表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

2.力の目覚め

「今日は凄いご馳走。ルルーが捕ってくれたのね。ありがとう。」


サーラが俺をギュッとして喜んでくれる。


食事が終わるとミリアがブラシを持ってきて、俺の体をブラッシングしてくれた。気持ちよすぎて眠くなる。

前の世界では食事をしながらゲームをし、うたた寝して朝までって事もあった。こちらは随分健康的な生活だなと思う。

ゲームが好きだったけど、今は自分自身がゲームみたいな感じだから、ゲームが出来ないことも気にならない。


「ミリア、服小さくなっちゃったから、明日買いに行こうか。」

「お姉ちゃん、まだ大丈夫。着れるから。お金もったいないよ。」

「大丈夫よ。今日、お給金頂いて、女将さんから明日はお休みしていいって言われてるの。」

「お休みなの?凄い!嬉しい!一日お姉ちゃんと居られるんだ。」


サーラは勤めているらしいけど、話の感じから殆ど休みが無いのがわかった。ブラック企業かよ。こちらではこれが普通なのか?

でも、町か。俺も楽しみだ。


翌日は二人について町に向かう。

おぉーっ!感動!ゲームが動いてるよ!!

石畳の道路、石造りの城壁、広場に広がる市場の活気。剣をさして歩く人々!!まんまゲームだよ!

めちゃくちゃキョロキョロしちゃうね。自分がゲームキャラになれないのが残念だが、見てるだけでも楽しい。

前方に一際大きい建物もある。領主館だよな。すげぇ。


楽しんでいるのは俺だけじゃない。二人も凄く楽しそうだ。こうして周りを見回しても、この二人はめちゃくちゃ可愛い。もっとおしゃれしたら、振り向かない奴いないと思う。はぁ、猫じゃなかったら、俺が二人を守る兄ちゃんになれたのになぁ。


あちこちからいい匂いがする。肉の焼ける匂いがして見てみると、肉を串に刺して焼いてる店があった。

「ミリア食べる?」

「いいの?お姉ちゃん。」

「いいのよ。お姉ちゃんも食べたいから。食べよ。」

「うん!」

サーラは店で串を1本買い、二人で交互に一個づつ食べる。

「お姉ちゃん。お口が幸せっていってる!」

「うん。美味しいね。」

サーラは最後の一切れを指で外し、俺の目の前にくれた。

「もう冷めたから食べれるよ。ルルーもおあがり。」

俺はサーラとミリアを見上げた。たった1本しか無いのに、なんで猫の俺に寄越すんだよ。自分たちで食べればいいのに。

それでも二人はニコニコしながら俺が食べるのを待っている。俺はサーラに近づき、肉を食べた。

その肉は今まで食べた中で一番美味かった。


古着屋に行き、ミリアの服を買う。長く着れるように、ちょっとぶかぶかした服にしたようだ。それでも花柄のワンビースはミリアに似合っていて、可愛かった。

古着屋には小さな髪飾りも売っていて、サーラはミリアにその小さな花が並んだ髪飾りも買ってやっていた。


買い物も終わったので、俺たちは家に向かって歩き出した。


「おい。サーラじゃねえか。」

見るからにゴロツキ。うーん。お約束のようにいるんだなぁ。

サーラもこいつを嫌っているんだろう。返事もせず、ミリアをせかせて、横をすり抜けようとした。


「待てよ。」

「離して下さい。」


ゴロツキはサーラの腕を掴むと路地に引きずり込んだ。

「嫌っ!」

「暴れるなよ。」


俺はサーラを掴むゴロツキの手に飛びついて、思いっきり噛み付いてやった。


「痛っ!何しやがるこのバカ猫!」


その隙にサーラは路地から逃げ出そうとするが、路地の入口には他にも二人男が立っていた。ゴロツキの子分らしい。


俺は二人を庇うように前に立ち、毛を逆立てて唸る。


「うるせぇんだよ!」


俺はゴロツキに猫パンチを食らわせたが、蹴り飛ばされて、壁に激突した。痛い!

二人の悲鳴が聞こえる。嫌だ。二人を守るんだ!立てよ俺。ヨロヨロ立ち上がった所をもう一度蹴り飛ばされた。悔しい。俺が猫でも大きかったら、あんな奴ら倒せたのに!


俺の体が光を放った途端に、俺の目線の位置が変わった。それまではゴロツキの膝ぐらいだったのに、今は肩位になっている。


俺がゴロツキとその子分に向かって猫パンチを繰り出したら、三人とも吹っ飛んで行った。

おぉ!これでこそゲーム世界だろう。


体の変化はあまり長続きしないらしく、直ぐに元に戻った。あまりにも短時間だったので、ゴロツキ達は何が起きたのかわかっていなかったし、ミリアとサーラも気づいていない。俺は皆があっけに取られてるうちに、ミリアに前足をかけて、合図する。ミリアがそれに気づき、サーラの手を引っ張って、俺たちはそこから逃げ出した。


町を出て、家に着くまで、何も言わずに走った。


家に着いたら、やっと人心地着いたのか、サーラの紙のように真っ白になっていた顔色も少し赤みが戻ってきて、ミリアの小刻みに震える指先も落ち着いてきた。

可哀想に。二人とも怖かったよな。俺はサーラに体を擦り付け、そっとミリアのほっぺを優しく舐めて慰めた。

ミリアも俺の気持ちに気づいて、ギュッと抱きしめてきた。よしよし。もう大丈夫。


翌朝、サーラがいつものように身支度をしているのを見て、ミリアが慌ててサーラの袖を掴んだ。

「だめだよ、お姉ちゃん。あの悪い奴らがまた来るよ!」

「ミリア、仕方ないわ。働かないとお金が無くなっちゃうでしょ。」

「私、なんでも我慢する。お金もいらない。お洋服もいらない。だから行かないで、お姉ちゃん!」


俺もそう思う。行くなよ、サーラ。

「にゃあ!」


「大丈夫よ。いつもは何ともなかったんだから。ミリア、心配しないで。」

「嫌だよ。お姉ちゃん、嫌!」

「ミリア・・・。」

サーラは泣きじゃくるミリアを優しく抱きしめ、頭を撫ぜてやる。どうして、こんなに優しい二人が苦労しなくちゃいけないんだ。親は何処に行ったんだよ!


その時、突然ドアが空いて、見知らぬ男達が入って来た。昨日のゴロツキじゃない。こいつらはゲームで見る騎士のような格好をしている。


「この娘だ。連れて行け。」

先頭にいた。赤い服の男がサーラを指さすと、後ろに従っていた男達が俺とミリアを突き飛ばして、サーラを二人がかりで連れていこうとした。


俺はそいつらに体当たりしたが、殴り飛ばされてしまった。


「行くぞ。」

「お姉ちゃんを連れていかないで!」

「ミリア!!」

俺はヨロヨロと体を起こすと、赤い服の男目掛けて飛びかかった。男の服に前足がかかったと思った瞬間、腹に激痛が走り、床に飛ばされた。痛い!めちゃくちゃ痛い!


「ルルー!」


俺が意識を失う直前に見たものは、ミリアの泣き顔と、連れ去られるサーラの後ろ姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ