NO3 前途多難
「──まま待ってくれ」
内心の動揺を一切見せない感じで、極めて冷静を装い俺は白熱しているパーティーメンバーに割って入る。ちょっと噛んで失敗したが。
「こここいつに悪気はないんだ、赦してやってほしい」
磔にされ、今にも処刑されそうになっている勇者とパーティーメンバーの間に割って入り、頭を下げる。
何故に俺がこんな真似をしなくてはならんのか──勿論、勇者の為ではない。
このまま仮にも勇者が追放されてしまえば、俺がナンバー2になれないからヤバい。ただただそれだけである。
「確かにこいつは好き放題やっている。しかし、それらは全てきっとたぶん意味のある事だ。考えてみてほしい──神に選ばれし勇者たる者がそのような行いを意味もなくするだろうか? きっと意味がある……俺はそう信じている」
勇者を庇う理由が皆無すぎて自分でもなに言ってるのかわからなくなってしまったが……俺は必死に訴えかけてみる。最後の『勇者を信じている』というのは(ナンバー2の台詞っぽいんじゃね?)と内心ちょっと興奮しながら。
「ツウ君……」
「ツウ………」
「ツウ様……ですが、この男は貴方をパーティーから追いやろうと画策していました。赦すわけには………」
「ああ、大丈夫だ。こいつとは子供の頃からの付き合いだって言ったろ? 昔から同じような事をされてきたから、仲間外れとかな。きっとそんな感じの遊びの延長上な感覚で言っただけだろう。軽い冗談ってやつだ」
おどけて、何も気にしていない風を装いながら(実際気にしてないが)メンバーが平静を取り戻してくれるよう振る舞ってみる。
「はぁ!!? 誰が冗談なんか言うか!! てめぇをクビにしようとしたのは本………っ──」
勇者は俺の言葉に反応し、がなり声を張り上げようとしていたが──すぐに思いきり圧をとばし、睨み、言葉を呑み込ませた。
(誰のために場を取り持とうとしてやってんだバカがお前が追放されたら俺も困るんだよお前へのヘイトを無くそうとしてやってんだから黙っとけ単細胞)──と嘘偽りなく産み出された殺気を交えながら。
──っと、あまりやりすぎると良くないな。勇者が俺に萎縮してしまっては困る……そんな関係は主人公とナンバー2に相応しくない。
というわけですぐに殺気を抑えた。だが、効果はあったようで勇者は顔を青くさせながら押し黙っている。
よし、うるさいのを黙らせたし……あとはメンバーをなんとか説得しなければ。しかしメンバーは怒り顔から一転──何故か表情を曇らせ、困惑しているような顔でうっすらと瞳に涙を滲ませていた。どういう事だろうか。
「……っ……そんな………幼少時からそのような仕打ちを受けていたなんて………」
「ツウ君………可哀想………」
「……あぁ……………気づけなくて……すまなかった……」
……何の話だろうか。
もしかして『子供の頃から仲間外れにされてきた』の話を過剰に捉えてしまったのだろうか。
詳しく話すと長くなるので割愛したんだけど実際はそんな悲壮に暮れるような可哀想エピソードではないんだけど………確かに事情を知らない者から同情されるのは無理もなかった。
「ツウ、安心しろ。俺達は決してお前を迫害しないと誓おう」
「うんっ……ツウ君が喩え一人になったとしてもぼくだけはずっと一緒にいるよっ」
「………ええ、勿論です。私達は絶対に──生涯、貴方様と共に生きます」
メンバーはそれぞれが慈愛に満ち満ちた表情で俺に手を伸ばす。
いや、本来ならば仲間の優しさに触れて感動するシーンなんだけど。
パーティーが良い奴らばかりで安堵するところなんだけれど!
違う、そうじゃない。
こうやって主人公扱いのスポットを受けてちやほやされるべきはナンバー2(自称)の俺じゃなくて!!
今、青ざめた顔して磔にされてる勇者であって!!
これじゃあ俺が主人公みたいじゃないか!
「わかりました。心苦しい選択ではありますが……ツウ様の頼みとなれば、そちらにいる人の皮をかぶったクズも仲間として同行させましょう」
ヒロイン枠であるツリィは、世界を救うべき勇者を蔑んだ瞳で見ながら心底イヤそうな表情を浮かべ言い放った。
ツリィさん? ヒロインが主人公である勇者を見ながら言っていいセリフじゃありませんよ? ツリィさん?
「ぼくもイヤだけど……ツウ君が許すなら許すよ。けど勇者はぼくから半径2000メートル以上離れて。近寄ったら殺すから」
フォルルはそう言って勇者を魔法で吹き飛ばそうとしたから急いで止めた。そんなに離れてたらパーティーでもなんでもないただの他人だし? 無茶苦茶言わないでね主人公に向かって殺すとか仲間が言っちゃ駄目でしょフォルルさん?
いや、もう駄目かもしれんこのパーティー。
全部勇者が悪いんだけどさ……女子勢の主人公(勇者)への好感度マイナス値になっちゃったし……こんな初っぱなからゴミ扱いされてる主人公いる? 可哀想とは全く思わないけど……これじゃあ俺のナンバー2になる計画が企画段階で頓挫してしまう。どうにかしなければ。
「まぁ、なんだ。出だしからこんな形になっちまったけど……俺達がうだうだ揉めてても魔王の脅威はなくなりはしねぇ。ここはひとつ遺恨は一旦忘れてこっから新生勇者パーティーってことで始めてみようや。な?」
思案しているとフアーイブがいい感じの事を言って暗く淀んだ空気を振り払った。 しまった──ここはナンバー2である俺がそれをやる役目だったのに。
「……そうですね、では、宿に戻りましょう」
「うん。明日からまた野宿生活だし湯浴みしたい。帰る」
そして、メンバーは誰一人……磔にされたままの主人公(勇者)に目もくれずその場を後にした。
俺も一緒に戻ろうと誘われたが……勇者を一人このままにしておくわけにはいかないからと言って仕方ないので残って勇者を開放してやると……アホは一言も発することなく苦虫を噛み潰したような表情でうっすら涙を浮かべ聖堂から出ていった。
え、ちょっと待って、前途多難が過ぎるんだけど。
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