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3.旅立ち

俺は猫で人生終わっちゃうんだなぁ。

元の世界ではどうなるんだろう。神隠しとかかなぁ。帰れないなら、もう少し、部屋の片付けしとくんだったな。あのゲームもクリアしとけば良かったなぁ。

なんだよこれ、俺未練だらけじゃないか。

でも、ミリア、あんなに小さいのにこれからどうやって生きていくんだよ!

俺、死にたくない!ミリアを守って、サーラを取り戻したい。くそぉ!!


意識が少し戻ると、俺はまた光っていた。

あいつに斬られた傷が治っていってる。やっと痛みが収まって立ち上がると、真っ白だった俺の体は、血で真っ赤だった。


ミリアはと見ると、床に突っ伏して泣いている。

俺はそっと近づくと、ミリアの指先をちょっと舐めた。本当は涙を舐めてあげたかったけど、俺の舌はザラザラだからね。


「ルルー?生きてるの?」

「にゃあー。」

「ルルー!」


ひとしきり泣いた後、ミリアは俺の血を洗い流してくれた。あんなに血だらけだったのに、傷は跡形もなく治っている。


あの光、どうやら俺は強く願えば、その願いを具現化できるようだ。でも、その可能な範囲もあるらしい。

さっき俺は死にたくないと願ったし、サーラを取り戻したいとも願った。

でも叶ったのは死なない事だけ。サーラは連れ去られてしまった。


願いのルールはよく分からないけど、とりあえずはミリアを守ってサーラを追いかけよう。


その前に強く願いを込める練習が必要だ。それに、ミリアと話もしたい。どうしたらいいかな。

こう、超能力みたいに喋れたらなぁ。


ミリアに体を拭いて貰いながら考えてると、ミリアが俺の顔を覗き込んできた。

『ミリア。』

「え?誰?」

お、聞こえたみたいだ。

『俺、ルルーだよ。』

「ルルー?え?猫のルルーが喋ってるの?」

そうそう。俺はミリアの前に座って頷いた。

「ルルー、凄い!」


『ミリア。サーラを探しに行くか?』

「うん!」

『よし、行こう。俺は今から少し準備してくる。ミリアも荷物をまとめてくれ。』

「分かった。」


家を出て、林の中に入り、俺は精神統一をした。猫ではなんだかしづらい。

願い事は人型になりたいだ。


猫に丹田があるかどうか知らないが、腹に力を入れる。呼吸が徐々に整っていき、深く長い息となる。

そのまま、指先まで意識をする。

意識を集中したまま、人になりたいと言う願いを強く持つ。


体がほのかに光り始め次の瞬間、俺は元の世界の俺の姿になった。なったが・・・。


駄目、駄目、やり直し!!


あっという間に猫に戻った。

駄目だろ。裸は!!あぁ、誰も居なくて良かった。


改めて意識を集中する。恥ずかしかったので、なかなか集中できない。落ち着け、俺。呼吸、集中!


今度はゲームのアバターを作るようにイメージをする。町で見た人達の姿を思い出しながら、服や靴を着た自分の姿を想像する。黒髪でも黒い瞳も見かけなかったので、ゲームの村人1みたいな外観にする。


体が光る。そして、そこに居たのは想像した通りの姿だった。

「よし、やった。」


気を抜くと直ぐにまた猫に戻る。


ミリアを守るには、守る力も必要だ。次は守る為の姿をイメージする。服ができるなら、武器もできるかな。できるなら武器は刀、【虎徹】がいい。あのソリのない刀が好きだ。服と防具は今やっているゲームの剣士をイメージする。


だんだん願いを実現する迄の時間が短くなってきた。


変身した自分を見てから、刀を抜いて構える。ズシッと手に重みが伝わる。月明かりの中で虎徹が鈍く光る。

俺は呼吸を整えて上段に構え、裂帛の気合いと共に振り下ろした。うん。良い刀だ。重心もいい。相性もいいようで、手に馴染む。


俺は武器を手に入れた。


問題は長続きしない事だ。意識の集中が切れると、猫に戻ってしまう。いかに集中を切らせないかがポイントだ。


家に戻ったらミリアが鞄を前に座っていた。ポーチよりちょっと大きいくらいのショルダーバッグ。


『ミリア、準備終わったか?』

特に持っていく物も無いのかもな。小さいバッグだ。

「終わったよ。」

『よし。ミリア、内緒話がしたい時は、俺みたいに頭の中で話してみろ。』

『こんな感じ?』

『そうそう、上手いぞ。』

「うん。あのね、結構一杯持っていく物あったから、凄い荷物になってるよ。」

『? そのバッグ以外にも荷物があるのか?』

「これだけだよ。」

え?荷物一杯って、そのバッグだけ?せいぜい財布と服1枚位だろ?

「あれ?ルルー知らないの?荷物はちっちゃくできるんだよ。」

いやいや知らないだろう。この世界では普通にできるの?

『誰でもできるのか?』

「うーん。違うと思う。お姉ちゃんがやってるのを見た事ないから、他の人の前ではした事ないよ。」

『ミリア、他に何ができる?』

「あのね、髪の色と長さを変えること。お姉ちゃんが教えてくれたの。」


今になって気づいた。 この二人がこの山小屋のような家にひっそりと暮らしていたのは誰かから隠れていたのだろう。サーラはミリアを守っていた。

町で働きながらサーラはミリアを害するものが現れないか調べていたのかもしれない。俺よりも年下なのに。


翌朝、俺達はこれまで住んでいた家に鍵をかけ、家を出た。まずは町に向かって、あの赤野郎の行方を追おう。



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