7話 Sideソル・ホワイト
今回は5話・6話のソル視点になります!
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_俺は一瞬息を止めた。
なぜって?…目の前に天使がいるからに決まってるだろ!
レムは不思議そうに首を傾げる。その姿も可愛く、見事に俺のハートを撃ち抜いた。そんなレムの愛らしさに悶えていると、俺が具合悪くなったと勘違いしたようで、心配までしてくれた。
(優しさまで兼ね揃えているなんて…もうこれは天使と呼ばずなんと言うんだ!!)
一人で興奮したまま倒れ込んでいると、ルーナからいい加減にしろとばかりに冷たい視線が送られることに…。愛しいルーナにそんな視線を向けられるくらいなら、まだ物理的に殴られる方がマシだったぞ…。
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「わぁ〜!!」
レムはキョロキョロと辺りを見回す。その様子を大人たちは微笑ましく見ていたことに、本人だけは気付いていなかった。
ちなみに、今回街に来た理由はたまにはレムを外に連れていきたいと俺が思ったからだ。別にノアにぴったりくっついてばかりで羨ましいと思ったからでは…ないからな!!
「今日は特別に父上からお小遣いを貰ったから、欲しいものがあったら言うんだぞ。」
レムのことだ。急にそんなことを言われてもすぐには思いつかないだろうと考え、試しにおもちゃ屋に向かってみようと提案した。
「あの白い羊のぬいぐるみが欲しいです!!」
レムは俺の裾を引っ張っりながら棚を指さした。
キラキラした目でお願いされるとは思わず、俺は驚くのと同時にレムの可愛さに口元がニヤつきそうになり、歯を食いしばって必死にこらえていた。
「ソルお兄様??」
俺はレムの頭を撫でることで視界を遮って、その間に表情を元に戻した。
なんとか乗り切ったと安心していたのだが、その後も笑顔でお礼を言ってくるものだから、また頭を撫でて今にもニヤけそうな口を見られないように誤魔化し続ける。
「…あのー?先程からなぜ私の頭を撫でてくるのですか?」
「なんでだろうな?」
もちろん理由は、こんなニヤついたダラしない顔を見られないためだ。見たらレムも気持ち悪いと一線を引かれてしまうかもしれない。
実際、ルーナとノアには引かれれてしまったからな。思い出しただけで悲しくなってくる…。
だからこそ、レムの前では極力バレないようにする必要がある。レムには悪いがここは質問され続けていたが、躱させてもらった。
_その結果として、レムはからかわれていると感じたようで拗ね始めてしまったが、ケーキを買ってあげると、すぐに機嫌を直してくれたから、とりあえず良かった。
「美味しい〜♪」
レムは嬉しそうにケーキを食べる。
リスみたいに口いっぱいに頬張ってる姿もまた可愛いじゃないか!!
俺にとっては最高の1日だった。
_このあとの祝福の儀を除けば…だがな。
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家に帰ったあと俺はすぐに父上の書斎に向かう。
「…すまないソル。どうやら聞き間違えたようでね。もう1度言ってくれるかい??」
どうやら父上は理解しきれてないようだ。
今度はしっかり強調して、事実を突きつける。
「レムの魔力属性は『全属性』でした。」
「…聞き間違えであって欲しかったよ。」
父上は頭を抱えて、深い溜め息を吐いた。
何せ伝説級の才能が現れてるんだから父上の反応も無理はない。しかもそれが自分の子供なら尚更だろう。
「お気持ちはよくわかりma…」
「君も人のこと言えないからね?ソル。」
「………」
しようとしたフォローを容赦なく遮られてしまった。
「…とりあえず。この結果は王宮まで報告する必要があるね。…急いで陛下に手紙を送ることにしよう。」
父上は手紙を書き、伝書鳩を飛ばした。
「はぁ。私は領地経営しながら領地の人々と家族と幸せに暮らせればそれだけでいいというのに…」
父上の苦労は絶えないなと思った。
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報告を終えたソルは自室で日記を書いていた。
××月××日
・ルーナは今日も美しかった。怒る姿もまた美しい。
3センチ後ろの髪を切ったみたいだ。毛先の長さがしっかりと揃っていてルーナの真面目さがより伝わるな。よく似合っている。
・レムと出掛けた。今日の笑顔は100点満点だった。寝顔を見ることができた点もまた最高だった。。
・今日はノアとあまり話す機会がなかった。レムと出掛けていたから、しょうがないとはいえ悲しい…。
「今日も書き足りないがしょうがない…これくらいにしておくか。」
この日記には、1日の兄弟のことについてと、兄弟の好きな食べ物・苦手な食べ物、趣味、特技、性格、最近ハマっているものなど、兄弟の情報についてたくさんメモされている。
_ホワイト侯爵家の長男。ソル・ホワイト。
彼は兄弟に異常なほど執着しているブラコンである。
(まだまだ、リサーチ不足だな。)
ソルは日記を閉じ、引き出しの中にしまう。
そして今度はもう1つの鍵付きの手帳を手に取る。
「この先、これを使うことが無いといいんだがな。」
ソルは兄弟には絶対見せないような冷酷な微笑を浮かべるのであった。
次回は主人公視点に戻ります(≧∇≦)b