23話 side黒い少年②
『綺麗…』
一瞬俺の心の中が読まれたと思ったが、すぐ違うとわかった。…わかったが同時にそれはあり得ないと思った。
(化け物…呪われた王子と呼ばれる俺が綺麗?…そんなわけがない。)
俺は白い少女への警戒心を無意識に強めていた。
「質問に答えろ。お前は何者だ。」
『わ、私はレム・ホワイトと言います。ホワイト伯爵家の末の娘です。』
ホワイト家?あのホワイト家か??
ホワイト伯爵家はライラック国の貴族の中で、1番歴史のある貴族で有名だ。それ故、今の政治において中立派の貴族に属している。たがそれは表の姿。
これは王族とホワイト家内の機密事項だが、ホワイト家はこの国の初代国王の時からずっと影から支えている忠臣である。そして、貴族のバランスが程よく安定してるのは、いつもホワイト家が貴族の間に立って上手く立ち回っているからだと父上は話していた。つまり、裏側の支配者と言っても遜色ない立ち回りをしているということ。
「単刀直入に聞く。伯爵は警戒心が強い俺を保護するために眠らせた。……俺に悪意はないんだな??」
ホワイト伯爵は、貴族の中でも1番読めない。父上が信頼を置いてて友好的な関係性なのは知っているから、敵になる可能性は低いだろうが、俺自身の味方になるとは限らない。それは見極めなければいけない。
アイツは、俺の質問に対してこくこく頷く。最低限声を発さない方がいいと思ったのだろう。正直、無駄に質問攻めされない分、楽だな。
「お前は、俺にそれを伝えるように伯爵にお願いされたといったところか。
俺が目覚めてすぐに、伯爵自身と会えば俺が警戒すると、俺を眠らせた伯爵は思ったんだろうな。」
そう言うと、こいつはとても驚いた表情をしていた。こんなの誰だって推測できる。何をそんなに驚いてるんだか。
…今必要なのはホワイト伯爵家が信用できるか否かを考えるほうが合理的だ。余計なことを考える必要はない。
「だが、こんな夜中にお前がここに来た理由がわからない。なぜだ?」
『えーと…』
アイツは恥ずかしそうに理由を話す。俺の予想通り、アイツは、俺が伯爵に抱く疑念を説明させるために伯爵が用意した仲介役だったようだ。
だが、新しい枕?を買って貰えるとはどういうことだ?枕を早く買ってもらうためにこんな夜中に来た??
(何いってんだこいつ?)
伯爵のこと以前に、目の前のこいつのことがわからなくて困惑した。
**
『そういえば、前日王城でシリウス殿下にお会いました。…あなたのこと心配していた様子でしたよ?』
俺は思わず睨んでしまった。だが、あいつは俺をまっすぐに見ていた。何か見透かしているような気がした。
けどそんなことは気にする必要ない。今必要なのはホワイト伯爵の動向とどうやって国から出ていくかを模索することのみだ。
(俺は…こんなところで捕まって、城に戻さ、れるわけにはいかな…_)
バタン!!
急にめまいがしたと思ったら、俺はその場で尻もちをついていた。
(くそっ!…魔力が枯渇してるせいで…)
本調子じゃないのは言うまでもなかった。
「大丈夫ですか?!」
アイツは、すぐに俺のところへと駆け寄った。侯爵から話を聞いてるなら、恐らくこれが魔力の使い過ぎによる体調不良だとわかったのだろう。
そして、立てますか?と言って手を差し伸べてきたが、俺はアイツの手を思いっきり弾いてしまった。差し伸ばされた手を掴めるほど、俺は他人を信用できない。
とはいえ、そんな酷い態度をとってしまった。純粋に心配してくれたアイツも俺のことを嫌いになる。
…これで泣かれたら正直面倒だが、あまりにも煩かったら追い出せばいい。
そんなことを思っていたが、アイツは予想の斜め上のことをしてきた。
『すみません殿下。失礼しますね。』
そう言いながら、俺を抱える。
「は?!お、お前何して…!っ//」
『えーと、お姫様抱っこ??あ、でも違うか。お姫様抱っこ改め、王子様抱っこ?…ですかね?』
淡々と返すだけで、降ろそうとはしない。
「お、降ろせー!」
『??別に取って食うわけじゃないんですから、大丈夫ですよ。』
「大丈夫なわけないだろ!」
思わず大声で叫んでしまった。
徐々に顔に熱が集まるのを感じる。これが羞恥心からきたものだった。
アイツは俺をベッドの上に降ろして、布団をかけた。
『それでは、ゆっくりお休みください。邪魔者は退散しますので。』
そういってアイツは、俺を気遣ってなのか、さっさと俺から離れようとした。
なぜか俺はそんな勝手なことばかりするあいつにムカついて、腕を掴んでいた。
『殿下??あの、離していただかないと離れられないのですが。』
なぜか、アイツを引き止める力が強くなっていた。自分でも理由がわからない。
これ以上こいつから聞けることなんて何もないというのに…。俺はなぜ引き止めている?
(先ほど、あいつに屈辱を味合わされたからなのか?)
そう思ったが、なぜか心のどこかで、俺自身がその答えに納得できていなかった。
**
(俺はなぜ、こいつが離れようとしたとき、ムカついたり、イライラしたりしたんだ…?)
俺は自然とアイツのことをじーっと見ていた。見られていた本人はとても気まずそうに下を向いたり遠目で窓を見つめたりしている。動揺すると顔に出やすいタイプのようだ。
ただ時間を過ごしても無意味。何か他にコイツから聞けることはないかと考えたときに、ふと浮かんだことを聞いてみた。
「…お前は兄上に会ったと言ったな?なぜだ?」
しばらく沈黙していただけって、急に話しかけられて驚いたのがわかる。なぜって?
驚き過ぎて、そわそわしているのが表情や行動に出ていたからだ。
だがそれも一瞬で、冷静になるのが早かった。そしてアイツは俺の質問に緩く答えた。
『私、教会で魔力測定したら、全属性に適正があることが発覚しまして、それで父と一緒に陛下の元へ謁見しに行くことになったんですよー。』
全属性の適正保持者なのには当然驚いたが、それ以上に…
(こいつ、口が軽すぎるし、警戒心もなさすぎないか??)
なぜ、伯爵はこんな奴に仲介させようとしたんだ?理解できない。ホワイト家はたしか4人兄弟だと把握している。コイツがその末娘で間違いないなら上にも兄弟がいるはずだ。やはり、ホワイト侯爵の思考はわからない。
「お前、2種類以上の魔法適性のある子供は、国の保護対象でかつ国家機密扱いなんだぞ。外で話したら、誘拐されるぞ。」
アイツは少し考えたあと楽観的にこう言った。
『ルイ殿下は王族ですし、問題ないかなって思いまして。』
やっぱりコイツ、俺が貴族たちにどう呼ばれているか知らないんだな。でなければ、こんなに気楽に話しかけてくるわけがない。いや、仮にも王子の俺に初対面でここまで無礼講なのも珍しいとは思うが…
だがこいつはまっすぐ俺を見ている。話す言葉、行動、表情。陰口を叩くやつらは、表面は笑顔しか浮かべない。でも、こいつは焦ったり、青ざめたり、笑ったり、驚いたりと表情が豊かで、表面だけ偽って陰口を叩くアイツらと同じようには見えなかった。
「…そうか。」
俺は、ただ普通に俺自身を見ているこいつの目や表情も、周りの貴族たちが俺に抱く恐怖や嗤笑に変わってしまうことが嫌だったのか?
俺が貴族にどう見られているのかを知ってしまえば、こいつも純粋に俺を見れなくなるかもしれない。
だから、俺は俺が"呪われた王子"と呼ばれてることをこいつに知られたくなかったのか?……それで引き止めた、のか?
つまり、アイツが俺のあだ名を知ってしまうその日が来る未来が嫌だとあの一瞬で思ったのか??
俺は久しぶりに抱いた期待という感情に戸惑った。
(これまで何回もその期待を裏切られてしまっているんだ。いい加減学習して割り切れ。俺は割り切らないといけない。いけないはずなんだ…。)
「ル、ルイ殿下。何か飲み物はいりますか?必要であれば持ってきますよ?」
純粋に俺をみて俺自身を気遣う。
その瞳に…俺は不思議と期待してしまいそうになる。
『あ、あの…』
「なんだ?」
『腕を離していただかないと、お水を取りにいけないのですが…』
腕を掴んだままだったことをすっかり忘れていた。
腕を離すと、ものすごいスピードで部屋を出ていった。
「……ちっ、、」
俺は小さく舌打ちをした。
(期待して裏切られるなんてもう、ごめんだ。…もうあんな期待なんてしてはいけないんだ。)
俺は自分に言い聞かせた。
_期待なんかを抱いたって、結局は無駄になるのだから。
いつも以上に、大きく編集するかもしれません。もしそうなったらすみませんm(_ _)m




