9話 お茶しましょう
久しぶりの投稿となります。
※今回は少し狂気的なシーンがありますので
ご注意ください。
「お医者様から許可が貰えてよかったですね!」
私はノアお兄様が乗る車椅子を押しながら、明るく話しかける。
「うん……♪」
声のトーンも表情もいつもと変わらない感じだけど、とても嬉しそうなのが伝わってきた。
「あっ、ノアお兄様見てください!綺麗に咲いてますよ!」
私は庭園に咲く綺麗な『精霊の花』を指差す。
精霊の花とは、前世の世界にあったカスミソウの花にとても似ている可愛い花で、他にも何色か色の種類があるらしい。
ちなみにホワイト家の庭園に咲いてる精霊の花の色は白色だ。
「花言葉……知ってる?」
ノアお兄様に突然質問をされる。もちろん知らなかったので首を横に振った。
「花言葉は、『幸せ』…」
ノアお兄様の話によると、この白い精霊の花はホワイト家を象徴する花らしい。
だから、家の庭園でたくさん育てられていたんだと納得した。
「とても素敵な花言葉ですね!この花のことがもっと好きになりそうです。」
前から綺麗な花だなーと思っていたけど、この花が自分の家を象徴する花だと知ったら、より愛着が湧いてくる。
「レムは…眩しいな(ボソッ」
「え?」
「……なんでも…ない。…忘れ、て」
(あ、またあの表情だ。)
この前みたいに…いや、この前よりも表情が暗いのがわかる。何か気づいてないことがあるんじゃないかと思わせる違和感に私の心は酷くざわつき始めて落ち着かない。
「ノアお兄s…」
「あら?屋敷にいないと思ったら、二人とも庭まで散歩ていたのね。」
ノアお兄様を呼ぼうとした声はルーナお姉様の登場によって遮られてしまう。
「お医者様に許可を貰ったので、お兄様と庭園を散歩してました。」
「そうだったのね。」
私はちらっとノアお兄様を見る。先程のような暗い感じは無く、いつもの無表情な顔に戻っており、ルーナお姉様と話しをしていた。もう聞ける雰囲気ではなく、私は諦めた。
(はぁ。ノアお兄様は一体、私に何を隠して…)
「おーい!!置いていくなよー!!」
空気の読めないようなこの登場の仕方は…間違いなくソルお兄様だ。
「…しぶといですわね。(ボソッ」
(お、お姉様ー?心の声漏れてますよー。)
私達の前で足を止めたソルお兄様は、おい!!と言って、ルーナ姉様に抗議し始める。
「ルーナ!さっきは容赦なく大量の氷の矢を降らせるなんて、いくらなんでもやりすぎだろ!!!」
「お兄様は、回復魔法が使えるからいいではありませんか。死なないのなら問題ないのではなくて?」
「俺への優しさが足りなくないかー?!…ぅぅ…」
(お姉様は、ソルお兄様に対して酷くトゲトゲしいんだよなー。)
私は苦笑いしながら話題を変えることにした。
「先程ノアお兄様と話をしていたのですが、このあとそこのテラスでお茶にしようと話してて、そのよかったら…」
学園の課題があったら申し訳ないから、誘うのに悩んでいると。
「姉様…達も……どう?」
私の言葉に続けてノアお兄様が代わりに誘ってくれた。ノアお兄様ありがとう。
✽✽
「忙しいかもしれないと思うと、誘いにくかったのですが、ノアお兄様のおかげで、お姉様達も一緒にお茶することができました。ありがとうございます。」
私はマカロンをパクっと食べる。
「そんな…気遣わなくても…いい。2人、なら…断らない。…特にあれ、は。」
ノアお兄様は、テラスから少し離れた花壇の前にいるソルお兄様を指差す。
さりげなくソルお兄様のことを「あれ」と言ってるけど1回スルーしておこう。
「兄弟でお茶ができるなんて…まさに至福の極みだ!!!…俺はなんて幸せ者なんだー!」
ソルお兄様は地面に足をつけて、お祈りポーズをしていた。しかも瞳から涙までポロポロ涙まで流して。
「あははは…。ソルお兄様って少し大袈裟すぎるところがありますよね。」
ノアお兄様はうんうんと頷く。
「黙ってて…ほしい……くらい…大袈裟。」
(うん。ノアお兄様もソルお兄様に対して少しトゲトゲしいなぁ。……あ、この味のマカロンも美味しい♪)
違う味のマカロンも堪能していくのであった。
✽✽
「ふふふ。」
一方のルーナは楽しそうにお菓子を食べる可愛い弟と妹を見ながら穏やかに笑っていた。
「2人を見てるのは別にいいが、ルーナも食べたらどうだ?これお前が好きなやつだろ??」
ソルは背後からいきなり現れ、ルーナの好きなケーキを乗せた皿を差し出す。
「…お兄様には教えてないはずですけど?」
ルーナはソルに疑いの目を向ける。
「うーん、そうだっけ?」
ソルはにっこり笑ってるだけで、一切表情を崩さない。
「……」
「……」
ルーナはニコニコし続けるソルをしばらく凝視し続けるが、とうとうしびれを切らしたルーナは渋々とお皿を受け取り、紅茶と一緒に味わい始める。
「あと、これとかこれも好きだろ?置いておくぞ。」
手早い速度でルーナの前にケーキを乗せたお皿をおいていく。
「その情報網は一体どこからですの?」
「……秘密。」
ソルは一瞬歪な瞳を見せるものの、すぐににっこり笑う。もちろん質問に答えることはなかった。
「本当に食えない兄ですわね。」
ルーナは心底呆れながらも好きなケーキを味わい始めるであった。
✽✽
数十分後_
「ソルお兄様!ルーナお姉様の学園での伝説が聞きたいです。教えてください!!」
「それ…僕も……知りたい。」
「ふ、2人共何を言っているの!そ…そんなのあるわけないじゃない!」
ルーナお姉様は明らかに動揺している。これは何かありそうだなぁ?と私は内心でニヤリと笑う。
好奇心は人間の性だ。ルーナお姉様が学園で残した伝説が気になることは仕方のないことなのだ。
…だから、私とノアお兄様はソルお兄様に詰め寄る!!
「2人とも安心しろ。…そう言うかも知れないと思ってたから話す準備をしてきたぞ!!!」
ソルお兄様は活き活きとした表情をしながら、謎の手帳を取り出す。
「ナイス…兄様。」
ノアお兄様も無表情ではあるものの、ノリノリなのがすごくわかる。
「い…言ったら許しませんからね!!!」
その後も兄弟4人でてんやわんやしながらも楽しい談笑会(主にルーナお姉様の学園伝説の話)をしていくのであった。
談笑会が終わったあと、顔を真っ赤にしたルーナお姉様によって氷の矢がソルお兄様へと放たれることになるが、それはまた別のお話。
✽✽✽
_その一方、黒い少年は夢に魘されていた。
「まるで魔物のようだわ」
「いつか国に災いをもたらす存在なのでは?」
「不気味ですわ。」
「ほんとなんて醜いのかしら。」
『っ…』
黒少年は、その場を離れようと足早に去る。
ザーザザザ……ザーザザ
黒いノイズがはしり、場面が変わる。
「全てはライラックの為に…ライラックの為に……。」
虚ろな目をした狂気的な男が鋭く光るナイフを黒い少年に向かって振り下ろそうとする。
(やめろ……やめろー!!!!!!)
✽✽
『っ!!』
薄暗い裏路地で少年は目を覚ます。空には少しずつ星が浮かび始めていた。
『最悪だ…。』
黒い少年はゆっくりと立ち上がる。
「いたか?」
「いや、まだだ。」
『っ!!!』
道の先から兵士の話し声が聞こえる。
焦りを感じた少年は万全な状態じゃない中、無理やり風魔法を展開して逃走をはかる。
_黒い少年が白い少女に出会うまで残り2日。
活動報告にも上げさせていただきましたが、
ユーザー名を変更しました。
幻影の姫 → 幻影の宵(旧・幻影の姫)
後に()も消えますのでご注意くださいm(_ _)m