はずかしいなこれ……」


 彼女は僕を抱え、空を飛び始めた。


 急速な上昇に、強い風を体に浴びせられていく。


「うおぉ……怖いな」


 頭をフリーデル側から、空側に向けると、森と山を上から眺める形になっていた。


 高所恐怖症ならすくみあがること間違いなしだが、僕はなんて贅沢な光景だと思った。


「これは……すごい光景だ。綺麗だな、森を上から見るのって」


「うん。綺麗でしょ。私しか見られない光景だから、エストにも見せたくって」


 確かに。そいつはありがたい。


「嬉しいよ。でも……」


 彼女は僕を信用しすぎではないだろうか。もし、こんな調子で人を信用していたら、すぐ悪い奴に騙されそうである。


「まだ知り合ってすぐだぞ?僕の評価ポイントなんて、君からすれば、君を怖がらなかったことだけだろう?なんでこんなに信用してくれるんだ?」


 抱えられながら、頭を上に向けて、彼女に聞いた。


 彼女は顔をこちらに向け、陰りのある笑顔を見せ。


「……私を怖がらない。それが、世界でたった一人。エストだけだからだよ」


 と、言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ