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俯瞰風景
宵闇迫る夕刻
全てを眼下に 眠りの歌を抱く
オレンジの夕日を眺めながら
『ここから飛んでみたら……』
染まり往く街並みを見下ろしながら
『ここから落ちてみたら……』
とある屋上の縁に座る
斜陽輝く空の下 覚醒し始めた月の音色
宵口の雫を纏い ふわふわと舞い踊る
昼と夜の境界線
誰にも知られず 誰にも見られず
ただ独りきり 夜を待つ
暗い昏い 夜を待つ
絡みつく誘惑の螺旋 謎めいた闇の調べ
思考を赤く染め上げる 黄金色のトワイライト
天に手が届きそうな 地上の果てで
私は今も アリアを鳴らす