8話 お怒りのようです…
お出掛けした翌日。私はお土産を渡すためにノアお兄様の部屋を訪れていた。訪れるというよりは突撃の方があってる気もするけど、気にしない気にしない。
「ノアお兄様。昨日のお土産です。どうぞ!!」
私はお土産をノアお兄様にほぼ押し付けるような形で渡した。ノアお兄様は少しだけびっくりしていたようだったけど、すぐにお土産を開けてくれた。
「…ぬいぐるみ??」
ノアお兄様は白い羊のぬいぐるみに触れる。
初めは本にする手も考えてたんだけど、ノアお兄様は持病でベッドに寝込むときもあるから、そのときに少しでも可愛いぬいぐるみで癒やされてほしいと思って、ノアお兄様の分もお土産として買ってもらうことにした。
「瞳の色…僕と…同じ??」
(よく気づいてくれた!!!)
私は待ってました!の勢いでそのまま説明する。
「自分と同じ瞳の色だと、より愛着が湧くかなあって思ってノアお兄様には同じ青い瞳の羊さんを選びました。ちなみに私はピンク色の瞳なのでこの羊にしました。」
今度は自分のぬいぐるみを見せる。
「瞳の色は違いますが、お揃いですね♪」
「お揃い……」
ノアお兄様はお土産の羊のぬいぐるみを見つめる。
「ありがとう…大切にする。」
ノアお兄様は小さく笑った。
バタン!!
「「っ!!!」」
突然、大きな物音が聞こえてきて、音の方を振り返ると、私が開けっ放しにしていたノアお兄様の部屋の扉の向こうから、ソルお兄様が倒れているのが見えた。
「か、可愛すぎる…天使か?俺の兄弟は皆、天使なのか?!」
ソルお兄様がブツブツと何かを言いながら、床をバンバンと叩いていた。少し距離があったせいで何を言っているのかは聞き取れなかった。
(ソルお兄様どうしたのかな?…)
「ほっといて…大丈夫…あれ…通常運転」
私の心を読みとったノアお兄様はそれに淡々と答える。
「ノアも最近、俺に冷たくなってきてないか?!」
今度は大きな声だったから聞き取れた。
「ただでさえ、ルーナには完全に距離を置かれてるというのに…。頼む!お前らは離れないでくれー!」
よくわからないことを言い始めたけど、なんだかソルお兄様が哀れに見えてきた。
とはいえ、ソルお兄様にどう反応すればいいのかわからなくて少し戸惑っていると…
『なに2人を困らせているのですか?ソル・お・に・い・さ・ま??』
「「!!」」
背筋に冷たいものを感じる。
お兄様の前ににこやかに微笑むルーナお姉様の姿があった。笑顔が怖い…。
「ルーナ!これは…その!」
不穏な気配を察知したソルお兄様は、なんとかこの状況から逃れようと私とノアお兄様の方を見るけど、私もノアお兄様もソルお兄様から目を逸らした。
「たしかに2人は可愛いです。それには賛同します。…けど、2人を困らせるのは違いますよね??」
「……」
ルーナお姉様の直球な正論が刺さったようで、ソルお兄様は何も言わなくなっていた。
「そういえばソルお兄様。私最近、学園で水魔法の応用で氷の槍が使えるようになったんですよね…。」
(なんかヤバい予感が…)
「使いこなせているか心配なので確認したいのですが…」
ルーナお姉様が言っていることを理解したソルお兄様の顔は、ポーカーフェイスを装うとしているものの、額には汗が滲んでいた。
「待ってくれルーナ!俺は…「付き合ってくれますよね?」…はい。」
最後の逃げ道すら防がれたソル兄様は爽やかな笑顔のルーナお姉様に袖を捕まれ、ズルズルと引っ張られていった。
((ソルお兄様、ご愁傷様。…/です。))
私とノアお兄様は同じことを思いながら、二人でお姉様達のことを見送るのであった_
✽✽
「今更ですけど、大丈夫ですかね?」
少しソルお兄様が心配になった。
「ソル兄様…あぁ見えて…すごく強い…大丈夫。」
「それよりも…」
ノアお兄様は窓の外に指を指す。
「散歩したい…どう?」
と提案してきた。特にしたいこともなくて、暇だったので、私は喜んでその案に乗っかった。
「あ!ですが担当医の方に聞いて、許可を貰ってから庭園を散歩しましょう!」
私はすぐに担当医の方に許可を貰いに行くのであった。