21話 1時間も寝てない…だと?!
「お待たせしました。お水です。」
私は水を差し出す。
『……』
しかし、ルイ殿下は飲もうとしない。何かを警戒しているような、そんな疑いの目をしていた。異世界の王族だし、もしかしたら、毒の心配しているのかもしれない。
差し出された飲み物ですら警戒しないといけないなんて。
(王族ってやっぱり面倒そうだなー)
私は他人事のように思いながらも、少しだけ水を飲む。飲んだあと飲み口を拭いて、口をつけてない側をルイ殿下に向けて渡す。これでどうだ!
ルイ殿下は、まだ少し警戒しつつも受け取ってくれた。
飲み終えたのを確認した私は、さりげさくその場を去ろうと思ってたのに、殿下は無言で腕を掴んできた。残念ながら、まだ自分の部屋に戻れそうにないみたい。
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『……お前、シリウス兄様に会ったと言ってたな?』
「は、はい!!」
いきなり話しかけられるものだから驚いてしまった。
それもそのはず、殿下が水を飲み終えてから十数分間くらいずっと沈黙していたからだ。
『俺と兄上を比べてどう思う?』
「??。お二人とも、綺麗な顔立ちだなーと思います。」
なんですか。その真面目に答えろよって顔は、こっちは真面目に答えたんですけど。
『…俺の容姿だ。気づくことがあるだろ?』
「………????」
そういうと、何故か呆れられてしまった。ルイ殿下は一体何を聞きたかったのだろう?
『…父…陛下も…兄上も髪も瞳の色は、俺と違って薄紫色だっただろ。』
そう言われて私は、はっとした。殿下にはまじかよこいつという目を向けられた。
殿下の言う通り、たしかに陛下もシリウス殿下の容姿の色は薄紫色の髪と瞳だった。言われてみれば、殿下とお2人を比べえると髪も瞳の色も似ていない。
『…お前もどうせ…化物だと思うんだろ。』
ぽつりと呟いたルイ殿下は、なぜか諦めたような乾いた笑いをしていた。
今の化け物というワードと、黒と赤の色合いで1つ思い出したことがある。まだ私は見たことがないけど、この世界には魔におちた魔物という存在がいるらしい。魔物の特徴は、黒くて赤い瞳孔をしていて、見つめられただけで恐怖で硬直してしまうことがあるらしい。
そんな恐ろしい生き物と同じ色の容姿の人間がいたら、この世界の人はどう思うのかな。いや、城を抜け出す状況になっているんだから、少なくとも穏やかでは済まなかったのは容易に想像がつく。
「思ってないです。先程、言ったじゃないですか。"綺麗"だと。」
『…ふっ、俺をおだてるように伯爵に言われたのか?』
ここまで疑り深いなら私にはもうどうにもできない。
「信じたくないなら信じなくていいです。」
これ以上信じてもらえない話を続ける価値はお互いにないと思った。私はあえて線をひいた。信じてと言っても、今の殿下には人を信じられる余裕はきっとないだろうから。
「…それよりルイ殿下。殿下は何日かかけて逃亡していたんですよね?寝ていないんですか??」
お父様から話を聞いたときから、"逃亡中の殿下の睡眠時間はどのくらいだったのか"密かに疑問に思っていた。
『…追っ手から逃げていたんだぞ。寝れてるわけがないだろう。』
え…もしかして1時間も寝れてない感じですか?う、嘘でしょ?!
「…も…………すか(ボソッ)」
『今なんていった。』
「‥‥”問題大アリじゃないですか!!”と言ったんですよ!!」
私の気迫に押されてか、殿下はポカンとしていたけど、そんなこと気にしていられない。
睡眠には、疲労回復や免疫力向上などの効果がある。心身の健康を維持するためにも、睡眠は大切だというのに1時間も寝てないだなんて…由々しき事態。こんな状況、睡眠愛好家(自称)の私が許さない!
「今すぐ寝てください!!」
『なんでお前にそんなことまで、言われないといけないんだよ。』
(子供の内は夜更かしなんて、よくないのに…)
←※気づいていないが、ブーメランである。
私は彼のベットのサイドにあった椅子に腰かけていたが、より近づくためにルイ殿下が寝ているベットに腰をかけなおした。そして、今一度殿下の顔をじーっと見た。
元々クマがあるなーとは思っていたけど、クマの深さがここ何日かでできるような深さではないように見えた。
もしかしたら、殿下は普段から寝れていないのかもしれない。
そこで私はあることを閃いて殿下に提案してみることにした。
「…怖い夢をみるせいであまり寝れないんですか?」
『だからなんだ。』
「じゃあ、私と手を繋いで寝るのはどうですか??」
『……はぁ?!』
何故か、殿下は顔を赤らめた。え、怒るくらいダメでした??
「仮に悪夢をみても、隣に人がいると安心するものかなーって思いまして。あ、でも初対面の人だと余計気が休まないですかね?」
『……いいだろう。試してみろ。』
(よっしゃー!!!これなら、私も寝れる!!正直もう眠かったんだよねー。)
私は遠慮なく、失礼しますと言って私は殿下と同じ布団に入る。そして、そっと手を繋いだ。
「怖い夢みたら遠慮なく起こしてくださいね!!それではおやすみなさい。」
『あぁ。おやすみ。』
(怖い夢のせいで寝不足になってるのだから、相当怖い夢なんだろうな。…どんな夢なんだろう?)
そう思いながら私は眠りについた。




