表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

女人禁制の火祭り

作者: 荒木パカ

私の地元では、深夜に火を灯した松明を持ち、山の頂上の神社を目指して駆け上がる火祭りが毎年行われている。

町を挙げて行うとても大きな祭りで、祭り当日は学校が休みになるくらいだ。

そのため、町の盛り上がりに皆浮き足立つ。

だが、女人禁制の祭りなため、たとえ小学生でも参加することは出来ず見るだけだ。

小学生の頃、それに対して怒りを露にする女の子がいた。

クラスのヒエラルキートップに君臨する、一際気が強い女の子、理恵だ。

男女平等の現代で時代錯誤甚だしい。

理恵は女というだけで祭りに参加できないことが信じられなかった。


祭り当日、理恵は火祭りにこっそり参加した。

山の頂上の神社へ行くルートは複数あり、火祭り参加者は皆、一番道幅の広い石段を登る。

そのため、理恵は石段とは別の、山道ルートで頂上を目指した。

「うおー」という掛け声と共に、真っ暗な山を松明を持った大勢の男達が駆け上がる。

いつもは遠くから眺めていたが、山側から見る姿は、まるで炎でできた竜のようだった。

この光景を見られただけでもひっそりと参加して良かった。

夜の山だから不気味な雰囲気かと思ったが、あまりに大勢の人が松明を掲げているため、結構離れているはずの理恵のいる山道もうっすら明るく足元が照らされている。

頂上の神社に近づき、松明を持つたくさんの男達の喧騒を遠くから見つめる。

まるで山の中に火の海ができたかの様な光景に目を奪われていたが、ふと、喧騒の中に泣き声が混ざっているのに気が付いた。

まるで子どもが泣いている様な声。

その泣き声は自分の後ろから微かに聞こえていることに気が付き振り向くと、地面に赤ちゃんが横たわっていた。

こんなところに赤ちゃんが放り出されているのはおかしい、近くに親はいないのかと周りを見渡すと、至るところに赤ちゃんが横たわって微かに泣いていた。

何人かは這いつくばって少しずつ理恵の元に近づいてきている。

理恵は恐怖で腰が抜け、地べたに座りこんでしまった。その瞬間気分が悪くなり嘔吐してしまった。

その嘔吐も普通ではなく、延々と嘔吐が止まらない。

呼吸がままならず、薄れゆく意識の中で最後に見たのは、嘔吐物を口にする赤ちゃん達の姿だった。


翌朝、祭りの片付けに訪れた人に理恵は見つけられ病院に運ばれた。

かなり衰弱した状態だったが幸い命に別状はなかった。

理恵は起こった事の詳細を家族に伝えると、祖母が答えた。

「あの神社がある場所はね元々は子捨て山と言って、育てられない子どもを口減らしで捨てる場所で、この火祭りは子ども達の慰霊のためのものなのよ。

今じゃ祭りの日だけが女性の立ち入りを禁止してるけど、昔は常に山に近づくことを禁止されていたのよ。

女性の立ち入り禁止が解かれてかなりの時が経つけど、あの地で死んだ子ども達はまだお母さんを求めてるのね。

山で見た赤ちゃん達は理恵をお母さんと思ったのかもね。」

女人禁制なのは理由があるということよ。

そう話を締めくくった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ