No.2 ツウ・バンナー
そう──俺達はそこから魔王討伐への果てなき旅路に足を踏み入れたんだ。
勇者の性格が最悪だったのは予想外の出来事ではあった……まさか転生先が普通の冒険モノではなく、『追放モノの物語』になってしまうとはな。本当ならば前世(地球)の1990年代に根付いた『王道冒険ファンタジー』モノのナンバー2的存在を目指していたのだが……まぁ転生先に文句をつけたところでもう仕様がないと片付けるしかない。
俺の志はそんな事で諦められるほど軽いものではないのだから。
昨今の異世界転生者ならば、追放された後にナンバー1になったりして追放先を後悔させるまでがテンプレなんだろうが──俺の狙いはそうじゃない。あくまで主人公組織のナンバー2でありたいのだ。
ならばどうすれば良いか──【内部から変えて認めさせる】。それしかないだろう。
幸い、このクズ勇者は転生してからの幼なじみである旧知の仲。子供のころはこんなクズではなかったのだが……勇者の神託を受けた事により変わり果ててしまった。自分が世界の中心でありナンバー1なんだと増長してしまったのだろう。
ならば、クズ勇者の目を覚まさせ、改心させ、尚且つ『お前がナンバー2だ……』と言わせ認めさせる事が今、俺に求められている責務。
……決して楽じゃあない道のりではあるが、やってやろうじゃないか。仕方ないさ……それもこれも俺が【ナンバー2】の座に就くのに必要な事。
空気を読みつつ、有能なところを見せ、パーティーに必要な人材だ、と認めさせ、尚且つ出過ぎないようにする……なんとも難題だ。
そのためにまずやらなければならないのは……リオネスのアホがメンバー達と俺を追放する仲にまで発展するのを阻むことだ。
メンバーを見る限り……非道な事をするような人柄には見えはしないが、それでも勇者の毒気にあてられて豹変する可能性は充分にある。さすがにパーティー全員が勇者に共鳴して結託してしまったらナンバー2を目指すどころの話じゃあなくなってしまう。
ナンバー2になるため、小さい頃からこの世界に存在する『パラメーター』やら『スキル』やら『魔法』やらの能力の類いは限界値まで高めてある(やりすぎ感は否めないほど極めしてしまったが……まぁ隠しておけば問題ないだろう)。
この世界に於ける『知識』や『教養』などもほぼ磨きあげた──これらを駆使してなんとかやっていくしかない。
やってやろうじゃないか、勇者パーティーのナンバー2の座に輝くために。
………
……………
…………………
そうして冒険を始めてから、おおよそ三ヶ月。
今──俺は窮地に立たされていた。
「──お前は`クビ`だ」
勇者一味であり戦士……いつも気さくで、豪快で、豪胆でありながら誰よりも優しい【フアーイブ】の冷淡なる声が聖堂に響く。
「──異議なし。仕方ない。一緒にいてとても不快」
更に、感情の起伏や口数こそ少ないが冷静沈着でありながらたまにドジを踏んでしまう可愛らしいところもあった魔法使いの【フォルル】の蔑む瞳が辺りを凍てつかせる。
「──全くです。何故、あなたのようなお方がこのパーティーにいるのか甚だ疑問しかありません」
誰よりも平等であり、清廉であり、おおらかで……聖母のような存在であった大聖女【ヒロイック・ルミエール・ツリィ】は……生涯初めて口にしたであろう愚痴を本心として露にした。
どうしてこうなってしまったのか。
俺が何か間違えたのだろうか。
俺はただ──ナンバー2でいたかっただけなのに。
皆、今までは優しかったのに。
もう、このパーティーはやっていけないのだろうか。
「──くそがっ!! てめぇら俺様を誰だと思ってやがるっ!!」
『勇者』──【リオネス・ワン】は大聖堂内部に聳え立つ聖なる十字架に磔にされ、叫んでいた。そんな声など聞こえていないかの如く、皆は続ける。
「誰よりも優しく、努力家でありながらパーティーのために良くしてくださる【ツウ】様のお手柄を全て横取りし、こき使い、進言にも耳を貸さず、挙げ句に追放しようなどと持ちかけられては流石に黙ってはいられません。追放されるべきはあなたの方です」
「全くだ、しかもはっきりいってツウはお前なんかよりもよっぽど強ぇ。そんな事すらわからねぇお前さんに勇者の資格なんざねぇよ」
「同感。ツウ君がいれば魔王も倒せる。あんたはいらない」
俺は、そんな声を聞きながら心の中では激しく動揺し、突っ込んでいた。
『勇者』が追放されそうになってんじゃねぇよ!!──と。
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