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23.忍び寄る悪意


サーラを傷つけた男の言葉が気になる。サーラが死にかけると現れるあいつって誰だ?

聖女の周りにはまだ他の人間が現れるのだろうか。


「サーラ、死ぬ時に側に居てくれた人って誰?」

「え?今までに?そうね、聖女か、守護者だったと思う。」

「聖女か守護者か。と、言うことは、そう言う事かな。」

「? どういう事なの?」

「あいつが探しているのは俺かなって思って。ミリアは聖女かもしれないと思ってるかもしれないけど、まさか守護者が猫だとは、思わないだろ?だから守護者を探してるのかな?って思ったんだ。でも、一緒に居たのはあの男もそうだし、・・・」

俺はブツブツと独り言を言いながら考え込んでいた。

サーラはそんな俺の様子を見ながら、そっと一人にさせてくれた。


きっとあの守護者がやって来るのはもうすぐだろう。俺がそれ迄にやれる事は何だろう?

あいつはサーラを殺すのは躊躇わない。聖女に対する態度と、サーラに対する態度は違いすぎる。


聖女のバラ。殺人に使われたバラ。でも今そのバラは俺に未来の希望を見せてくれるかもしれない。



その夜、月が中空に輝く頃、屋敷の奥の一室に音も無く一人の男が現れた。そして、そっと廊下への扉を開くとその手に持つ袋から粉を取り出して辺りに振りまいた。

粉はとても細かく、空気の動きにあわせてゆっくりと家の中に広がってゆく。


男は部屋に戻ると、静かに時が経つのを待った。

そうして、一定時間をじっとそこで過ごすと、部屋を出る。


いつもなら屋敷のあちこちで侵入を警戒している者達も、動く気配がない。屋敷中に漂う微かな香りが全てを眠りの中に引き込んだのだと男は満足そうに自分のなした結果に満足する。


自分が探す者が居る場所は分からない。しかし、客を泊める部屋だと思えば、大凡の見当はつく。

2階の見晴らしの良い客室。そこに自分が求める者が居ると信じ、その部屋をめざす。


男がそっと開いた扉の中には予想通り、二人の少女と猫が眠っていた。

男は近づいても猫が起きる気配が無いことに安心し、年長の少女の周りにバラの花びらを撒き散らす。


「魔女め。今度こそお前の命を奪ってやろう。アマンダの受けた苦しみを少しでも感じて死ぬがいい。」


男が少女に何かを囁こうとした時、突然何かが男にぶつかり、部屋にあかりが灯された。


「やっぱりあんただったのか。」

「! どうして?!」

「俺には眠り薬も効かないからさ。サーラに近づくな!!」


灯りの中に居た男は、サーラを探しに行った時に案内を勤めてくれた男だった。


「先程迄は猫だったのに、もう人に変わったとは。」

「まあね。こういう体質だから。」

「便利だな。どうなっているのか聞いてみたいが、余り時間が無い。しなければ行けない事があるから、君には予定通り死んで貰う。」

「その前に一つ聞かせてくれ。なんで殺そうとするんだ?」

「この魔女は生きているだけで害になるからだ。前世でこの女がどれほど悪辣だったか。この女さえ居なければ、俺の愛するただ一人の家族、可愛い妹のアマンダは、俺の居ない時にたった一人で死ぬことは無かったんだ!

君は邪魔だから死んでもらう。聖女は俺が守る。守護者は二人も要らない。」


こいつの言い分に無性に腹が立った。

「サーラは魔女じゃない!この理不尽な繰り返される聖女のしきたりの犠牲者だ!」

「違うな。お前が知らないだけだ。こいつは悪魔だよ。」

「サーラが何をしたって言うんだ!」

「この女はアマンダに無理やり洗脳を手伝わせ、それどころか、俺の不在の隙を狙ってアマンダの体を汚らわしい男たちに与えたんだ!ただの金欲しさに!!」

「違う!サーラはそんな事はしない!」

「何が違う!妹はどんどん弱っていって、俺にはどうして弱るのか分からなかった。何故死にたいと言うのかもわからず、魔女にアマンダを任せて・・・。」

「だから違う!サーラはお前の名前も妹の名前も知らずに死んだんだから。」

「お前が騙されてるだけだ。あの女は俺がこの手で殺してやった。だが、聖女の記録を調べたら、魔女が何度も生き返る事を知った。もう一度、今度こそ、生き返れないように殺してやらなければ。俺はこの永遠の命に感謝したよ。」

「本当に違うんだ!サーラはお前達に出会ったその日に殺されたから、言葉を交わすことも無く殺されたんだから!俺の言うことも聞けよ!馬鹿野郎!」


「殺せれた?誰に?」

「お前の言う魔女にだろう。そうじゃないか?サーラ。」


俺は男と向き合いながら、目覚めたサーラをそっと俺の後ろに移動させていた。

男はサーラが俺の後ろに匿われている事に気づき、更に怒りをぶつけてくる。


「まさか、彼女が?そんな・・・。」

「聖女に会う前、サーラは誰と一緒だった?」

「孤児院で一緒に育った友人。とても仲が良くて、私が旅に出ると知って、一緒に来てくれた。まさか・・・。」

「その友人に聖女の事や影の事も話をしたのか?」

「旅に出る前に話をしたわ。どうして旅に出たいのか聞かせて欲しいと言われて。彼女は自分も手助けしてあげるって言ってくれた。大変だから一人で抱え込まないでって。だから・・・。」

サーラの言葉は嗚咽で聞き取れない。友達だから背後から刺されるまでサーラも気づかなかったんだろう。そして、必要な事を聞き終えた友達は用無しと、サーラを殺した。聖女は見つかったんだから。


俺は泣きながら蹲るサーラを見てから男に向き直った。


「わかったか?この馬鹿野郎。お前がサーラを恨むのは筋違いだ!」

「魔女の件はそうだったかもしれない。だが、その女が居なければ、アマンダは聖女の役割を押し付けられる事は無かった。あんなに若くして苦しんで死ぬ事も無かったんだ!」

「守れなかったお前が悪いんじゃないか!」

「そうだ。だから今度こそ俺が守ってみせる。聖女が繰り返される事が無いようにその女を殺し、お前を殺し、今度こそ俺が守るんだ!」


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