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5.夢の歌姫

宿に戻る頃にはもう日が傾きはじめていた。


ちょっと早いがミリアを連れて夕食に行く。宿屋にも食堂があったので、そこに行った。おすすめは鳥とキノコのご飯の卵のせだと言うので、それにした。

オムライスかと思ったんだが、違った。鳥とキノコの入ったハーブが香るご飯の上に、ヨーグルト入のホワイトソースのようなものがかけてあって、その上に目玉焼きが乗っている。客は好みでトマトソースがかけられるようになっていた。


スプーンでそのまま一口食べてみた。お、結構美味い。鳥もキノコの香りが強いなぁ。ご飯だけでも美味い。

ペロッと食べ終わった。


『ルルー。普通の食事もできるんだね。知らなかった!』

『俺も知らなかった。でも美味かったよ。』

『じゃあ、ミリアが今度ルルーにお料理してあげるね。』

『そうだな。サーラを見つけたら、一緒に食べよう。』

『うん。』


ミリアは賢い子だ。ちゃんと、声を出していい話と、駄目な話を使い分けている。俺のこの年頃はこんなに賢くなかったなぁ。


年中いない両親の代わりに、俺を育ててくれたのは爺ちゃんだった。有名な剣術家の爺ちゃんに教えられて、物心つく前から俺は竹刀を握っていた。爺ちゃんに褒められるのが嬉しくて、楽しくて、俺は毎日一生懸命練習した。

中学に入る頃には爺ちゃんは体を悪くして、入退院を繰り返すようになった。俺は爺ちゃんを喜ばせる為、兎に角試合に勝ち続け、高一で国体で優勝した。

でも、爺ちゃんがその結果を聞くことはなかった。俺の試合中に、突然体調が悪化し、亡くなってしまったから。試合に出ずに、爺ちゃんについていたら、俺は死に目に会えたんじゃないかと後悔した。

そう思うと、もう竹刀を持つ気になれなくなって、俺は剣道を辞めた。

周りが煩かったけど、別にスポーツ推薦で高校に入った訳でもなかったし、もういいやって思った。

だからミリアを守る為に刀を抜いたのは本当に久しぶりだったんだ。


「美味しいね。」

「そうだな。ミリア、ちゃんと残さず食べろよ。」

「うん。」


食べ終わったミリアを連れて部屋に戻り、ミリアを寝かせつけて、俺はそっと部屋を出た。

宿の人も何処かに飲みに行くんだろうと思っている。


途中でサマンサに変わり、店につく頃には、もう気の早い客達が集まりだしていた。

表の看板が凄い!


【天上の歌姫降臨。二夜限りの夢の歌声!】


いやいや、なんだかベタ過ぎて恥ずかしい。


教えられた通り、店の裏口から入ると、直ぐに衣装が渡され、着替えてる間に髪を結い上げられ、化粧をされた。

絶対に気が抜けないので、常に呼吸を意識し、緊張を保つようにするのは、思った以上に大変だったが、まさかステージで白猫に変わる訳には行かない。


化粧は俺が思ったより、ちょっとケバかったが、まあこんなもんだろう。


俺はスカートの裾を優雅につまんでステージに向かう。

素の俺では絶対に出来ないが、ゲームキャラ設定をきちんとすれば、それなりの動きがちゃんとできる。立ち居振る舞いは見た目に影響されるようだ。歩き方から意識しなくても変わるのが凄いな!


ステージに上がると、ほぼ座席は満席だった。

俺はゆっくり歌い始める。一曲終わる度に客の歓声が凄い。その歓声に惹かれるように次々と客が入ってきて、約束の5曲を歌い終わる頃には、立席客も一杯で、凄いことになっていた。


俺は優雅に一礼して、裏に周り、客に捕まらないように、大急ぎで店を出た。途中で猫になって屋根の上を移動して開けておいた宿の窓から部屋に戻った。


翌日は町に出て、足りないものを買い足した。

ミリアが持っていた薬は裏山で採れる傷薬だけだったので、他の薬も買い足した。

『ミリア、回復魔法は使えるか?』

『回復魔法って何?』


だから、毒消しや熱冷まし、下痢止め、船酔い止めなどを購入した。

これには金持ち息子から貰った金貨があるので、支払いには困らない。


夕方にはまたミリアに食事をさせて、寝かせつけて部屋を出た。今日は窓から猫のまま外に出る。思った通り、酒場の廻りは既に客で一杯だった。

俺は誰にも見られないように、酒場の二階の窓から入り、裏口に続く衣装部屋の隅で姿を変えると、いかにもこっそりやって来た振りをして、店の中に現れた。


今夜の演奏は客を一曲毎に入れ替え制にするらしい。


その日も五曲歌い上げ、衣装部屋に戻った俺に、酒場の親父はもう少し続けてくれないかと頼んできたが、もちろんお断りした。

親父はいい人で、凄く儲かったからと、金貨10枚のところ、金貨20枚を払ってくれた。ありがとう。


これで、安心して旅立てる。問題は猫を船に乗せてくれるかだな。



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